教育の目的は、共同体の次世代の成員を育成すること ~内田樹「教育基本条例の時代錯誤について」より~ |
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2012年01月07日
『安心基盤をつくっていくためには?』:「食」への期待6~「食」を取り巻く新たな試み②
『安心基盤をつくっていくには?』:『「食」への期待』シリーズということで、これまで以下の記事をアップしてきました。
1.食卓に迫る放射能の危機
2.腐らない農産物の正体
3.遺伝子組み換えの仕組みと人体への影響
4.驚愕の「白い粉」。食品添加物の実体に迫る
5. 骨抜きにされる法規制①
骨抜きにされる法規制②
6. 『安心基盤をつくっていくためには?』:「食」への期待6~「食」を取り巻く新たな試み①
前回に引き続き、今回も食にまつわる新しい取り組みを紹介したいと思います。今回は流通、新しい繋がりに注目し今後の可能性を探っていきます。お送りするのは③④です。
①変わる消費者の意識
・安心できる食材を求めてネット通販へ
・食欲から食抑へ 企業の社員食堂レシピ本がヒット
②変わる生産技術
・微生物触媒による放射線除染浄化分解技術
③変わる食の流通(コンビニ・スパーマーケット)
・食品添加物が少ない、店内調理するコンビニへ
・店内で栽培した野菜を食材に 店産店消のファーストフード
・「地域の食育」を担うスーパーマーケット
・「地産地消」のスーパーマーケット
④食を通じた新たな繋がりの萌芽
・レシピコミュニティーサイトで情報共有→共同体の再生へ
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③変わる食の流通(コンビニ・スパーマーケット)
■食品添加物が少ない、店内調理するコンビニへ
コンビニ弁当といったら、食品添加物満載のイメージを持ってしまう人も多いのではないでしょうか。そうした消費者の意識を反映して、近年は弁当の不振がコンビニで続いています。
それに対してコンビニ側も、新たな動きを見せ始めています。出来たてを求める消費者のニーズにこたえられるうえ、天候などをみながら数量を調整できるため廃棄ロスがほとんど出ないメリットから出荷前に食材を冷凍し食品添加物を抑えながらコンビニの店内で調理するというものです。
また震災後、コンビニエンスストアの店内調理の評価が高まったことも後押しとなっています。物流網が寸断された際は「ありもの」をアレンジして弁当類の販売を継続し、被災地でも温かい食品を提供するなど生活インフラとしての存在感を発揮しました。非常時のこうした対応が好感されたこともあり、通常営業に戻ってからも店内調理の売り上げが伸びているようです。
【ミニストップ】⇒ 手作りおにぎり
店内の炊飯器で新潟県産コシヒカリを昼食前などピーク時に合わせて炊き上げ、スタッフが一つ一つ握って包装する。製造直後に販売するため保存料を使わず、出来たてを提供。また3.11の震災当日は、店員が帰宅困難者のために夜通しおにぎりを作り続けたミニストップは、その後も商品を切らせず作り続けたところ、震災から1週間はオフィス周辺の店舗を中心に通常の3倍以上のペースで売れた。
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【ローソン】⇒ 店内調理の弁当や惣菜
ローソンは2010年6月16日、店内でお弁当や惣菜の調理を行う新サービス「ローソン神戸ほっとデリ」の全国展開開始を発表。店内に専用キッチンの場所を設けて、その中でお弁当や総菜を調理する「コンビニエンスストアとデリカテッセンの融合モデル」と称している。「ライブキッチン」「彩りビュッフェ」「できたて弁当」などさまざまなコーナーを組合せ、食のサービスを充実させる。
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■店内で栽培した野菜を食材に 店産店消のファーストフード 「サブウェイ」
サンドイッチチェーンの「サブウェイ」は7月6日に植物工場を併設した新店舗を東京・丸の内にオープンさせた。67平方メートルの店内(20席)中央に三つの棚を備えた植物工場;横約150cm、縦約41cmの「ライン」を二つ置いている。棚では蛍光灯とLED照明を併用して無農薬レタスを栽培。
