| メイン |

2007年08月16日

幼児期の教育で、人生が決まってしまう?!~親を焦らせる「臨界期」とは?~

youjisets.jpg

「脳は、胎児から3歳までの間に、脳全体の80%が形成される」
「3歳までの教育は、その後の人生の80%を決定してしまう!」
「幼児期に両親がどんな教育をするかで、その子の人生がほぼ決まってしまう!」
「幼稚園では遅すぎる!」
「生まれた時から日本語ばかり聞いて育つと、日本語耳になってしまうのです。つまり、英語やフランス語など、他国の言語には耳を閉ざすようになってしまうのです。」

この売り文句を読んでるだけで、なんだか焦っちゃいますね 🙁
これらは、『早期教育』についての売り文句です。
未就学児に対する早期教育の市場は活性化しており、大きなマーケットになっているそうです

天才にしたい!ってほどではないけれど、あわよくば…天才に☆とも思う。
子供に何を教えたらいいのか、どんな環境が必要なのか、分からない。
何もやらないより、何かやった方がいい。
せっかく何かやるなら、効果が高いものがいい。
こんな状況の中、上記のような売り文句で『早期教育』は広まっているのかな?と思います

乳幼児に休まずに刺激を与え続けるような教育(訓練)には弊害もあるのではないか?とも論じられつつも、多くの親が注目し、「育児」から「育脳」へと親の関心を移させた『早期教育』。
「“早期教育は必要!”の根拠って?」について、迫ってみたいと思います

ランキングへ参加してます
応援宜しくお願いします

 にほんブログ村 子育てブログへ

「早期教育」が注目される背景には、ある時期を過ぎると、脳が柔軟さを失い、ある種の行動の学習が不可能になる、という臨界期の理論があります。

臨界期臨界期とは、感受性期とも言われ、自分を取り巻く環境に応じて、脳の中では覚えたり感じたりする神経回路が集中的に作られたり、回路の組み替えが盛んに行われたり、最も感性豊かな時期を言います。1つの機能(知性)の臨界期は、一生のうちで1回切りと言われています。ということは、幼児のうちに様々な刺激を与えていくことが絶対に必要だと言うことになります。
臨界期で大切な時期は、言語(0歳~9歳)・運動能力(0歳~4歳)・絶対音感(0歳~4歳)・数学的能力(1歳~4歳)と言われています。臨界期に、適切な刺激を与え、脳が記憶をしておけば、その後でもちょっと練習をするだけで、ごく自然に簡単に同じ事が出来るようになります。

この「臨界期」にみんな焦ってる?(↑これって、ホント??)

「臨界期」が「早期教育」につながる科学的根拠として下記のような実験が引き合いに出されることが多いとのこと。
具体的には

①ローレンツ「インプリンティング(刷り込み)」
②グリーンノウ「ラットによる生育環境の違いで脳の発達が変わるという実験」
③ハッテンロッカー「シナプス密度の臨界期」
④ヒューベル「シナプス競合の臨界期」
⑤レネバーグ「言葉の獲得の臨界期」

そのうちの①②③について、これらの実験結果は「“早期教育は必要!”の根拠にはならない」と考察した方のサイトより下記を引用します。

①ローレンツ「インプリンティング(刷り込み)」http://dr-stonefly.at.webry.info/200603/article_21.html『dr.stoneflyの戯れ言』より引用

ローレンツは「インプリンティング(刷り込み)」の研究をした人で、鳥が生まれて最初に見たものを親鳥とする、という例の考えです。
実は「最初に見た」としているが、「インプリンテイィング」がおきるのは実験すると生後5時間から24時間の間だったとしています。つまり5時間より前に見たもの、24時間よりおそく見たものはインプリンティングされず親鳥だと認識しないことになります。その間の脳の発達を基点におき、その5-24時間を鳥の「臨界期」とするという結論をだしています。
早期教育では、人間についても、鳥における5-24時間(臨界期)に何らかの刺激を与えなければ獲得できない、という「科学的根拠」を示すのです。とある子育てのHPを引き合いにだし「鳥の赤ちゃんは、うまれた直後、最初に目に入ってきたものを親鳥と思い、追いかける行動があるという有名な話しがあります。これは『刷り込み』現象といいますが、おっぱいも同じ。うまれたばかりの赤ちゃんは覚醒しているのですが、その時から授乳を開始するのがいいと言われています。それが『刷り込み』になるからです。その後も母子が離れず……」というのは科学的でありそうで、全くの嘘とします。『刷り込み』が起きるのは『鳥』だけですから~残念!(古~)という感じで斬られています。

②グリーンノウ「ラットによる生育環境の違いで脳の発達が変わるという実験」http://www.fujitv.co.jp/ana/t_honpo/d_07.html『早期教育って言葉に心が揺れるなあ~。』より引用

