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2009年01月06日
今、家族ブームらしい?~香山リカ「親子という病」より~
少し前のエントリー家族が社会の最小単位のウソを解き明かした本で紹介されている『親子という病』わたしも読みました。先のエントリーでは主に第6章を紹介されていましたが、それ以外にも、著者の現状認識は大変興味深いと感じたので、「まえがき」から紹介しようと思います。
これを読むと、ここ数年、「家族」の価値を再認識され、クローズアップされているのが改めて良くわかります。そして、これは香山氏がいうように国家、政治家、経営者が意図的にそうしている面もあるようですが、家族収束は、ある意味大きな潮流になっており、それだけでは説明がつかないような気がしてきます。
すでにるいネットで議論されているように、社会全体が閉塞状況にあり(答えがない=収束不全)、多くの人々がこれまで、やむなく出来合いの価値へ収束(目先収束)して来ていたということでしょう。
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『親子という病』まえがき より
●「生んでくれてありがとう」という無条件の感謝
ここ数年、「家族への愛」を歌うCDが次々にリリースされている。母や父への思いを曲にして歌うアーティストの多くは、若いミュージシャンだ。
その先駆けになったのが、2005年リリースの沖縄のヒップホップユニットSoul Campの『big mama』だ。メンバーのひとりの母親が大手術を経験したことから生まれた、といわれるこの曲のサビの部分では、母親へのストレートな感謝が、「こんなオレで」という感謝の言葉とともに繰り返される。あなたの愛に包まれ、
こんなオレのためその歳まで
ほんとにありがとう。
オレはまだまだ何もしてやれてないけど、、、、。病気と闘い、回復した母親への愛を歌うミュージシャンはほかにもいる。2008年2月には、実力派女性レゲエシンガーMetisが、その名も『母賛歌』という曲をリリースし、大きな話題となった。そのリフレイン部分はこうなっている。「こんな私で」といった謝罪の言葉こそないが、そこにあるのは「生んでくれてありがとう」という無条件の感謝の気持ちだ。
母よ 母よ 感謝してます
家族よ心しっかり結んで
響け賛歌 大地の如く
今あなたのために捧げます励ましてくれてありがとう
すくい上げてくれてありがとう
私を生んでくれてありがとう、、、、、(中略)
●「家族は、恋人。」キャンペーン
ここまであげたのは母親への賛歌であるが、ほかにも息子への愛などを歌ったアルバム「Family」でメジャーデビューしたヒップホップシンガーのKOHEI JAPAN、自ら甲状腺摘出手術を経験した後、子供への愛や両親への感謝をつづったバラード「home」を製作した木山裕策など、「家族への愛」を歌っているアーティストは枚挙に暇がない。
また、「家族への愛」を歌った歌を聴きたい、歌いたい、と願っているのは若者だけではないようで、2006年末のNHK紅白歌合戦のテーマは「愛・家族~世代をこえる歌がある~」であった。
この”家族ブーム”は、音楽の世界にとどまるものではない。2007年にはトヨタが新型のファミリーカーのキャッチコピーを「家族は、恋人。」として、大々的にキャンペーンを展開するなど、家、クルマ、アウトドア用品、旅行会社のパッケージツアーなど、「家族」をターゲットに商品を展開し、CMを打つ企業も相次いでいる。
こういった動きだけを見ていると、この時代、子は親に対して「こんなオレで」と申し訳なさを感じながらも「産んでくれてありがとう」、親は親で「生まれてくれて、家族になってくれてありがとう」とお互いに感謝しながら、慈しみあい、いつも一緒に行動している、という理想的な家族像がイメージされる。
しかし、それが本当に今の家族の姿なのだろうか。
その一方では、少年や少女の殺意が家族に向かう事件が相次いで報道される。06年以降、子供が加害者になって起きた主な家族内殺人事件をあげると、次のようになる。06年5月 杉並両親殺害事件(加害者息子33歳、犠牲者父母)
06年6月 奈良放火殺人事件(加害者息子16歳、犠牲者義母、弟、妹)
06年7月 大阪母親殺害事件(加害者息子24歳、犠牲者母親)
06年12月 渋谷妹殺害事件(加害者息子24歳、犠牲者妹)
07年5月 会津母親殺害事件(加害者息子17歳、犠牲者母親)
07年9月 京都父親殺害事件(加害者娘16歳、犠牲者父親)
07年11月 鹿児島両親殺害事件(加害者息子26歳、犠牲者父母)
08年6月 大和郡山父親殺害事件(加害者息子17歳、犠牲者父親)
08年7月 川口父親殺害事件(加害者娘15歳、犠牲者父親)よく言われるように、家庭内殺人事件はその数だけ見ると、どんどん減少の傾向にあり、決して増加しているわけではない。
しかし、例えばここにあげた事件の中にも、父親が医師や歯科医師であったり、息子自身が阪大生であったりするものも見られ、その家の教育レベルや経済水準の高さが目につく。決して、ケンカの絶えない家庭だったり、家にまったくお金を入れずに暴力を振るう父親を見かねて息子が殺害したり、というタイプの事件ではないのである。だからこそ世間は、「なぜこんな幸せな家庭で」とこれらの事件に注目するのだ。
「産んでくれてありがとう」と親への愛や感謝の思いを絶叫する息子や娘。「死んでしまえ」と刃物や鈍器を親に振り下ろす息子や娘。いったいどちらが、現代の子供達の本当の姿なのだろう。
(続く)
投稿者 fwz2 : 2009年01月06日 TweetList
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