新たな保育の可能性9~企業による事業所内保育の可能性1~ |
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2014年11月20日
新たな保育の可能性10~企業による事業所内保育の可能性2~
前回の当ブログ「企業による事業所内保育の可能性1」では、子育てという課題を働く場(職場)に取り入れて、企業活力につなげ成果を上げている企業をご紹介しました。今回の企業による事業所内保育の可能性2では、ひとつの企業だけにとどまらず、地域社会とのつながり、地域社会への貢献にまで昇華させた企業の取り組みについて紹介します。
それが会社内に学童保育を取り入れた、千葉県は大網にある「大里綜合管理株式会社」で、社員数35人、年商約6億円の会社です。同社は不動産業を営んでいますが、本業ではない社会貢献事業に中小企業とは思えないほど精力的に取り組んでいます。その数、なんと140ものプロジェクトにのぼります。なぜそんなにも多くの社会貢献活動に取り組んでいるのかというと、「一隅を照らす」という経営理念の存在によるところが大きいようです。「一隅を照らす」という理念について、同社のサイトではこのように説明をしています。
『生きていることに、めぐりあえたことに感謝し、お役に立ちます・・・。今こうしてこの時代に一緒にいられること、喜びや悲しみを分かち合えることに幸せを感じます。この幸せが無数の人々への感謝の気持ちに変わり、小さな力ですが、その限りを尽くしてお役に立ちたいと思うのです。感謝の気持ちに裏付けされた「お役に立つ」という一人一人の命の輝きこそが、「一隅を照らす」ことだと考えています。』
では、具体的に紹介していきます。
会社内学童保育、コミュニティダイニングおおさと(大里綜合管理株式会社)
大里綜合管理株式会社の野老(ところ)真理子社長には、会社とは“かくあらねばならない”という固定観念がないようです。自分たちにとって、いちばんいいかたちが会社なのだという極めて柔軟かつ自由な発想で、会社を運営されています。だから従来の会社という法人組織では考えられないような自在で闊達な会社経営を可能にしています。
その一つが学童保育です。親が共働きの子どもたちは、学校を終えると、“ただいま”と言って、この会社に帰ってきます。月曜から金曜まで、毎日午後7時までは、会社が保育園を兼ねており、社員の子どもたちだけではなく、地域の子どもたちを受け入れています。土曜日は別に土曜学校というクラスがあり、子どもたちは、社員の仕事の邪魔にならないように、上級生が小さな子どもたちの面倒を見ています。
この会社では、子連れの出勤も珍しくありません。普段は託児所に預けていても、子どもが風邪気味の時などは預かってもらえないこともしばしば。そういう時は子どもを職場に連れて来る社員もいます。職場では、手の空いている社員たちが交代で子どもの面倒を見ます。朝礼の時に、社員の周りで子どもがはしゃぎ回っている光景はほほ笑ましく、年中子どもの声が聞こえている会社なのです。
この会社は学童保育だけではない、韓国語や中国語の語学教室、コンサートや寄席、町の掃除など60種以上の地域貢献活動を実施しています。カルチャーセンターや公民館活動も顔負けの、多彩なプログラムを実施しているため、子どもたちだけではなく、地元住民のサロンにもなっているのです。
野老社長の下記の言葉をとても心に残ります。
「会社ですから、利益を上げなければ給料は払えません。でも、利益は地域貢献と一致させてこそ出るものと思っています」
不動産業は地域とのつながりがなくして成り立たないことを意識し、地域社会が元気にならなければ会社も成り立たないことを見通した野老社長の経営方針が、大里綜合管理(株)に発展をもたらしました。
以下の野老社長の言葉からは「利益は地域貢献と一致させてこそ」ということば実現されていることが伺えます。
「当初、地域活動を始めたころは経費を販売促進費という名目で決済していました。しかし、赤字では、地域貢献活動も長続きしませんので、昨年はすべてのプログラムをプラスマイナスゼロにしようとみんなで約束したんです。担当者の頑張りのおかげで、平成19年度は持ち出しはありません。講師の謝金や交通費やもろもろの経費を、参加された方たちからの参加費で賄うことができました。もちろん、これにかかわる社員の人件費のコストは計算には入ってはおりませんけれど」
どんな立派な活動も、赤字では続かない。60種以上に及ぶプログラムのすべてが採算が合っているというのは、脱帽するしかありません。
企業は地域の中のひとつと捉え、学童保育などの育児事業を含めた多彩なプログラムを新たな仕事として成立させている、野老社長の大里綜合管理株式会社は注目です。
投稿者 hoiku : 2014年11月20日 TweetList
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