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2014年11月11日

新たな介護の可能性13 シニアの志の顕現と追求気運の高まり

アブセック

前回記事まで、数回にわたり、町内会の動向を見てきましたが、やはり町内会という組織体(だけ)では継続的な取り組みは難しく、NPOなどを設立する事例が増加しつつあるようです。

事業の実現に向けては、「想い」だけではなく、その先の事業性や社会的な位置づけなどの追求が不可欠です。また、事業を考える前提となる社会は複雑化しており、正確な社会認識が成否を分けるひとつのファクターとなっています。

つまり、シニアによるorシニアを活かした事業が、今後どのような展開の可能性があるか、どの程度の現実性を持ちうるのか、はシニア層における追求気運の程度に大きく左右されるということになりそうです。

そこで今回からは、「シニアの志の顕現と、実現に向けた追求気運の高まり」を見ていきます。

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最初に、国などで行われている各種調査から、シニアの志の中身、追求気運の程度を探ります。

 

■現状1:高齢者の社会参加意欲の高まりと、既存の活動とのギャップ

○高齢社会白書:高齢者の就労・社会参加意欲の高まり

高齢者の雇用者数の推移

平成26年版高齢社会白書の「4 高齢者の就業」(http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2014/gaiyou/s1_2_4.html)によると、高齢者の就業は増加傾向にあり、就労意欲の高まりが見て取れます。

また、「5 高齢者の社会参加活動」(http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2014/gaiyou/s1_2_5.html)によると、60歳以上の高齢者の61.0%は何らかのグループ活動に参加しており、10年前と比べて18.7ポイント増加しています。社会参加意識も年々高まっていると言えます。

 

一方で、実感としては、この数字ほどには高齢者の社会参加は感じられないというのが正直なところです。そこで、続いて内閣府の「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」を見てみます。高齢社会白書と一部データが重複しているようですが、より詳細なデータが掲載されています。

 

高齢者の地域社会への参加に関する意識調査:社会参加活動の満足度の低さ

「平成25年度 高齢者の地域社会への参加に関する意識調査(全体板)」(http://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h25/sougou/zentai/index.html)によると、

最も力を入れたい活動

上記の意識と同様、活動への高い参加意欲が見られます。ここで注目されるのは、一見すると、健康・スポーツや趣味など、個人の楽しみに最も力を入れたい人が圧倒的であるように見えますが、生産・就業から子育て支援までの、他人や社会の役に立つような活動を合計すると37.4%となり、かなり大きな割合を占めることです。報告書をさらに読み進めると、

参加している活動の満足度

「参加している活動の満足度」において、健康・スポーツや趣味に比べ、社会の役に立つような活動はその満足度が相対的に低いことがわかります。つまり、取り組みたい意欲はあるが、既存の活動では満足できていないという実態が見えてきます。また、同様の傾向が別のデータからも見えてきます。

参加したい団体と参加している団体

「参加したい団体と参加している団体」の項目で、「参加したい団体」の率が「参加している団体」の率の2倍以上となっているもの、つまり、やりたいと感じているが見合う活動・団体が見つけられていないものに着目します。「ボランティア団体(社会奉仕活動)」が12.7%:5.4%、「学習・教養のサークル・団体」が10.7%:4.2%、「市民活動団体(NPO)」が4.1%:1.6%となっています。つまり、これらの活動・団体は需要(可能性)が一定ありながら、それを未だ社会として具現化できていないと言えます。

これらの活動は、健康・スポーツや趣味などの個人的な楽しみと異なり、活動の組み立ての難易度が高く、相手がいるために自己満足の次元では満足できない活動です。この「難しさ」が、意識の高まりの具現化を阻んでいる。つまり、それを乗り越えるほどの追求を伴った活動は、まだ少数であると言えそうです。

逆に言えば、社会参加意欲の高い高齢者が惹きつけられるような活動が各地で出てくれば、状況が一変する可能性も大いにあるということができます。

■現状2:ICT活用による共同体的機能の再構築

○情報通信白書

続いて、現在、何らかの問題や可能性の追求には欠かせないものとなっているインターネットの利用状況を探ります。

インターネットの年齢階級別利用状況

「情報通信白書」(http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h25/html/nc123220.html)によると、高齢者のインターネット利用は、平成20年から平成24年の5年間で、65~69歳は25%超、70~79歳は20%程度も増加しています。単純に世代が入れ替わったという側面もありますが、それを差し引いても増加傾向を示しています。では、何のためにインターネットを利用しているのでしょうか。

高齢者等が利用したいICTサービス

高齢者(65歳以上)、高齢者予備軍(40歳~64歳)が利用したいICTサービスを見ると、多様なサービスがありますが、先ほどまでの分析を踏まえると、「自分の経験や能力、条件に見合った仕事や地域イベント情報等を分析、紹介してくれるサービス」が高齢者、予備軍とも3割強となっている点は注目されます。