グリーノウの研究。
【グリーノウは、乳離れしたばかりの子ラットを三つの異なった環境で育てた。ひとつは「隔絶された環境」と呼ばれるもので、小さなかごに一匹だけを入れて飼育した。二つ目は「社会的環境」と呼ばれるもので、やや大き目のかごに数匹の子ラットを入れて飼育した。そして三つ目が「複雑な環境」と呼ばれるもので、第二の社会的な環境よりもかごは大きく、障害物やおもちゃなど子ラットが興味を引きそうなものがかごの中に入れられていた。(中略)その結果、複雑な環境に育ったラットの神経細胞の樹状突起は、隔絶された環境や社会的な環境で育った子ラットに比べて20%も多く枝分かれしていたのである。(中略)つまり頭が良かったのだ。】と。
この研究を根拠にして、だから子どもには、小さいうちから刺激を沢山与えてあげて、頭のいい子を育てましょうと、早期教育を促す教材も多いのですが、これに対し、
【しかし、この実験結果を捕らえて、「だから幼少時期の環境刺激は重要だ」という結論を出すのには落とし穴がある】というのです。
どんな落とし穴かというと、それは、ラットにありました。
【実験に用いたラットの日齢(生まれてからの日数)は20日であった。そして、異なった環境で30日間育て、日齢50日で脳の解剖を行った。実はグリーノウが実験に使用したラットは日齢45日で生殖可能になる種類であった。つまり実験が終了した日齢50日は、生殖可能日齢を超えていた】というのです。
人間に当てはめるならば、少年期から、思春期あるいは成人期を対象にした実験になるので、この実験から【幼少時期の環境が脳の発達に影響を与えるとはいえない。】というのである。

③ハッテンロッカー「シナプス密度の臨界期」http://www.fujitv.co.jp/ana/t_honpo/d_07.html『早期教育って言葉に心が揺れるなあ~。』より引用

早期教育の教材の宣伝文句によく使われる「シナプスが多いうちに刺激を与えましょう。」というような考え方については、次のような記述があります。
ピーター・ハッテンロッカーという研究者が、なんと脳のシナプス数(シナプス:神経細胞と神経細胞との接合部の称)を電子顕微鏡で数えたのだそうです。
それによれば、
【乳児の脳でシナプスを数えたハッテンロッカーは、それがほぼ成人と同じ密度であることを突き止めた。そして驚くべきことに新生児期にすでに成人なみであったシナプス密度は、乳児期にどんどん増加し、8~12ヶ月の間に成人の1.5倍くらいまで上昇し、人生で最大の密度になることを確認したのだ。】
とあります。
これが、『幼稚園では遅すぎる』などといった、早期教育の重要性を主張する根拠として使われることになったらしいのです。
しかし。
【シナプスが多いほうが脳は優秀という根拠はどこにもない】上、重要なのはここからです。
【ハッテンロッカーは、乳幼児期はシナプスが急激に増加し、樹状突起の密度も同様に急速に増加する時期である、その時期に何らかの障害が脳に加わることによって、原因不明のてんかんや精神遅滞が発症するのではないか、と考えた。】とあります。
それは、後のヘンシュ・貴雄という研究者の研究にもつながっていきます。
【ヘンシュ貴雄が着目したのは動物のシナプスには2通りあるという点だった。脳のシナプスの80%は興奮性シナプスと呼ばれ、受けての神経細胞に興奮を伝える働きをする。ところが、約20%のシナプスは抑制性シナプスと呼ばれ、それが接している神経細胞が興奮するのを抑える働きをしている。(中略)興奮性の刺激ばかりでは、決してよい脳の発達は起こらないことを実験によって実証したのです。実際、未熟な脳では、抑制性細胞群機能が低下しているため、過激な刺激を受けた興奮性細胞同士が過剰に働いて、発作気味となる恐れがある、と述べている。】というのです。
つまり【刺激をあたえれば良いなどという単純な考えでは過ちを犯してしまう可能性を示唆している】と。
(中略)
まとめれば【早期教育などの過剰な刺激が、もともと刺激に敏感な乳幼児の脳のオーバーロードとなってしまい、脳の発達のプログラムが障害される可能性がある。】というのです。

どの実験も一面的な実験。ある実験結果を引っ張りだし、商品の販売を促進する。健康食品と同じで、実験結果の捉えようによっては、効果も捏造できてしまう
上記の引用を読み、「早期教育が必要である明確な根拠は、ないんだなぁ」と思いました
「臨界期」って一体なんなのでしょうか。

乳幼児が外圧へ適用しようとあらゆる神経回路を発達させるのは真っ当な働きで、上記のような実験結果をもとにした臨界期説を鵜呑みにし、脳だけを対象にした訓練(CDやビデオを繰り返し見聞きさせるとか、知能発達に効果的な玩具で遊ばせるとか…)に終始する必要はないと思います。
むしろ必要なのは、子供が健全に育つために必要な環境や、社会の立てるようになるための勉強が何かを掴み、環境を整え、伝えてゆくことではないでしょうか。

投稿者 nakamenta : 2007年08月16日 List   

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://web.kansya.jp.net/blog/2007/08/319.html/trackback

コメント

>乳幼児が外圧へ適用しようとあらゆる神経回路を発達させるのは真っ当な働きで、上記のような実験結果をもとにした臨界期説を鵜呑みにし、脳だけを対象にした訓練(CDやビデオを繰り返し見聞きさせるとか、知能発達に効果的な玩具で遊ばせるとか…)に終始する必要はないと思います。

