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2014年11月27日

新たな保育の可能性11 高齢者と保育事業、子育て支援を担うおばあさん達

高齢者の仕事継続の仕組みとして、各自治体単位でシルバー人材センターがあります。そのシルバー人材センターは事業の中で、子育て支援を行なっています。主役は、おばあさん達です。

シルバー人材センターとは

シルバー人材センターは、地域毎に1つずつ設置されている高年齢者の自主的な団体で、臨時的・短期的または軽易な業務を、請負・委任の形式で行う公益法人です。

その運営は、公益社団法人として、会員である地域の高年齢者が自主的に行っています。会の役員(理事等)は会員の互選により決まります。会員は、概ね60歳以上の定年退職者・家業の一線を退いた人等が対象です。

シルバー人材センターにおける就業は、定年退職以降の仕事であり、現役世代と同じ規模で働かない事が原則です。そのため、まとまった期間や量の仕事をする際には、会員同士仕事を分け合うワークシェアリングか行われています。

主な事業は以下の通りです。

技術・技能/経理、自動車運転、庭木の剪定、襖・障子張り、大工、塗装作業等

事 務/文書整理、伝票整理、軽事務、毛筆筆耕、宛名書き等

管 理/公共施設管理、駐車場管理、駐輪場管理等

軽作業/公園清掃、除草(草刈)、墓地清掃、農作業、屋内清掃、工場内部分作業等

サービス/家事、育児、介護等

上記の事業内容からも想像できるように、シルバー人材センターは、男子会員が約7割、女性会員が約3割です。(全国平均)

そして、女性会員(おばあさん)が行なう事業が、サービス/家事、育児、介護等です。

高齢者が自主的に事業に取り組んでいるシルバー人材センターのフレームが、子育て支援の枠組みとして活用されています。今回は、シルバー人材センターでの取り組みを見てみました。

子育て支援に取り組んでいる事例として、福井市シルバー人材センター、草加市、伊丹市を取り上げます。3つのシルバーセンターの概要は下表の通りです。hoiku1100 子育て支援や介護事業を積極的に行なっているシルバー人材センターほど、女性会員の比率が高くなり、福井市で41%、伊丹市で39%となります。子育て支援や介護事業の主役がおばあさん達だと確認できます。

子育て支援を行なっているシルバー人材センターの事例

以下、福井市、草加市、伊丹市の事例紹介です。参考資料は、「各シルバー人材センターの取組事例 別添3」です。

1.福井市シルバー人材センターの取組

◆介護と子育て支援の拠点「ひだまりの家」

福井市シルバー人材センターでは、平成元年度から全国に先駆けて福祉・家事援助サービス事業を開始し、平成12年度には、全国のシルバー人材センターのトップを切って介護保険事業に参入。

以降、通所介護事業、小規模多機能型居宅介護事業、介護タクシー事業、指定介護居宅事業等を展開、介護にかかる事業に力点を置いた運営をしてきている。

介護事業の拠点の一つとなるのが、福井市内に所在する「ひだまりの家」である。元々、地元自治体へ物納された物件であったが、地元自治体の後押しもありこれを介護ができる施設に改良し、平成15年10月からこの施設において通所介護事業(「シルバーデイサービス事業」)を開始した。

約2,000坪の敷地に赴きのある日本家屋と広い庭があり、他では見られない落ちついた面持ちの施設となっており、利用者から好評を得ている。

また、同施設では、生後6ヶ月から就学前の幼児の一時預り事業(「シルバーママサービス」)としての保育施設を併設している。

シルバーママサービスの利用時間は月~土曜(祝日、お盆、年末年始を除く)まで8:30~17:30までで1時間350円、8時間を超える場合は700円となっている。

同施設では、看護師、ホームヘルパー、保育士などの資格を持つ会員約30人が、週2日程度の交代制で就業している。地域の介護と子育て支援、高齢者の就業機会の確保の両立を図る事業と言える。

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写真は、左/介護と子育て支援の拠点「ひだまりの家」、右/シルバーママサービス

