新たな介護の可能性9 事業化の検討:成功事例の『集め方』『広げ方』『つなげ方』 |
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2014年09月12日
新たな保育の可能性4 ~先進国の保育制度~
新たな保育の可能性を探っている本シリーズですが、今回は世界の先進国の保育制度からその可能性を探ることにします。
1.就学前教育・保育制度の国際比較
前回記事で扱った「子育て支援の二元行政(保育所と幼稚園)」をとっているのは、先進国の中では日本とフランスだけです。ただしフランスは、0~2歳児:保育(保育園)、3~5歳児:就学前教育(幼稚園)と、年齢での重なりがないため、実質的に二元行政が行われているのは日本だけのようです。
また、日本以外の先進国では、幼稚園や保育園の無償化も進んでおり、保育に対し国からの手厚い補助が行われているようです。
2.先進諸国の保育制度の評価
ヨーロッパの先進国がここまで子育て支援を行い、保育制度を充実させようとする理由は、出生率を上げ少子高齢化を食い止めることにあります。急激な少子化は、将来の生産年齢人口を減少させる一方で、高齢者人口の比率を著しく増加させます。社会保障・福祉制度を支える人口構成のバランスが崩れ、税収が減少し、国の財政破綻や国力の低下を引き起こすからです。先進諸国の保育制度を評価する上で出生率が上がっているかどうかが一つのポイントになります。
それでは、各国の出生率について詳しく見ていきましょう。
先進国(アメリカ、フランス、スウェーデン、英国、イタリア、ドイツ)の合計特殊出生率の推移をみると、1960年代までは、すべての国で2.0以上の水準でした。その後、1970(昭和45)年から1980(昭和55)年頃にかけて、全体として低下傾向となりますが、その背景には、子どもの養育コストの増大、結婚・出産に対する価値観の変化、避妊の普及等があったと指摘されています。1990(平成2)年頃からは、出生率の動きは国によって特有の動きをみせ、ここ数年では回復する国もみられるようになってきています。
特に、フランスやスウェーデンでは、出生率が1.6台まで低下した後、回復傾向となり、直近ではフランスが2.01(2011年)、スウェーデンが1.90(2011年)となっています。
出生率から見ると、ヨーロッパ先進諸国の保育制度は一定の成果を挙げているようです。
3.フランスの保育制度
出生率が大きく回復したフランスの家族政策の特徴は、かつて家族手当等の経済的支援が中心でしたが、1990年代以降、保育の充実へシフトし、その後さらに出産・子育てと就労に関して幅広い選択ができるような環境整備、すなわち「両立支援」を強める方向で政策が進められています。
次に、家族関係支出(=家族を支援するために支出される現金給付及び現物給付)の対GDP比を見ていきましょう。
日本の0.96%に対しイギリス、フランス、スウェーデンは3%以上となっています。出生率の高いヨーロッパ諸国は、日本の3倍以上の補助があることがわかります。
どうやらフランスの保育制度は、国からの金銭的な援助により「産めば産むほど有利なシステム」になっているようです。
4.先進国の事例から今後の保育を考える
出生率の回復に見られるように、フランスの保育制度は大きな成果を挙げているように思われます。しかし、よくよく考えると、これだけ国からの手厚い補助があり「産めば産むほど有利なシステム」になっているにも関わらず、今なお出生率は2.0人、つまり父親と母親に対し2人の子供で人口は増加せず現状維持という状態です。制度を整え、手厚く補助したとしても、対処療法に過ぎず、人々は「積極的に子供を産み育てたい」「安心して子育て出来る」という思いには至っていないということになります。
今後の新たな保育の可能性を考える上で、先進国の制度を模倣するだけでは問題の本質は解決しないのでしょう。
次回は日本国内の事例から今後の保育を考えていきます
投稿者 cocoro : 2014年09月12日 TweetList
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