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2020年06月25日

新しい学校3 軽井沢風越学園~大人も一緒に成長する

続きです。子供たちのために!だけでなく、自分たち大人の実現でもあるんです。

本質に立ち戻り、広がりを確信して。
一通のメールから始まった学校づくり

「風越学園」の構想は、2016年5月、本城さんから岩瀬さんに送られた一通のメールから始まりました。

本城さん 「学校つくりませんか?」ってメールを送りました。それまであまり深く話したこともなかったのに、突然(笑)

岩瀬さん ドキドキしました。でもメールではアドバイザーか何かで関われるのかな、って思った程度で、まさかこれほどのコミットとは思っていなかった(笑)

 

ふたりの最初の出逢いは2008年のこと。岩瀬さんの授業を本城さんが見学に行ったことがきっかけでした。その後、2泊3日のワークショップを一緒に過ごす機会があり、本城さんの中に、「学校をつくるならこの人と」という想いが芽生えていたそう。

本城さん 僕は30歳のときに学校をつくりたいと思って、その後、学校なんてつくらないって言ってた時代もあった。学校像も、全寮制の中高のエリート校とか、グローバル教育とか、起業家教育とか、森の中が大事、とか、だいぶ、ぶれてきたんです(笑)

でも、苫野さんの本を読んだり、「森のようちえんぴっぴ」で子どもたちの様子を見たりして、「何のための教育?」とか、「これからどうするんだろう?」というところに立ち戻ることができた。

一回立ち戻って、「これからの学校はどうあるべきか?どんな学校ならつくりたいか?」と考え始め、4〜5ヶ月かけて1通のメールを書き、岩瀬さんに送りました。

 

岩瀬さんも「いつか学校をつくりたい」と思っていたこともあり、メールから約1ヶ月後にふたりは直接会い、その3ヶ月後には苫野さんも合流。学校の構想が始まった当初から、その想いは新しい公教育のモデルづくりへと向いていたと言います。

本城さん 単に「学校をつくりました」という自己満足ではなくて、そこで働く先生や大人たちがどんどん他の学校に異動して広まっていくような、広がりの大事さや面白さは最初から意識していました。

そうじゃないと、軽井沢に住んでいるから通えるというのが、くじ運みたいな話になっちゃう。いろんなところで取り入れられることや、選べるというのが大事だな、と。

岩瀬さん 初めて会ったときこの話を聞いて、あぁ、この人は大人も含めた人の力を信じていて、広がっていくことを確信しているんだな、一緒にやってみたいな、って強く思ったんですよね。

今、学校の現場にいる先生たちも、実際に「こんな自然な感じでできるんだ」とか、「子どもってこんな力があるんだ」って姿を見ると、ぐっと変われると思う。風越学園がそんな場所になるといいな、と思いました。

 

“新しい普通”をつくるには、
面倒くさくてもゆっくりがいい。

学級崩壊や教師のバーンアウトなど、さまざまな問題が取り沙汰される教育現場ですが、ふたりのあり方からは、行き詰まっている学校現場を「変えなきゃ」という危機感ではなく、「可能性を感じるからつくろう」というポジティブな姿勢を感じ取ることができます。

本城さん 今の学校教育がヤバイというような意識は、僕にはないですね。ただ、デザインを変える時代には来ているかな、と思っていて。

学校現場の人も保護者も行政の人たちも、みんな子どもたちのことや社会のことを考えて一生懸命にやっていて、でも力がピタッと組み合っていないというか。その力をちょっと別の方向に向けたり、違った身体の使い方をすると、あっという間に好転していく現場はたくさんあるはずだ、と思っているんですよね。

今回も新しい学習指導要領をもっと活かすにはどうすればいいか、ということをすごく考えていますし、そのヒントになるものを、ちょっとずつ発信していけたらいいな、と思います。

 

「ヒント」を発信するために。風越学園は、メールマガジンを発行するなど、設立までの過程もオープンにしています。採用にあたっては、応募人数(なんと初回応募は139名!)や年齢層まですべての情報を公開。途中、合宿形式へと選考方法を変更する試行錯誤の過程までブログやFacebookで発信しながら、これ以上ないくらい風通しの良い状態で学校づくりを進めています。

