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2008年11月17日

家族が社会の最小単位のウソを解き明かした本~『親子という病』より

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今回は、香山リカ著『親子という病』という本を紹介しようと思います 😀 。

ズバリこの本面白いんですよ !おすすめです

なんでこの本が面白いのか、ちょっと考えてみますと、本の中身が固定の観念に捉われない、根拠を持った鋭い切り口で現代家族の不可思議な現状を示しているからです。

中でも特に
家族って昔からあったんじゃないの?
家族って古来から続く人類の真実ではないの?
という誰もが無意識に受け入れていた「家族」という社会形態に対して疑問符を投げかけ、その違和感とその出所を現実の事象から解き明かしていく文章構成が、読む人の知的好奇心を掻き立ててくれます。

今回は、そこで、私が一番気になった『第6章 理想の家族にひそむワナ』について概略を示し、これからの家庭ブログの追求課題としてのたたき台として投稿したいと思いま~す。

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『第6章 理想の家族にひそむワナ』のあらましですが、

家族制度とは近代の社会制度の中で意図的に作られた価値観である
といういきなり鋭い切り口から入ります。
その後、現在の『家族』という考え方の基礎を一体誰がつくり、誰がそれを推し進めてきたのかを分析する形で展開されていきます。

そこで初めに出てくるのが、現代の『家族』という観念の礎をつくったと言われるアメリカの人類学者G.P.マードックの提唱した『核家族普遍説(1949)』の引用です。

そこで、マードックは「核家族の定義」と「果さなければならない4つの機能」について言及しています

核家族の定義
核家族とは、社会の最小単位であり、人類社会の中で時代や地域を超えた普遍的な社会集団である。たとえ、大家族であったとしても元を正せば核家族の集合体にすぎない

果さなければならない4機能
核家族の担う4つの機能として①性機能②経済機能③生殖機能④教育機能がある。それらが核家族が果さなければならない機能である。

それらを受けて著者である香山氏は違和感を感じると云います。核家族の果すべき4つの機能のうち、どれかひとつが欠けただけで、本当に社会はたちまち維持できないような状態になるとでも言うのだろうか?と。というのも、それぞれの機能の実態を見てみると意外な事実に遭遇する、と続きます。

①性機能→×
性交渉を夫婦間だけで持つものだという意識は根強く残ってはいるが、不倫や初体験年齢の低年齢化、恋愛と性交渉を切り離して考える若者の増加など、性機能としての家族は理想論にすぎず、現実に即していないことがわかる。

②経済機能→×
かつて消費の象徴として存在していた家庭は、コンビニ、ネット販売の影響など気軽にショッピングができる形態が主体となったことで、お金の自由の利く一人暮らし、二人暮し層が消費層の中心に移り変わった。市場にお金をばらまくのは、所謂”おひとりさま”層へと転換した。

③教育機能→×
現在、教育といえば塾や幼児教育、通信講座など教育機関としての存在が大きい。躾(しつけ)さえも家庭が担わず、教材で学べるなど外注化がすすんでいる。

④生殖機能→○
出来ちゃった婚、シングルマザーなどの現象はあるものの、子どもをつくるという意識だけは、未だに結婚後にという意識はあるようだ。これ自体もやや崩れてきてはいるが機能としては成立している。

それぞれを見てみると実は、核家族の果すべき4機能のうち3つはもう既に破綻している状態であるといえます。つまり、核家族が社会の最小構成単位とするマードックの考え自体が間違えていることを示しているのです。

それなのに、巷は”家族ブーム”を賞賛する流れにあります。ここに実は大きなカラクリがあるのではないか?と分析しています。まさにこの辺が鋭い視点であると感じます。

その後の展開は、「核家族を賞賛する人たち」と「家族という言葉の持つ絶対性」について述べ、『家族』という観念を振りかざして核家族を無理矢理推し進めることで、私欲を満たそうとする存在としての、政治家、国家、経営者のウラの思惑を示しています

無理矢理嵌め込まれた家族制度を端に発した問題が後を絶たないガタガタの現在の社会の中で、これからの家庭を考察する上では欠かせない追求すべきものがここにたくさんあると感じました

この本はまさに、精神科医として多くの親子関係や家族のあり方を見てきた香山氏だから感じることができた家族に対する違和感がベースになっています。社会家族学や精神心理学で書かれていることに全くあてはまらない、家族に対する真摯な視点といえます。是非、手にとって読んでみてください。

投稿者 YOSI : 2008年11月17日 List   

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コメント

 面白そうですね!よんでみたいっす!

投稿者 どきんちゃん : 2008年11月18日 11:06

>どきんちゃんさんへ

是非読んでみてくださいね!

様々な家族の状況が知れる一冊になっています。
本当に目からウロコなんですから。

投稿者 よしたつ : 2008年11月19日 02:38

核家族の担う4つの機能・・確かに、分類するとそうなるか?

性機能と生殖機能の違いがよく解らないけど。
確かに、子どもができたあとにセックスレス!、という夫婦が結構多いということからすると、納得できるかも・・・

もう20年も前に、ビートたけしが言っていたけど「家庭に仕事とセックスを持ち込んだらダメ(上手くいかない)」と・・・

家庭ってなんなんですかね!

投稿者 shugoキャラ : 2008年11月22日 23:00

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