2012.04.26

『生きる力を育てる教育』~日本語の力(3)「行ってきます」と「お帰りなさい」に日本語の特徴を見る~

今回も日常的に使っている言葉をちょっと深く考えてみるシリーズです。

前回は、動植物に対する感謝の気持ちが込められた「いただきます」を扱い、前々回は、集団を意識する日本人の心の在り様が現れる呼称「お兄ちゃん」「おばちゃん」を扱いました。

さて、今回は、おそらく最も使用頻度が高いと思われる日本語、

「行ってきます」

「お帰りなさい」

を扱います。

相手と一緒にいる事を何よりも大切にする日本人の心が見えてきます。

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~金谷武洋氏の記事より引用(理解しやすいように、部分的に強調文字に変換しています)~ 

日本語を教えていると「なぜそんな言い方をするのですか」と不思議な顔をした学習者によく尋ねられる。尋ねられて答えを考えているうちに「対話の場」の重要性が見えてきたのである。

「対話の場」を重視する典型的な例が「行って来ます」と送り出す「行ってらっしゃい」だ。家を、会社を、国を出る時に誰もが口にする表現で、ほとんどの日本人が毎日使っているだろう。だが、これを直訳するととてもおかしなことになる。何故か。英仏語にはそう言おうとする発想がないからだ。

「行って来ます」には動詞が二つあるから、本来の意味は「行きます(が、必ず帰って)来ます」であったろう。つまり、対話の場に必ず戻ることを約束しているのである。

送り出す方も同じ発想で、「行ってらっしゃい」は「行って+いらっしゃい」の「い」が落ちたもの。
「いらっしゃる」は尊敬語で「いる・来る・行く」の3つの意味があるが、ここは明らかに「来る」の尊敬語だ。「行ってきます」が敬語の「行って参ります」や打ちとけた「行って来るね」になったところで、動詞が重なる文構造も、その本来の意味も全く変わらない。

同様に、ぶっきら棒に「おぅ、行って来い」などと応じたところで、やはり「行ってらっしゃい」と同じ意味の答えなのである。英語では「I’m going now」や「I’ll be back soon」などは言うが、この2つを一緒にし、しかも日常表現として毎日使うということはしない。

「行ってきます」の応用編とでも思えるのが「焼き芋を買って来たよ」「カナダへ行って来ました」などで、これらも英語であれば後半の「and I came back」は全く蛇足である。

やはり日本語話者の発想に「そうやってここに戻って来ましたよ」という「対話の場」を大切にする、ひいては相手への気配りが伺える。

出かけた後は自宅や会社に帰ってくる。その時に日本人はまたしても外国人に不可解な表現を使うのである。それが「ただいま」だ。「ただいま」とは言うまでもなく「只今」の意味で、直訳すれば「Right now」だが、こう言って帰って来る英語話者は見たことがない。何故日本人はこんな言い方をするのか。またしても学習者が頭を傾げる場面だ。

出迎える方がまた不思議な発話をする。「お帰りなさい」だが、その本来の意味を英訳するとナンセンス極まりない文となる。これはどう見ても「お食べなさい、お話しなさい」などと同じ構造の命令文ではないか。もう目の前に帰ってきた聞き手がいるのに「Please come/go back」などと頓珍漢なことを言うのだろう。

この受け答えは、「お帰りなさい」「ただいま」と発話の順序を逆にすると真意が分かりやすい。出迎えて「お帰りなさい」と言うのは、字句通りの「はやく帰ってきて」という祈りを、姿が見える直前、まさに文字通りの「ただいま」まで、唱えていた名残ではないだろうか。

対話の場への帰還をどんなにか待っていたという気持ちほど、相手への気配り、思いやりを雄弁に物語るものはないと思う。

それに応えて帰還者は不在の長さを詫びる。長いこと対話の場を離れてすまなかった、さぁ今、帰ったよ、という気持ちで日本人は「ただいま」と言うのだ。「ただいま」とは「たった今」なのである。

