学校は不要。10歳までの保育所があれば、子どもも母親も勉強の呪縛から開放される。 |
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2018年03月13日
野外保育の可能性10 ~まるたんぼう2~運営者の生活は皆充実している
まるたんぼうの続き、代表の方のお話です。
◆ マングローブに魅せられて森林の専門家に
代表の西村早栄子さんは1972年、東京都町田市に生まれた。東京生まれの東京育ちだ。東京農大の林学科でマングローブの関心を持ち、琉球大学修士課程に進学。その後、さらに京都大学農学研究科熱帯林環境学講座(博士課程)に進む。京大在学中に1年半ミャンマーに留学。学生結婚し、2001年に長女が誕生した。
翌02年、鳥取県出身の夫が県の職員になり、03年林業技師の募集があったので早枝子さんも林業技師の仕事に就いた。林道に道を付ける仕事や、森林組合による森林整備の監督などが仕事だ。林業専攻の夫婦にとって日本十大林業地の智頭は憧れの地だった。いずれ智頭町に、古民家に住みたいという夢を持っていた夫妻は2006年、念願の古民家を入手し智頭町に移住。3人の子供と愛犬と暮らしている。ちなみに6haの山(半分は広葉樹)も町内に入手した。”マイ滝”が自慢だ。
そんな森のプロでもある西村さんが、「森の幼稚園」を知ったのは『デンマークの子育て・人育ち』という本を読んだこと。「幸福度一番の国では、こんな子育てがされているんだ。森の幼稚園を自分もしたい」と思ったことがきっかけだ。
ミャンマーでの生活も大きな影響を与えている。牛車や馬車が車代わり。「ミャンマーでの一年半、ビルマ人もいかないようなデルタ地帯で研究していたので、けっこうサバイバルというか生きる力が付いたように思います。ミャンマーに比べて今の日本の子育ては全く子供をスポイルしています。日本は殺菌しすぎ。」と指摘する。◆ 町民になり「100人委員会」に参加
西村さんは2006年に鳥取市内から智頭町に移住し、町の「人づくり塾」に参加した。地域に知り合いがいなかったので、まずは「森の幼稚園」について勉強するグループを作り、仲間を作っていった。そして、先進事例として愛知の「ねっこぼっこ」の副園長さんを町に招き講演会を開いた。
「この講演会で、完全に火が付きましたね。翌月から親子で森の中のお散歩をするお散歩会を始めたんです。そして、翌年には「森の幼稚園を作る会」を作りました。」
素早い行動の西村さんだ。2008年、町長が変わり、「100人委員会」ができた。西村さんも参加し、森の幼稚園を提案。2009年度に保育士一人分の人件費の予算がついた。町民のアイディアに町が予算を付けるという制度だ。寺谷(てらたに)町長は言う。「市町村のリーダーに知恵が無ければ住民に知恵を借りればいい。それで私は町民から知恵を借りる「100人委員会」を作ったんです。自分たちの町だから、自分たちで考えて提案してください。良いアイディアがあったら予算付けますからと。その一つが森の幼稚園でした。」
地元の人は森や自然は当り前になってしまっているが、東京育ちの、いわゆる”よそ者”の西村さんからすれば、智頭は素晴らしい森林がある山村で、スゴク素敵なのだ。そして、森の幼稚園が始まり、地元テレビや新聞を中心に取材が増え、半年もしないうちに京阪神や、四国から視察者が続々やってくるようになった。
「スゴイ教育だと見に来た人は言うんです。ところがスゴイ教育ではない。なんのことはない。年取った人たちが昔子供だった頃、野山を走り回っていた。昔は皆そんな遊びをしていたんです。
けれど、それが今は斬新。しかも、子どもが森に入ると年寄りが見守る。何かあっちゃいけないと。これでお寄りよりの役割もできたんですよ。」と寺谷町長。◆ 森の中で五感、コミュニケーション力が育まれる
参加しているお母さんに話をうかがってみた。なんと、智頭町から100km離れている北栄町から通っているという。
「新聞で見て、西村さんに連絡し、お散歩会に参加し、今年3歳になったので入れていただきました。今年は原則週5回コースのみなんですが、うちは遠いので週3回なんです。金曜は毎週一緒に私が来ています。月・水曜は鳥取市内まで40kmを1時間かけて連れてきて、そこから送迎バスに乗せてもらっています。私も毎週来るのが楽しみで、ほんとに満足しています。子供も伸び伸びしていますよ。」保育士の山中さんにも聞いてみた。山中さんは生まれも育ちも智頭の26歳。小さい頃は野山で走り回って遊んでいたという。
「以前は母子支援施設で5年ほど働いていましたがルールが多くて自由が少なかったです。
ここに通っている子供は子供らしいし、個性がある。ちゃんと挨拶するし、人を助けることは当たり前。毎日外にいるせいか風邪もひかない。外遊びが日常になっているので無理もしないし、はしゃがない。五感で感じている。それに参加しているお父さんたちも子どもの気持ちに戻って一緒に遊んでいますよ。」
確かに、どうも見ているとお父さんの達はかなり子供達に同化して、一緒に川の中で水遊びをしたりしている。これなら仕事のストレスの解消にもなりそうだ。
お昼ご飯の後は、また川遊び。
最後はお話の時間。皆集中している。
最後に、西村さんが山村の魅力を話してくれた。
「山村の魅力は、子育ての場としての魅力でしょうか。山には山菜も沢山あるし、昔ながらの伝統が残っているし、食べ物も水も空気も一級品です。
古民家を改築したわが家のお風呂は薪でもたけるようにしました。薪でたいたお風呂はお湯が柔らかいというか、なんだか違うんです。今年は家の裏で蜂も飼い始めました。自然に呼び込む方法を近所のおじさんに教えてもらったんです。ここで生まれ育った方は出ていく人が多いですが、東京生まれ東京育ちの私のような者には素晴らしいところだと感じます。
子供がいれば山村も明るくなると思うんです。だから子供がたくさんいる町にしたいんです。」
子育てを終えてしまったが、東京生まれ東京育ちの私にも、智頭はとても素敵なところに思える。できれば住みたいとも。「大人が教えたい自然や体験ではなく、子どもが自分で興味を持つ自発性に任せたい」という西村さんの子育て観。
2年目を迎えた智頭町の森の幼稚園「まるたんぼう」。ますます県内外から注目が高まっている。
「大人向け・森の幼稚園」があったら私もぜひ参加したいものだ。
※読み始めたら止まらないブログ「智頭の森のようちえん まるたんぼう」
http://blog.zige.jp/marutanbou/
毎日の活動の様子が綴られています!
野外保育を運営している方に共通しているのが、その生活の充実感でしょうか。日々、子どもたちを育てる(文字通り)フィールドが間違っていないことを確信できるのでしょう。
投稿者 hoiku : 2018年03月13日 TweetList
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