株式会社高齢社:60歳から75歳の方しか雇わない、そんなユニークな企業の、取組みとは?(2) |
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2016年03月03日
「75歳定年制」で日本はどうなるのか~農業の世界では、50代、60代はまだ「若造」
「75歳定年制」で日本はどうなるのか~農業の世界では、50代、60代はまだ「若造」
超高齢化社会。暗いイメージでしたが、この文章を読むと、伝承をもとにした新しい働き方が生まれるように感じられました。
東洋ONLINEより
超高齢化社会は、本当に暗いのか
中原 圭介 :エコノミスト
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前回のコラムでは、「日本は退職年齢を75歳に引き上げるべきである」とお話しました。そんな話を聞くと、日本の未来は暗いと考える人が多いのではないでしょうか。■農業の世界では、50代、60代はまだ「若造」
しかし企業の現場から見て、75歳が定年になると、年長者の持つ技術力を若い世代に引き継いでもらうことも容易になります。これは、日本の技術力の衰退を防ぐ手段にもなるわけです。技術力といっても、製造業に限ったことではなく、ほかの産業についてもいえることです。
特に日本の農業では、せっかく世界一品質の高い作物をつくっているのに、後継者不足に悩んでいます。それは、農業は儲からないと思われているのが理由です。しかし、以前の連載でも述べたように、技術革新によって生産性は飛躍的に向上し、農業は儲かる産業になりうるのです。そのことがわかれば、後継者も増えていくし、70代、80代の人たちに優秀な作物づくりのノウハウを学ぶこともできます。
現在、農業就業者の平均年齢は66歳です。これは、いまの定年退職年齢よりも高い水準です。70代、80代の人たちから見れば、50代、60代はまだまだ若造にすぎません。このように農業の世界を見ると、退職年齢は75歳に引き上げてもまったく問題はないでしょう。
例えば、高齢者の人たちは週2~3日くらいの勤務でかまいません。若い人とワークシェアリングするのではなく、高齢者2人で1人分の仕事をするように、高齢者同士で仕事を分け合うのです。週2~3日ほど会社に来て、若い人たちに技術指導をしてもらう。そうすれば、高齢者にとっては生きがいにもなるし、若い人たちの雇用を奪うこともありません。
これからは、若い労働力が不足していきます。高齢者層の就労によって、それを補うようにもなるのです。これは、社会にとっても本人にとっても、いい生き方だと思います。私が見ている企業の顧問をやっている人たちなどは、70代でも80代でも週の半分くらいはオフィスに来てバリバリに仕事をしています。ある意味、理想的な生き方をしていると思います。■2025年には25%が70歳以上、高齢者の定義も変わる
企業の顧問でなくても、農業のように年長者が現役でバリバリ働き、死ぬ間際まで仕事をして生涯元気という世界があります。生きがいがあるからできるのでしょうが、そういう社会が健全なのです。ですから、75歳定年とはいわず、高齢者がどんどん仕事をする社会になっていくでしょう。
また、平均寿命が上がるだけでなく、健康な高齢者が増加するのを受け、「高齢者」の定義が変わっていくでしょう。
これまでのように65歳以上は高齢者だから、社会から扶養されるという考え方がもはや成り立たないことは、誰もが理解しているはずです。75歳を高齢者と考え、65歳からそれまでの年齢は、むしろ社会を明るくする存在、経済を元気にする存在として、これからの日本の資産になると、発想を転換することが必要になってきます。
要するに、高齢者にもっと長く働いてもらうことで、日本は国際競争力を保つことができるようになります。財政面からも、社会保障制度の維持からも、国際競争力の点からも、高齢者の就業意識からも、これからは高齢者の力を生かす仕組みができていくでしょう。
国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計では、2025年、70歳以上は2950万人で、人口に占める割合は24.5%(およそ4人に1人)です。さらに75歳以上は2178万人で、人口に占める割合は18.1%(およそ5.5人に1人)になります。
さらに2050年を見ると、70歳以上は3104万人で、人口に占める割合は32%(およそ3人に1人)、75歳以上は2384万人で、人口に占める割合は24.6%(およそ4人に1人)になります。75歳まで退職年齢を引き上げれば、将来的に、高齢者の割合はいまとほとんど変わらなくなります。
いまの現役世代の人たちは、健康で寿命も延びて働けるようになっていくのですから、老後を極度に心配することはありません。超高齢化社会はそんなに憂うべきものではないのです。
日本人の老後は心配する必要がなくなるでしょう。そして、いかに心豊かに生涯現役を貫くかを考えるようになります。労働力人口の減少と社会保障費の膨張を考えると、この国の将来のためには、75歳定年を避けて通ることはできませんが、今後は75歳定年を前提に、これから老いつつある私たちは、いかに心豊かに生きていくのかを考えることが大切です。
現在、定年を65歳に引き上げている途中ですが、日本人の65歳以降のライフスタイルは、高齢者同士でワークシェアリングをしたり、ボランティアをしながらコミュニティを大切にするものが主流になってくるでしょう。
これから高齢者になる現役世代の私たちは、高齢化に伴う将来の社会保障の脆弱化や財政悪化による増税をかなり気にしています。しかし、たとえ退職年齢が上がっても、増税になっても、なんら心配はありません。なぜなら、75歳定年の下で、ワークシェアリングをしながら、若い人たちに仕事を伝えていくことが生きがいになるからです。
■「75歳雇用」を視野に入れる企業も増加へ
すでに70歳まで雇用する企業が登場しています。例えば、東急リバブルは、優れたスキルを持つ社員を対象に、継続雇用年齢の上限を70歳に引き上げました。不動産仲介・販売業界では、それまで築いた人脈や営業スキルが重要であり、ベテラン社員ほど、そうした目に見えない財産を持っています。
これまでは、定年後、独立するなどして、そうした貴重な人脈やスキルが社外に流失していましたが、それらを若手社員などへ引き継がせたり、人材育成のサポートをしてもらうのが、70歳雇用延長のねらいのようです。
そのほかにも、大和証券グループ本社でも70歳までの継続雇用を導入しましたし、JFEスチールも65歳を超えた退職者を起用して若手育成役に投入するなどしています。こうした企業のように、雇用年齢を引き上げていく企業が増えていくでしょう。いまは70歳までの雇用ですが、将来的には75歳までの雇用を視野に入れた企業が増えていく流れにあります。
そして、ワークシェアリングの傍ら、余った時間で地域のコミュニティを大切にするといった生き方が主流になってくるでしょう。1人暮らしの老人が増加していくことを考えると、そういった社会との関わりを持つ生き方が、自然な姿になっていくように思います。
地域のコミュニティが失われて久しいといわれていますが、もう一度そこに回帰するわけです。これは社会として、むしろいい方向に向かうことになります。
投稿者 hoiku : 2016年03月03日 TweetList
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