何という白熱、緊張した再会の場面を日本人は言語化しているのかと改めて驚くばかりだ。あたかも孵化した雛が殻の内側から、そして親の雌鳥が殻の外から同時に卵を突くように、両者が積極的に再会の場面に参加し、そして対話の場への復帰を言祝ぐのが我々日本語話者であると言えないだろうか。

~引用以上~

日常的に使っている多くの日本語の中に、このような「相手発」の言葉が既にたくさん組み込まれています。語源を知らなくても、それらの言葉に込められた潜在思念に、私達は動かされているのでしょうね。

次回は、「さようなら」について扱いますので、お楽しみにー!

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2012.04.21

『安心基盤を作っていくには?』医療制度はどうなる!?―7~アメリカ医療事情・後編(市場化の起源)

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前々回前回の記事で扱ったように、アメリカ医療は、保険会社や製薬会社といった巨大資本が支配していると言えます。

今回は、世界でも特異な市場原理に基づいたアメリカの医療制度が、どのようにして形作られてきたのか、その成り立ち・起源がどこにあるのかを見ていきます。

1910年から1930年代までの史料を調べ、アメリカの市場原理に基づく近代的医学を確立してきた歴史を紐解いたリチャード・ブラウンの『ロックフェラーのメディシン・マン:アメリカにおける医療と資本主義』には、

Rockefeller-Medicine-Men.jpg今日の市場原理で動くアメリカ医療の原型は、19世紀末からの科学的医療を支持したロックフェラー財団やカーネギー財団が、アメリカ医師会(American Medical Association: AMA)を牛耳る形で、1930年代までに作り上げてきた

科学的医療の正統化と医師の専門職化そのものが、巨大資本家の財団の目論見だった

と書かれています。

これは、何を意味するのでしょうか?

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2012.04.19

『生きる力を育くむ教育』~日本語の力(2)「いただきます」に込められた日本人の想い~

こんにちは~^^*
今日のお昼ごはん は何を食べましたか?

いただきます」「ごちそうさま」って言いましたか :nihi:

日本では、子供がいただきますも言わずにご飯を食べ始めたら、
『ほら、“いただきます”は?』
なんて注意したりしますよね^^

でも、世界では、ご飯前にお祈りする国はあっても、
「いただきます」を言う国は、日本だけだそうです。

いきなり食べ始めてもOKとか^^;

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文化の違いと言えばそれまでですが、今日は「いただきます」に込められた日本人の想い について、深めていきたいと想います♪

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posted by chiue at : 2012.04.19 | コメント (5件) | トラックバック (0) List   

2012.04.14

『安心基盤を作っていくには?』医療制度はどうなる!?―6~アメリカ医療事情・中編(医療費)

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前回の記事では、アメリカの医療保険制度の実情を扱いました。

画像はこちらからお借りしました

今回は、自己破産する人もいるほど高いアメリカの医療費の実態と、なぜ医療費がここまで高騰してきたのかを扱います。

■世界一高いアメリカの医療費

アメリカの医療費は、世界一高いと言われています。都市によって違いがありますが、一例を挙げると‥

一般外来の初診料150ドル(約1万2千円)から300ドル(約2万4千円)
専門医を受診200ドル(約1万6千円)から500ドル(約4万円)
子宮筋腫の治療費 日帰り外来手術100万円以上
虫歯の治療2本で1,200ドル(約9万6千円)
出産費用14,000ドル(約112万円)
嘔吐と下痢 ウイルス感染で子供2人が5日間入院約140万円
虫垂炎(盲腸)手術で1日入院 ニューヨーク:約240万円 ロサンゼルス:約190万円

左の表は、世界の主要都市における虫垂炎(盲腸)の手術入院にかかる費用を比較したものですが、

アメリカの主要都市が際立って高いことが分かります。

外務省のホームページでも、

米国の医療費は非常に高額です。(中略)病気や怪我など1回の入院で数百万円から1千万円になることを覚悟してください

外務省HPより抜粋

と旅行者に注意を喚起しています。

では、なぜこんなにもアメリカの医療費は高いのでしょうか?

