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2018年02月27日

野外保育の可能性8 ~森のようちえんはっぴー3~運営する方も潜在思念との乖離がないから楽しい

代表の方へのインタビューです。

自然の中で自然に起きたことに対して、大人と子どもが一緒に丁寧に考えていく【インタビュー】

【プロフィール】
沼倉幸子さん 一般社団法人 森のようちえんはっぴー代表
1961年生まれ。千葉県千葉市の私立幼稚園で幼稚園教諭を勤める。退職後、自然学校の用務・地方移住・「森のようちえん」フォーラム参加の3つの要素から、自身で森のようちえんの開園を決意。千葉県南房総市に「森のようちえんはっぴー」を開園し、同園代表に就任。

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子どもに関わる仕事に、「自分で創りだす」というエッセンスを持ってカムバック

-今までのキャリアをお願いします
学校を卒業してから、幼稚園で11年間働いていました。うち10年は同じ園で、残りの1年は公立幼稚園でアルバイトをしていました。とにかく子どもが好きだったので、すぐにこの世界に入りました。
一度幼稚園を離れ、自然学校の事務を担当したあと、退職して現職の「森のようちえん」を始めました。

-きっかけは何かあったんですか?
この仕事を始めたのは、2つのきっかけがあるんです。
1つは【存在を知った】ということ。毎年行われる「森のようちえん全国交流フォーラム」で初めて「森のようちえん」というキーワードに触れました。そこには、それぞれの思いで、まとめて言うなら「これからやりたい!」という人たちが集まっていました。幼稚園での仕事を離れてから「子どもの世界でもう一度仕事がしたいなぁ」と思っていたのですが、「住宅街の中にある施設で行う、従来の保育の世界に戻るのは嫌だ」と強く思っていたので、大人が準備した園舎・空間を持たず、とにかくなんでもありの自然の中で過ごす「森のようちえん」という保育スタイルを知り、「作られた世界に働きに行くのではなく、自分で創りだすことができる」ことを知り、自分でやってみようと思いました。

もう1つは【移住した】こと。
もともと「森のようちえんをやろう!」と思って移住をしたわけではないのですが、豊かな自然に囲まれているうちに、1つ目のきっかけと気持ちがコラボして「やりたい!」と思うようになっていました。DSCN6172.jpg

「自然」が学び舎。時として牙を向いたことも

-自然体験をメインにしていると大変なことが多そうですが、苦労されたことなどはありますか
2011年4月に、9人の年少さんを迎えて開園したのですが、ご存知同年3月11日の東日本大震災で、「放射能問題」が降りかかってきました。「雨は子どもにあてたくない」という親御さんもいらっしゃいました。幸い気流のおかげで、放射能の影響もなく、お預かりした子どもたちは自然と思い切り戯れていました。

現在は2歳児が5名、幼児(3歳児~5歳児)が27名で、業務内容は幼稚園の先生となんら変わりません。ただし、大きな違いは「建物がない」ところで、自然を教材にした保育を行っています。一日自由に遊ぶ日もあれば、公園(森や海)に出向くこともありませす。陽気によっては海開きより早々に海に入ったり、冬はひだまりをみつけて葉っぱで遊んだりしています。季節によっては有機農家さんに協力をいただいて、食べ物の生産から消費までを身をもって体験するなど、「森のようちえんならではの要素」がたくさんあります。

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自ら動き出すことを尊重。「導く」ではなく「信じる」

-やりがいはどのような時に感じますか
「子どもたちだけで物事を解決したり、前に進めたりしていく瞬間に立ち会った時」に、この仕事のやりがいを強く感じます。
私自身、子どもたちの心の育ちを重要視しています。大人は「導く存在」ではなく「信じる存在」として、なるべく大人の考えを表に出さず、なにかあったら子どもたち同士で解決するように見守ることを心がけています。痛くてないている子がいたら、「いるね~、どうしようね~」として、大人は関与せず、どのように行動するかを見てはいるが、直接介入はしません。大人が入って介助することで、その場は比較的簡単にまとまるかもしれませんが、そこにこそ子どもたちの成長や多くの気付き・発見のチャンスがあると考えています。その期待に応える(?)かのように、子どもたちが自分たちだけで解決した場所に立ち会うと、大きな感動をいただきます。
また、自然の中に長い時間身を置くと、子どもの心が動いた瞬間を共有し、共感できた場に居合わせるという、とても嬉しいことがあります。

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心が動く瞬間に立ち会える喜び。毎日が「ゼロからのスタート」と考える

-森のようちえんならではのエピソードなどあればお願いします
一つエピソードをお話すると、普段訪れない、池のある場所で、その辺りを歩いていた時に、糸トンボの交尾にはちあわせたことがありました。子どもたちと一緒にじーっと見つめているその視界の中には、カエルが池に潜る瞬間があり、クモが糸を張っていたり、トカゲが草むらからひょっこり顔を出したり…と、小さな空間に一度になかなか体験できないことがたくさん起こったのです。

自分たち人間も、一つの生き物として、その空間に溶け込み、ただひたすら無言で観察していたのですが、その帰り道に子どもが「ぼく、虫が大好きになっちゃったよ!」と言ったんです。家に帰ってから思い出の共有はできますが、「心が動いた瞬間」に自分が立ち会えたことにとても喜びを感じました。この仕事をしていてよかったと思うし、幸せだなとひたすら思いました。

今自分の目の前で発生していることを捉えて、客観的に考えるチカラを持って欲しいと思っています。「過去がこうだったから…」という考えのフィルタをかけないようにして、成長を肯定し、起きたことに対してどう考えるかを、大人と子どもが一緒に丁寧に考えていくようにしています。今日起こったこと・明日起こったことが、はたからみて「同じこと」かもしれませんが、すべては「ゼロ地点」として出来事をしっかり見つめることが大切だと考えています。
そうすることで、勤める大人としても、多くの感動に気づき、立会い、幸せと思えることがたくさんあると思っています。

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【団体概要】
一般社団法人森のようちえんはっぴー
http://morihappy.org/
「森のようちえん」は、自然体験活動を基軸にした子育て・保育、乳児・幼少期教育の総称。名称の【森】は「森だけでなく、海や川や野山、里山、畑、都市公園など、広義にとらえた自然体験をするフィールド」を指し、【ようちえん】は「幼稚園だけでなく、保育園、託児所、学童保育、自主保育、自然学校、育児サークル、子育てサロン・ひろば等が含まれ、そこに通う0歳から概ね7歳ぐらいまでの乳児・幼少期の子ども達を対象とした自然体験活動」を示す。
詳細は下記を参照。
http://morinoyouchien.org/about-morinoyouchien

なるほど、やっていることが正しく楽しいことが、潜在思念から太く太く繋がって実感できるのでしょうね。羨ましい限りです。

 

投稿者 hoiku : 2018年02月27日 List   

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