栽培サイクルが軌道に乗れば1週間に20玉(約100食分)の収穫が可能で、店で使うレタスの約5%(月400食)がまかなえるという<月に最大80株が収穫可能>。
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■「地域の食育」を担うスーパーマーケット 株式会社タカヤナギ
「食育」を進めるうえで、家庭の食育、学校の食育に加えて、生活の拠点である「地域の食育」を効果的に取り組んでいるのがスーパーのタカヤナギです。
日の暮らしの中で健康的な食習慣を伝えようと、「5aday」食育体験学習を平成17年から開催し、地域の小学校を店舗に招き,店内で公開授業というスタイルで食育活動のお手伝いを行っています。
スーパーマーケット探検や売場の野菜を使ったお買物ゲーム、買物探検といったスーパーマーケットならではのメニューに加え、管理栄養士による栄養や食事バランスガイドのお話、さらには簡単な調理実習と試食などを織り交ぜている。
平成18年度はこれまで10小学校で述べ16回開催し、学習を通じて子供達の野菜嫌いが改善されたり、社会的知識の習得につながっているそうです。
また、買物中の大人も一緒に学べる場でもあるほか、学習した子供達との会話から保護者等へも情報が発信される工夫も含まれており、地域全体への食育活動にもつなげています。
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■食生活提案型スーパーマーケット ヤオコー
ヤオコーは「ミールソリューション=食事に関する悩みを解決する」という言葉を全面に打ち出し安易な安売りを行わない食生活改善型のスーパー。
家庭の主婦にとって毎日食事を作るにあたって最も多い悩みは、メニューを考えることなのだそうです。そこに目を付けたヤオコーは<クッキングサポート>というサービスを行っています。これは、簡単に言えば、メニューを考えるサービスです。
家庭の主婦でもあるクッキングサポートさんが、売場でご提供している旬の素材やおすすめの素材を使ったメニューレシピをご用意してくれる。どのレシピも、主婦のアイデアや工夫たっぷり!短い時間で簡単においしく作れる工夫がされています。特に、新米ママさんには料理のイロハや目からウロコのコツまで、クッキングサポートさんの知恵袋が強い味方になってくれる。
店舗内にレシピを置くだけなら新しいサービスではありませんが、きちんと実演や試食もあるというもの。パートさんたちの工夫が詰まったレシピもあり、食の楽しさを感じることもできる。毎月1日に発刊しているオリジナルのメニューブックは、そんなクッキングサポートさんのアイデアの中から選りすぐったレシピ集。また実際に売場でご紹介したレシピをホームページでも紹介しています。
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■地産地消のスーパー サンプラザ
食の安全性が注目される昨今、安心して商品を選べるよう、具体的な活動に取り組んでいるのがサンプラザ。
社内では日本食育コミュニケーション協会による「食育コミュニケーター」の資格取得を推奨し、すでに100名以上が有資格者。 「食育」が叫ばれる中、添加物を多用した食品や遺伝子組み換えを行った野菜などが海外から輸入されている。一方、国内で手間をかけ育てた野菜が、高級なものとして存在する。「知識を身につけた上で、消費者の方に商品を選んで欲しい」という気持ちから生まれたサービス。
産直をうたうスーパーは数あるけれど、サンプラザでは季節によってはそれが50%を占める。近隣の農家と契約し、新鮮で美味しい野菜を常時提供する。サンプラザはその取り組みが評価され、府内産農林水産物、大阪特産品のブランド「大阪産(もん)」の普及啓発に貢献した企業に与えられる「大阪産(もん)5つの星大賞」の限定5組に選ばれた。
国の取り組みとして行われている「フード・アクション・ニッポンアワード2010」では、プロダクト部門そして製造・流通・システム部門と2部門の入賞という快挙をなし得ている。定期的に開催する朝市では、すぐに商品が無くなるほどの人気。