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posted by daiken at : 2012.04.14 | コメント (0件) | トラックバック (0) List   

2012.04.12

『生きる力を育てる教育』~日本語の力(1)日本語が生み出す思いやり社会~

 最近めっきり暖かくなり、公園の桜も全体がほんのり色づいてきました。
いよいよ桜の季節ですね 😀 %E6%A1%9C%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97.jpg  ところで、みなさんは「桜」の語源をご存知ですか
 諸説いろいろあるようですが、その一説を紹介します。

「 さ 」=穀霊を表す古語
「くら」=神霊が鎮座する場所

 つまり、「さくら」穀霊が鎮座する場所を表すとされています。春には、穀霊が「御田植えの神」になるために山から里に降りてきて、その途中で桜の木に宿るとされているのです。
 日本語は、自然や精霊をも対象化した、実に奥が深くて美しい言語なんですね。

 今後の教育のあり方を追求している「生きる力を育てる教育」シリーズですが、今回からは、この日本語について、学校で学ぶ「国語」とは違う角度、違う視点から改めて見つめ直し今後の教育のあり方のヒントを探っていきたいと思います。

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posted by isgitmhr at : 2012.04.12 | コメント (2件) | トラックバック (0) List   

2012.04.07

『安心基盤をつくっていくには?』医療制度はどうなる!?―5~アメリカ医療事情・前編(医療保険制度)

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日本でも公開されたアメリカの医療をテーマにしたマイケル・ムーア監督の『シッコ』という映画がありました。

私も映画館に観に行きましたが、そこで描かれているアメリカの医療の実情は、とても「世界の超大国」とは思えない悲惨なものでした。

この映画には、充分な医療を受けられなかった人達が何人も登場して、アメリカの現実を描き出します。

それらを紹介すると・・

医療費が払えず病院にかかれないので、自分で傷口を縫う人。

医療費があまりに高額で家を売りに出す老婦人。

交通事故により病院に運ばれ一命を取り留め、保険会社に保険金を支払ってもらおうと連絡したら、当時は意識不明の重態であったにもかかわらず「救急車が使用される場合には、事前に連絡が無ければ保険は適用されない」と言われた人(ちなみにアメリカでは、救急隊を派遣させるだけでも日本円にして数万円単位の請求が来る)。

複数の医師からなる病院の医療チームが「この検査と手術が必要」と言っているにもかかわらず、保険会社はそんな検査や手術は必要ないとして保険金の支払いを拒否し、治療を受けられずに亡くなった人。
仕事中に誤って指を二本切断。指をくっつける手術費用が薬指は12,000ドル(約96万円)、中指なら60,000ドル(約480万円)と言われ、中指は諦めざるを得なかった人。
画像はこちらからお借りしました

複数箇所を骨折しているのに入院治療費が払えずに病院を強制的に追い出され、車で貧民街まで運ばれて路上に放り捨てられる女性の患者。

このように、アメリカでは多くの人々が満足できる医療を提供できているとは到底言えません。

社会保険の範囲が小さく、民間保険と医療機関相互の競争など市場原理をメインとしている点で世界の中でも特異なシステムをとっている米国では、高度医療の発達や医療機器の進歩では世界一となっているが、医療費については高騰に悩まされ、マネジドケアなど数々の医療システム改革にも関わらず、貧困層への医療供給は制約されて平均寿命も先進国の中で低い状況の反面で、国民の所得の多くが医療費に注ぎ込まれているという特徴があらわれている。

『安心基盤をつくっていくには?』:医療制度はどうなる!?-3~データから見る世界の医療制度・前編(医療)~でも、アメリカ医療の特徴に触れましたが、これから3回シリーズで、アメリカの医療が抱える問題とは何なのか?を詳しく扱っていきます。