◆多彩な福井市シルバー人材センターの育児支援事業

ひだまりの家でのシルバーママサービス以外にも下記のような多数の子育て支援を行なっている。

子ども一時預りセンターの~び・のび/駅東さくらビル/火~日/生後6ヶ月~小学3年生の一時預り事業

まちなか保育えくぼシステム/大手ビル/月~土/生後6ヶ月~小学3年生の一時預り事業

ほのぼのプラザ/ワークプラザ/第2・4土曜、夏休み/伝えよう地域の文化と伝統・体験学習

宿題教室/ワークプラザ/夏・冬・春休み/ゆっくり、ていねい復習中心の学習教室

母子家庭等日常生活支援事業/事務局/月~金/母子家庭、父子家庭の生活援助、育児支援

つどいの広場/ワークプラザ/月水金/子育て親子の交流の場、つどいの広場の提供

すみずみ子育て/ひだまりの家等/月~土/既存の制度でカバーしきれない細かな子育てサービスの提供

ほ~っとチャレンジ教室/ワークプラザ/第1・3土曜/小学校低学年の不登校対策事業

2.草加市シルバー人材センターの取組

◆親子のひろば「のびーすく青柳

平成19年度に地元自治体(草加市)の助成を受け、0~3歳児「親子のつどいのひろば のび~すく青柳」を草加市内(大型スーパーマーケット施設内)に開所。

育児に悩む母親などに母親同士の触れあいの場を提供する他、相談日を設け無料で保育士・助産士・栄養士による相談を実施。

「のび~すく青柳」の平成24年度の年間利用者は4,392人(月平均366人)となっており、約10名のシルバー人材センター会員が交替(月6~8日就業)で運営に当たっている(日々2~3人の会員が就業)。

開所時間は午前10時から午後4時迄(土・日・祝日も開所)、月の利用料金は1,200円(一日利用の場合は300円)となっている。 地域の子育て支援と高齢者の就業機会の確保の両立を図る事業として、評価されている。

◆就業する会員の声、利用者の声

公立保育園を退職後、この施設で就業させていただいていますが、大変やり甲斐がある。子供の成長を見守れるのが何より嬉しい。男性会員でも子供が懐いてくれる。また、不審者が覗き込むようなこともあり、男性会員がいると安心感がある。

夫婦ともに県外出身で近隣に知人がいない。家にいてもストレスが溜まるばかりであり、こうした施設が近くにあって大変助かっている。スタッフ(会員)からは便秘など子供の体調が不良の場合の対処方法など育児の上でのアドバイスを親身にしていただいている。

母親同士の触れあいができて助かっている。駐車場もあり、買い物にも便利な立地あり、こうした施設が増えると小さな子供を抱える母親には嬉しい。

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写真は、左/「のびーすく青柳」外観、右/保育士の資格をもつスタッフ

3.伊丹市シルバー人材センター

◆保育園の運営

平成20年10月から認可外保育施設として、月極保育事業を開始。

元々は、市立病院勤務の職員向けの院内保育施設として開所され投資効率の悪さから閉鎖するに至った施設であるが、働く母親のための育児支援を通じて地域にも貢献できると判断し、運営を引き受けたもの。

現在は、病院職員のほか市内に在住または在勤者の0~5歳までの約50名の保育希望者を受け入れている。

同保育園では、職員としての保育士等14人のほかにシルバー会員25人が就業しており、保育の担当として12人、調理担当として4人、管理・事務・用務・清掃担当として9人の会員が活躍している。

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写真は、左/保育所・みどりの保育園、右/保育園の教室と児童

◆就業する会員の声

市民病院で看護助手をし、60歳で退職後、この保育園で就業することになりました。子供と過ごすことができてとても楽しいし、やり甲斐があります。子供から教えられることも多く、続けていきたいと思います(女性会員)。

保育育園で管理などの仕事をしています。園児の父母でない見たことのない方がいきなり入ってくることもあり、気を遣います。様々な催しなどでは子供達とともに動き回りとても楽しく過ごしています(男性会員)。

◆女性会員の就業機会の拡大

女性会員比率は全国平均で32.3%と約3割の状況(全シ協統計年報 平成23年)にあるが、伊丹市シルバー人材センターでは、特に、女性会員の拡大に力を注いでおり、女性会員比率は38.8%となっている。

平成25年4月現在、女性会員数は1,133人となっているが、これまでに拡大してきた特徴のある就業先は、以下のとおりである。

清掃業務(会社・マンションの清掃):約200人

家事援助サービス(高齢者世帯の掃除、洗濯、料理作り、病院の付き添い):約130人

デイサービスセンター(民家を改装し平成17年から運営、7~8人の要介護者へのサービスを提供):約20人

保育園の運営(認可外保育施設を運営):25人

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シルバー人材センターによる子育て支援事業は、地域のおばあさんが係ってくれることで、母親にとって安心の基盤となっています。また、シルバー人材センターは、地域行政との信頼関係もあり、退職した専門家(保育士、看護師など)が中心となり、地域の施設を使うことで、子育て支援の事業が展開されています。

いつまでも社会の役に立ちたいと考えてい高齢者(おじいさん、おばあさん)は、沢山います。その潜在力を顕在化させる組織として、シルバー人材センターが注目されます。

 

投稿者 hoiku : 2014年11月27日 List   

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