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以上ここまで紹介してきた新しい取り組みは、まさにこの時代を象徴しているように思います。かつては生活を共にする地域社会や住民同士、家族が持っていた様々な役割を今や流通業者が担うようになっているのです。(災害時の炊き出し・手料理・食育・食生活改善)
つまりそれだけ集団が解体されてしまっている ということなのです。
自ら生産基盤を持たない都市生活者が多く占める現代社会の中で、「食の安心基盤」の中核を担うのは、食材を流通させる「流通業者」になってくるでしょう。
こうした新たな取り組みを行う流通業者をさらに増やしていくためにも消費者側がこのような取り組みをもっと評価し、圧力を形勢していくシステムが必要です。またその一方で、失われた共同体の再構築も今後取り組むべき最大の課題となってきます。
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④食を通じた新たな繋がりの萌芽
■レシピコミュニティーサイトでメニューを共有 クックパッド
クックパッド(COOKPAD)は、クックパッド株式会社が運営するレシピコミュニティーサイト。1998年に誕生し、現在108万以上のレシピが登録されている「日本最大の料理サイト」である。2011年10月現在の月間ユーザー数は1500万人、2010年3月現在の月間ページビュー数は4億6000万回である。半数以上がほぼ毎日利用し、日本の30代女性の半数以上、20代女性の40%が利用している。2011年度4月時点の年間売上高は約32億円、営業利益は16億円で売上高営業利益率50%、創業から10年あまりで近年急成長をみせている。
仕事、家事、育児などで時間に追われる消費者にとって手頃で短時間で作れるレシピを多数のものから検索できるこのサイトは夕食時の救世主的存在になっています。サイトの機能は極めてシンプル。会員になった消費者が考案したレシピを投稿する。そのレシピを参考にして料理をしたい人がキーワードを使って検索する。この二つ。
レシピを投稿するのは一般の消費者。同社のサイトを使えば自分が考案したレシピを自作の写真と文章を使って簡単に投稿できる。例えばサラダというキーワードで検索すると13万件のレシピが投稿されている。パソコン向けサイトの他に、携帯電話用サイト「モバれぴ」や、iPhoneおよびAndroid向けのアプリケーションも提供しています。
料理専門家が提案するレシピは魅力的だが一般の消費者が調理するのには難度が高い。利用者はそうした難度が高い料理より自分と同じ調理レベルの人が提案するレシピで料理をしたい。だから普通の消費者が考案したレシピのほうがありがたく、投稿者の大半が料理専門家でないのが重要。
さらに同社のサイトには「つくれぽ」という名の機能があり、投稿レシピで料理をした投稿者とは別の人が料理結果を写真とともに投稿できる。同じレシピでも出来上がりは様々だし、オリジナルのレシピに対する工夫の余地もある。利用者の創意工夫が塗り重ねられる。そうした情報も写真つきで閲覧できるようになっているので利用者には使い勝手がいい。
ツイッターやフェイスブックなどのSNSによって、新たなコミュニティーが誕生しているものの、どのSNSも緩い繋がりに留まっています。しかし、クックパッドのような食を通じたコミュニティーサイトは、今後さらに可能性が広がっていくのではないかと考えられています。すでにクックパッドでは、安心できる野菜のネット通販、食材の宅配が始まっています。
現段階では、まだまだメニューの情報共有に留まっているところですが、これが食材供給、子育て、教育、医療、と繋がっていけば、新たな共同体の中核を担うようになるかもしれません!ユーザーの多くが女性という点でも、新たな共同体を作る基盤は十分にあります。
まずは食を通じて女性たちの情報共有、協働作業が始まり、失われた「安心基盤」の再生へと徐々に向かい始めているのではないでしょうか?
今後も引き続き、新しい動向に注目していきたいと思います。
以上、「食」を取り巻く新たな試みの紹介でした!
投稿者 d0020627 : 2012年01月07日 TweetList
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