岩瀬さん オープンにすることで、つながるきっかけができるんですよね。興味を持っている研究者の方と出会えたり、知恵を貸してくださる方が現れたり。どんどんネットワークがつながるので、それがこれからの大きな流れのきっかけになる気がして。

本城さん 僕らがもたもたしていることも含めて情報発信することで、真似されるような、真似したくなっちゃう学校にしたいし、真似できるような方法を考えています。

すごいカリスマ性のある人が引っ張ってつくる学校って多いんですよね。でも僕らは多分そうじゃなくて、3人それぞれに得意分野も弱みもあって、その3人の周りにも人々がいて。自動車なら、それぞれがエンジンだったりブレーキだったり、ハンドルだったり、一人ひとり得意なことを活かすやり方をしている。

だから、あまりしんどくないんです。「ブレーキの調子悪い?」とか「エンジン更かしすぎ!」とかお互いに伝えあっている方が学校をつくってる感じがしますし、そういうプロセスは、単純に楽しくて。ストレスがない。

「でもそれ、面倒くさくないですか?」という私の不躾な問いかけに、「すっごい面倒くさい! でもそれを楽しんでる」と笑うふたり。

 

その言葉の通り、メンバーのみなさんとは、毎朝5分のオンライン会議で互いの気持ちを交換したり、それぞれに思い描いた「学校の情景」を持ち寄り、ひとつのテキストにまとめたり、あらゆることを共有していくような“面倒くさいこと”を怠りません。

岩瀬さん 僕らがイメージしている学校や社会はみんな少しずつ違って、違ってよくて。でも大きくはこういう感じにしたいよね、っていうイメージを共有するのは、僕らの中ではすごく大事なことなんです。これからやることが、はっきりしてくる。

本城さん 採用も、書類から面接、合宿まで、いろんなかたちの接点を持つことで、僕らのことも知ってもらいたいし、相手のことも知りたいし。

一旦締め切りましたが、長い時間一緒に仕事ができそうだね、とか、もしかしたら暮らしも一緒にするかもね、っていう確認をしながら進めています。とにかく時間がかかっていますが(笑)

じっくりと時間をかけられるのも、イチから取り組む新しい学校づくりの醍醐味。教職員として採用した方とは、開校の1年前からともに時間を過ごしていく予定なのだとか。

子どもの遊びと学びが連続しているように、大人の暮らしと仕事も地続きで捉えながら、ゆっくりゆっくり、学校づくりが進められています。

子どものとなりで、成長し続ける。
大人のあり方が変わると、子どものことも信じられる。

さて、新しい普通の学校が生まれたとき、この連載のテーマでもある「子どものとなりにいる大人のあり方」はどう変わっていくのでしょうか。

たとえば、自己主導の学びの時間では、先生は教室の前に立って教えるのではなく、学習計画をチェックながらそれぞれの学び方を一緒に考える役割。「教える人」つまり「ゴールを描いてそこへ連れて行く人」ではなくなったとき、先生のあり方は?

岩瀬さん 一番大きいのは、大人自身が学んだり成長したりすることを楽しめるか、ということです。実践を始めたらうまくいかないことがたくさん出てきます。それを僕ら自身がワクワクして面白がって「じゃあ今度はこうしてみようよ」って、人の手も借りて相談しながら、僕ら自身が変わることを楽しめるかどうか。

それが、子どもが「大人になっていくとか成長していくって面白そうだな」って思える一番影響あるあり方だと思うんですよね。

逆に大人自身がそうなれると、子どものことも信じられる。僕ら自身が2〜3年で全然違う自分になってるから、子どもだってそうだよね、って心の底から信じられると思うんです。

岩瀬さんは、かつてご自身がよく怒る先生だったと話してくださいました。自分が変わる中で、子どもも変わっていく確信が自分の中に生まれ、「変わっていけた自分がうれしい」と感じているのだとか。


投稿者 hoiku : 2020年06月25日 List   

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