 冷静に考えて見ればそうなんですが・・・。自分の子のことになると、目先の言葉につい乗せられてしまって・・・。子育ては自分課題と捉えるとどうしても目先の可能性らしきものに飛びついちゃいますね。これも個人教育、個人主義の弊害なんですかね。

投稿者 HOP : 2007年8月17日 22:42

家庭における規範教育がますます放棄されつつある一方で、早期教育=育脳に積極的な親は少なくありません。
しかし、それは企業発のマスコミを媒体にした“観念の刷り込み”によるものです。
現に、早期教育は、商品化され、マスコミを通じて、購買欲求の喚起(需要の創造)が図られています。

ゆえに、「早期教育」に関する見解(根拠や問題点)について、企業やマスコミの言っていることを鵜呑みにせず、検証しておく必要があると考えていました。

そして、それらの根拠は、十分に検証されていないことが分かりました。決して、「育脳」に偏らせてはダメだと言うことも。

改めて、「育児」とは何か?(どのように捉えたらよいのか?)が問われますね。(私は二歳児のパパなので、切迫した課題となっています。)

ありがとうございました。

投稿者 ふくしょー : 2007年8月18日 00:49

☆HOPさん
コメントありがとうございます♪

>自分の子のことになると、目先の言葉につい乗せられてしまって・・・。

私も、子供がいたら「人生3歳までに決まるらしい!」って焦ってると思います(^^;)
でも、「臨界期も怪しいし、早期教育は効果あるか微妙なんだ…」って、今回ちょっと知っただけで、「みんな育児どうする?」って聞いてみようとか、「臨界期のホントのところって?」って調べてみようとか、育児を考えるのも、自分ひとりだったのが、みんなで考えようって思い、焦りが薄れました。
考えてる間に子供は育っちゃうし、手っ取り早く答えは出ないかもしれないれど、自分の子供だけのことを考えていたら、ずーっとこのまま?というより、さらに閉塞してしまいますもんね。一緒に追求お願いしますっ八(^□^*) !!

投稿者 なかめんた : 2007年8月19日 00:45

☆ふくしょーさん
コメントありがとうございます♪
おじいちゃんやおばあちゃんは計算ドリルをやらなかったけれど今でも暗算できてるし、CDを繰り返し聞いたりしなかったけれど豊かな日本語を話しています。体操教室へ通ったりもしなかったと思いますが、体も丈夫ですよね。
そんなおじいちゃんやおばあちゃんを思い浮かべ、子供を育てるのに必要な環境や教えるべきことってなんだろう…と考えると、ドリルやCDより大切なものがあると確信します。
「現代の教育教材にはどのようなものがあるのか?」から「育児とはなにか?」に至るまで、まだまだ探索する必要がありそうです。

投稿者 なかめんた : 2007年8月19日 00:47

上記で出てくるヘンシュ貴雄自身が、臨界期を認めていて、少なくとも、小学校で語学はやらんといけないといっているように思えるのだが・・・。

投稿者 とおりすがり : 2010年1月3日 13:40

ヘンシュ 臨界期の概念は、教育にとって、とても重要ではないかと考えられます。一言で臨界期はどれくらいの期間であるかはお答えできませんが、だいたいの機能は生後6歳から8歳ぐらいまでに成立してしまいます。それを考えると、小学校に上がる前の時期が最も重要であると考えられます。最近、脳科学と教育を結びつける動きが、日本国内でも国際的にも見られています。正式な学校以前の期間が、最も重要ではないかという見方になってきています。

ヘンシュ 全世界どこへ行っても共通ですが、外国語の勉強は中学校から始まります。言語の臨界期は長いものなんですが、だいたい12歳ごろまでにはネイティブの発音や文法の理解が身についてしまいます。ちょうど中学校に上がるときには、臨界期が終了しています。なぜ臨界期の終わりをねらったかのうような時期に、外国語の勉強を始めるのかと疑問がわきます。最近の発達心理学者の結果から見ると、生後6ヶ月ごろに聴覚の訓練が始まらないと、ネイティブの発音を理解する基本的な神経回路の形成が終ってしまうおそれがあります。

大隅 でも、別の考え方の方もいらっしゃいますよね。つまり母語がしっかりしない時に、二つの言語を並行して学習するということは、脳に対して非常に過度な負荷をかけているのではないか。そういう考え方の方もいらっしゃると思うんです。

ヘンシュ それは伝統的な教育学者の発想だと思います。言語がバッティングするのではないか。たしかにそういう現象も見られます。しかし、脳の基本的な「マップ」とよばれる基本的な神経回路をつくっておかないと、あとで、それを使おうと思っても、ないものは使えませんので、とりあえず作っておくことが重要だということが、動物実験からは示されます。帰国子女の経験話からも、似たようなことがわかります。脳科学を理解することによって、どういう刺激の与え方をするのがよいか、ということもわかるようになります。

投稿者 とおりすがり : 2010年1月3日 13:43

コメントしてください