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posted by daiken at : 2012.04.07 | コメント (0件) | トラックバック (0) List   

2012.04.05

『安心基盤をつくっていくには?』:医療制度はどうなる!?-4~データから見る世界の医療制度・後編(薬剤費)~

前回は、医療に関するデータを中心に見てみました。後編となる今回は、薬に関してさらに調べてみました。

ちなみに、日本はGDPに対する医療費支出では、世界30カ国の中で23番目でした。

では、薬関連の費用については、どうなのでしょうか?

実は、日本は薬剤消費額においては、人口が世界の2%にも関わらず全世界の11.1%を占めており、世界第2位なのです。

そして、世界の薬消費額の市場は、’99~’09年の10年で2.4倍の規模にまで拡大しています。

実は医療分野において、薬は非常に大きな影響を持っていることがわかります。

では、その実態について確認していきます。

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posted by staff at : 2012.04.05 | コメント (0件) | トラックバック (0) List   

2012.03.29

『生きる力を育てる教育』~実践編 都市型こどものお仕事プラン 小学生でやってみました

「感謝の心を育むには」・・・生きる力を育てる教育シリーズでは、遊びの効用を考えていく中で、どんな遊びがいいのか、昔や今の遊びからいろいろ考えてきましたが、現代の遊びではおもちゃを購入することが主で、それだとただの消費者になってしまいます。
子供たちが遊びを通じて健全に育っていくのには、大人たちがそれに必要な環境を提供することが大事なことに気がつきました。『生きる力を育てる教育』~遊びの効用(3)
そこで、『闘争の場=(職場)』と『生殖の場=(家庭)』が一体となった生産体の中で、自然圧力をはじめ様々な闘争圧力が働く環境で、今すぐにできることはないか考えてみました。

けれど、生産と消費が一体化していた昔と違って、親はサラリーマン、子どもは学校、それが終わって家にもどってくるだけ。例えば、農業という形態はこどもにとっていろいろな経験を積ませてくれるけど、都市に住んでいる者にとっては、毎週田舎にも行っていられない。都市でもできることないかと話しをしていたら、ちょっとヒラメキましたぁ

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応援よろしくお願いします 😀

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posted by tomitomi at : 2012.03.29 | コメント (2件) | トラックバック (0) List   

2012.03.24

『安心基盤をつくっていくには?』:医療制度はどうなる!?-3~データから見る世界の医療制度・前編(医療)~

前回記事『医療制度はどうなる!?-2~TPP参加で「医療」はこうなる!』では、TPP参加によって医療の世界にも市場原理が導入されると、どういった問題が予測されるのかについて追求してきました。

ただ、そもそも、多くの人にとって日本の医療制度は世界標準で見てどうなのか?、あるいは世界の医療制度はどうなっているのか?、TPPで強い影響力を持つアメリカの医療制度の特徴などについてほどんど知らないというのが実態ではないでしょうか?

今回から2回に分けて、まずは日本および世界の医療や薬業界における実態を、データを通して掴んでいきたいと思います。

前編となる今回は、医療に関して世界の実態を見ていきたいと思います。

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2012.03.10

安心基盤を作っていくには?医療制度はどうなる!?-2~TPP参加で「医療」はこうなる!

プロローグでもお送りしたように現在、野田政権が、国内の意見調整もされないまま、TPP(環太平洋戦略的連携協定)参加を表明し、すでに事前協議に入っている段階です。TPP参加が実現されれば、安心基盤の1つである医療分野にも規制緩和の波が押し寄せてくるのではないかと懸念されています。

今後、日本の『医療』はどうなっていくのでしょうか?

それでは続きを読む前にクリックお願いします!

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posted by d0020627 at : 2012.03.10 | コメント (0件) | トラックバック (0) List