また、利用したいサービス全体をより大きく捉えると、ICTの活用方法は、都市生活で失われたかつての共同体社会における相互扶助的な「機能」を補うもの(健康・医療・介護関係)と、共同体的な「つながり」を再構築しようとするもの(交流、安心・安全等)に大別される点も押さえるべきポイントではないでしょうか。

ここからは、どこまで追求の気運が高まっているかは読み取れませんが、方向性としては固まりつつあるようにも感じられます。

 

■現状3:志を持ったセカンドステージへの挑戦

○立教セカンドステージ大学:志にもとづく学び

立教セカンドステージ大学は、50代以上のシニアのための学びの場です。他のシニア向け講座などとの違いは、きちんとしたカリキュラムが組まれ、体系的な学びが可能になっていることです。月~金まで毎日2時限、長期休暇以外は授業に出る必要があり、終了論文も必要です。その意味で、追求意欲とも親近性があるように感じられます。

RSSC入学動機

この事例でのひとつめの注目点は、入学動機です。シニアになってなお、今後を「生きる」あり方を模索していることが明白です。3位は友人との出会い、ネットワークづくりであり、また、4位の「充電」という動機からは、明らかに次に取り組もうとする何らかの活動を想定している様子がうかがえます。

ふたつめは、修了後の進路です。最も多いのは専攻科などへ進学となっていますが、次いで社会活動となっています。内容に関する具体的な記述としては、「コミュニティを作る」「地域の活性化」「ボランティア」「在宅ヘルパー」などとなっており、誰かの役に立つことを明確にイメージしています。

上記の意識を裏付けるような、通われている方の「志」を強く感じる言葉を紹介します。

高齢者人口は急激に増加し、医療・年金等社会保障費の増加や新たな課題も次々と発生してきています。今、まさに我々自身に突きつけられている問題です。世界で最初に高齢化社会を迎えた日本が、その手本を示し世界をリードしていく。「我々RSSCはその尖兵たらん」とする気概を持つ。そこに存在の価値があると思います。

出典:立教セカンドステージ大学のニューズレター13号

この事例からは、明確に追求への意欲が感じられます。最先端層の一部は、このような本気の学びの場を経て、実践へと向かっていっていると言えるかもしれません。

 

■現状4:高齢者による事業成功事例

最後に、以上のような意識を具現化している事例をいくつか紹介します。

ひとつはシニアによる起業の増加が挙げられますが、すでにさまざまなところで紹介されていることもあり、今回は別の事例を紹介します。

 

○上尾・アブセック:企業OBの会による経営支援、地域活動、会員交流リンク

アブセック紹介

平成15年に、上尾商工会議所、桶川商工会、伊奈商工会の肝いりで、定年後の生きがいあるセカンドライフを求め、長年にわたって培ってきた技能や知識を生かして社会貢献を希望する地域在住の人たちを集めて、商工会議所・商工会の会員である企業や地域の活性化を図る目的で、上尾地区ビジネスキャリア・エンジョイサークル(アブセック)が創設。

商工会議所・商工会と企業OB会員組織「アブセック」が一体活動を展開し、中小企業の経営支援効果を挙げ、地域の抱える課題を解決。

・経営支援

設立以来10年で287社・団体に延べ670名(平成26年3月末現在)の会員が現場に入ってアドバイスや実施指導を実施。指導費用は時給1,500円が目安。指導は週1~2日、3時間程度/回、期間は原則3ケ月を1クール。

・地域活動

市民を対象とした自然活動会、工場見学会、市民祭り・子ども祭り会場における竹とんぼ教室、駅からハイキングの参画・運営、上尾シティマラソンの競技役員などに携わっている。

 

○BABAラボ:都市部でもおばあちゃんが生きがいをもち、地域とつながれる工房リンク

BABAラボ

100歳まで働ける環境を目指す“孫育てグッズ”作りの工房で、子連れのママから80代のおばあちゃんまで、多世代が経験と知恵を活かし地域で働いている。

事業内容は、①オリジナル製品「孫育てグッズ」の企画制作販売、②コラボ製品の企画販売、③ワークショップの企画運営となっており、工房内には子どもたちが遊べるスペースも設置。

また、BABAラボの運営を行う「シゴトラボ」(http://www.jibun-lab.com/Category/7/)は実績を活かし、地域社会の課題を解決するビジネス<コミュニティビジネス・ソーシャルビジネス・社会起業など>の起業・運営支援、またノウハウ提供などを行っておられます。

参考:こころざし応援団(http://www.prdx.co.jp/ouendan/archives/post_31/

 

以上のように、高齢者の社会参加意欲は明らかに高まっており、追求へと向かう土台となる意識はすでに整っています。また、高齢者や高齢者とともに事業に取り組む方々の実践を通じた追求も始まっており、今後、このような動きは加速していくものと思われます。今後の動向に引き続き注目です。

投稿者 ythayn2014 : 2014年11月11日 List   

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