新たな介護の可能性12 事業化の検討:新旧の住民をつなぐ地域コミュニティ~NPOと自治会・町内会の連携 |
メイン
2014年11月06日
新たな保育の可能性8 高齢者と保育事業、学童保育を担うおじいちゃん達
子育て支援では、0~2歳児の待機児童が多く、その支援が焦点になっています。そして、もう一つの節目が小学校入学段階です。
保育所では、標準で18時まで預かってくれ、必要なら20時位まで、延長保育が可能です。母親は、安心してフルタイムの仕事に従事できます。 しかし、小学校に入学すると、1年生は午後2時、3時には学校が終わり、帰宅してきます。
この低学年の児童を、母親に代わりに見守る仕組みが、社会的に十分整っていません。『小1の壁』です。
今回は、小学校低学年の児童を預かる「学童保育」の実態と、可能性を探ります。
1.学童保育の現状
学童保育がどうなっているか、まずはマクロなデータです。資料は、『学童保育の実施状況調査』(全国学童保育連絡協議会)です。
全国の学童保育所の数は、1993年の7,500ヶ所から2014年には22,00ヶ所へと増加しています。そこに通う児童数も2014年では93.3万人となっています。
学童保育所に通う児童は、やはり低学年が多いです。学童保育の利用率は、1年生で35%、2年生では30%、3年生では22%です。4年生以上になるとぐっと下ってきます。
学童保育は、どんな施設を使っているかを見たのが下の図です。
学校施設が54%と過半数を超えています。次いで、児童館(12%)、公民館他(9%)と続きます。民家・アパートも6%あります。
学童保育は、継続的に増加していまが、まだまだ、多くの課題を抱えています。
『学童保育の実施状況調査』が以下の点を指摘しています。
・学童保育所がない小学校区が、全国で約3500校区、小学校区の2割もある。
・低学年の「潜在的な待機児童」が40万人いる。
・子ども(低学年)が学校にいる時間は、年間1,221時間、対して学童保育にいる時間は年間1,681時間と、学童保育にいる時間の方が長い。学童保育の場は、学校教育の場に匹敵している。
・効率重視の大規模な学童保育所が増え、子どもの「生活の場」が十分に提供できていない。
・指導員の大半が、パートタイムで勤続年数も少なく、子どもの「生活の場」をつくるには不十分である。
・国・自治体の予算は、保育所に比べ圧倒的に少なく、子育て支援の枠組みの中に組み込まれていない。だから、大規模施設ができ、指導員が弱体のままである。
2.地域の高齢者が学童保育を担う
国・自治体の財政限界により、学校や保育所に匹敵する公的予算は期待できません。少ない予算の中で、学童保育をどう充実させていくかが課題です。
学童保育の指導員(世話係)は、パートタイム、小額の収入を強いられます。若者・壮年の仕事としては困難です。
しかし、パートタイム、小額の収入でも可能な階層が存在します。高齢者です。しかも、小学校1~3年生ですから、男の高齢者でも十分務まります。逆に、男の高齢者なら、経験してきたことを、次の世代に教えることもできます。
全国で、高齢者が中心になり、地域に応える形で学童保育を実践しているケースが増加しています。
事例:熊本県宇城市不知火町/松合小学校・放課後こども教室
熊本県宇城市不知火町にある地元の保育園の学童保育は、平成19年で廃止されることとなりました。
このことを受け、小学校低学児童の放課後の安全安心を確保するため、場所は小学校の空き教室を利用して、PTA会長をはじめとした保護者、当時の校長先生や地域の高齢者の協力を得て、放課後子ども教室を立ち上げました。高齢者のさまざまな経験と知識をいかして、長年地域に住み続け地域をこよなく愛する住民の地域力の現れです。
平成20年4月より、月曜日から金曜日の午後3時から午後5時まで、地域の協力員が当番制で、1日に少ないときで3人、多い時は6人で次のような活動を展開しています。
月曜日:「習字」…道具の並べ方から級習得を目標に基本練習
火曜日:「パソコン」…ローマ字入力、文章作成、表計算、電子メール
水曜日:「そろばん」…指の使い方から級習得を目標に基本練習
木曜日:「読み聞かせ」…大人や児童による読み聞かせ、紙芝居
金曜日:「体験」…季節の体験、地域探訪、昔遊び、折り紙などを実施
年間約180日に及ぶ活動が展開されています。
地域の協力員(高齢者)が当番で世話係を務めています。地域ぐるみの子育て支援です。
次は、子どもに接し、もっている経験を活かし、役に立つということが、高齢者の活力にもなっています。そんな事例を紹介します。
事例:平塚市生きがい事業団・寺子屋教室
平塚市生きがい事業団で、定年退職した高齢者が自身のスキルを市民に教えるという「寺小屋教室」が今月から始まった。指導役の高齢者はカリキュラム作りに悪戦苦闘している様子ながら、新しい「生きがい」に心を躍らせているようだ。
寺小屋が開かれるのは、同事業団の建物内にある10畳ほどの一室。水曜日の夕方には子ども向けの書道教室が開かれ、児童の声でひときわ賑わう。講師を務める元中学校教諭の久保寺芙沙子さんは、筆に迷う児童を見つけては背後から手を添え、「ついつい口が出ちゃうの」と笑った。
寺小屋では、書道教室と放課後学習支援の2講座を子ども向けに開く一方、大人のための書道、絵画、囲碁、パソコン教室も開講している。11月のスタートながら、各講座には生徒が集まり、寄せられる評判も上々のようだ。
書道教室に足を運ぶ小学生の保護者は「習字は初めてですが、月謝も手頃で敷居が低く、気軽に通わせることができた」と話す。児童も「先生が分かりやすく教えてくれて楽しい」と、つぶらな瞳を輝かせた。
寺小屋事業は、定年退職者ら同事業団の会員が、自身のキャリアを発揮する場を新たに創出する試みでもある。会員向けにアンケートを実施し、実現しそうな講座から開講した。 同事業団職員も「会員さんはもっと自分の特色を活かせる機会を求めている」と話し、寺小屋の今後に期待を寄せている。
書道を教える久保寺さんも「子どもは学年も性格もいろいろで、一律に教えるわけにもいかないし、試行錯誤で大変。でも楽しいわ」と愉快そうに語っていた。
幅広く、高齢者(おじいちゃん達)が参加する仕組みが求められている。
上記のように、学童保育では、沢山のおじいちゃん達が活躍しています。これをもっと拡大できれば良いと思います。
学童保育は、小学校・児童館・公民館などの場所は十分あります。指導員(世話係)は、退職高齢者という潜在的な予備軍がいます。
この予備軍を動員できれば、少ない予算で、学童保育(子供たちの生活の場)を充実させることができそうです。
その際、ポイントとなりそうなのは、講座プログラムの開発と普及ではないでしょうか。そろばん、習字、読み聞かせ等が取り組まれていますが、それでは、退職高齢者の一部しか参加できません。 もっと幅広いプログラムを設定して、参加できる高齢者を広げるのです。
やり方は簡単です。 全国の学童保育所での多種多様な講座(プログラム)を集め、経験を普及させるポータルサイトを作ります。そして、学童保育の世話人を希望する高齢者に、研修を行うのです。
そんなアイディアが浮かびます。
投稿者 hoiku : 2014年11月06日 TweetList
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://web.kansya.jp.net/blog/2014/11/3917.html/trackback