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2012年01月23日

『生きる力を育てる教育』~遊びの効用(2)「遊び」の概念が無い世界~

これまで『生きる力を育てる教育』シリーズでは、以下の記事をアップしてきました。

1.プロローグ
2.寺子屋に学ぶ教育のあり方
3.農民のための寺子屋での実学教育
4.「農」の教育力とは?
5.「農」教育が育むもの
6.現代の新しい教育~やる気のスイッチを入れる
7.現代の新しい教育~やる気のスイッチを入れる part2
8.遊びの効用(1)子どもにとって、「遊び」は最大の学習課題

前回の記事『8.遊びの効用(1)子どもにとって「遊び」は最大の学習課題』では、

「遊び」とは外圧に適応するための重要な学習課題
動物も人類「遊び」を通して外部世界に適応する術を自然と身につけてきた

ということがわかり「遊び」の重要性を理解できました。

とは言うものの、

「勉強」時間を減らして「遊び」時間を増やすだけでいいの?
「遊びなさい」と言っても子供たちに何の遊びをさせればいいのか・・・。
現代の環境では子供たちの「遊び」にも制約が有り過ぎるのでは・・・。

などなど「具体的にどうしていけばいいのか?」を考えていくと、疑問がたくさん出てきます。どうも単純にはいかない問題のようです。

前回に引き続き、子供たちの「遊び」についてもう少し掘り下げて考えていくことにしましょう。

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1.「遊び」とは

現代社会での「遊び」「遊んでないで勉強しなさい!」で代表されるように、「勉強」と対峙するものとして使われることが多いです。また「遊び人」という言葉があるように、仕事しない、怠ける、さぼる、女たらし、不真面目といった自堕落なマイナスイメージを連想させます。動物と同様、生きていく上で重要な学習課題であったはずの「遊び」が、なぜこのように扱われるようになったのでしょうか?

調べてみると、これはどうも現代特有の固定観念であることがわかります。
古語辞典によると、昔の「遊び」にはいろいろな概念が含まれていたようです。

・心のままに動きまわる
・ある楽しみごとに専心して時を過ごす
・泳ぐ、水中で自由にふるまう
・音楽をかなでる
・利用されないであいている
・ひまに暮らす

どちらかと言うと「ゆとりがある」「余裕がある」という意味合いの方が大きく、現代の「遊び」に対するイメージとは明らかに異なります。(現代でも「ブレーキに遊びを持たせる」などがこの意味で使われてますね)

こうして見ると、どうやら現代の「遊び」は、近代思想によって意図的に概念を固定化されている疑いがあります。これからの子供の「遊び」を考えていくには、まず「遊び」に対する現代特有の固定観念を払拭する必要がありますね。

2.「遊び」の概念が無い社会

カナダ北部の氷雪地帯に、イヌイットと呼ばれる先住民族(エスキモー系諸民族 の1つ)がいます。19世紀に初めて他国の人と接触を持つようになった民族で、何世紀もの間、外部世界とほとんど孤絶して暮らしていたようです。彼らの「遊び」を見ていくことで、近代思想の影響を受けていない本来の「遊び」の姿が見えてくるのかもしれません。

「遊び」と「労働」の区別の無い世界(リンク

《イヌイットの遊び》(リンク
極北民族であるイヌイットほど遊び好きな人々はほかにないような気がする。猟の途中でも、簗で魚をとっている間でも、テントでくつろいでいるときでも、老若男女いつでもどこでも遊びに興じてしまう。

ここで注意すべきは、イヌイットには「遊び」と「労働」という観念を区別する思想はなかったことである。それぞれの遊びやゲームには名前があったが、これは「遊び」だ、これは「労働」だという区分はなかった。私たちが遊びと分類する行動は、イヌイットにとって生きていく上、心理的な対応と行動の技術の学習・向上を促進させるとともに、社会生活が円満に営まれるための役割を果たしていた。つまり、イヌイットの「遊び」とそのほかの行動は表裏一体の関係にあり、遊びは生き抜く術の予行演習であった。

《イヌイットの遊びの特徴》

①イヌイット社会における遊びは計画的に行なわれるのではなく、状況次第で即興的に行なわれる。ハンターがカリブー猟の途中、一休みをしているときに紐を取り出してあやとりをすることはめずらしくない。あるいは、キャンプで皆がくつろいでいるとき、誰ともなく腕相撲をはじめたり、テントの外でカラスやカモメを目がけて石を投げたりするのである。また、遊んでいると思えば、ゲームを突然にやめて漁に出かける。いうまでもなく、子どもはいつも遊んでいる。橇に乗って人形遊びをしたり、大人に作ってもらったおもちゃの道具や本物の道具を使ってごっこ遊びにうつつをぬかしている。

②イヌイットの遊びには専用の用具は少なく、身のまわりのものを応用して遊ぶことが多い。野球をする場合、海岸に打ちあげられた流木やツンドラにころがっているカリブーの角をバットに、皮の切れ端にコケをつめて皮紐でしばったボールを手早くこしらえて遊びだす。キャンプを移せば、作った遊び用具を放置して、次の試合にまた作るのである。

④力比べのゲームが多いのもイヌイット遊びの特徴の一つである。成人の男性が参加する87の遊びのうち、53(60%)は力を重視する遊びである。しかし、イヌイットの力比べは必ずしも馬鹿力を発揮するものとは限らない。地面においた重さ60~80キロの石を移す石運びや重量挙げのように、奮発力を要するゲームは少数あるが、正座跳び、高蹴り、「鉄棒」・リング体操、片手の腕立て伏せの姿勢になり反対の手で回す紐を跳ぶ片手紐まわし跳びのように、多くのゲームでは力のほかに集中力と運動神経が必要である。イヌイット社会のゲームでは力と雅、機知と詩趣、自信と自重、器用さと敏捷さをもちあわせた精神が高く評価され、力ずくで相手をぶったおすという心構えはあさましいとされる。

⑤幼児・児童(思春期前の子ども)の34の遊びは3つの種類に分けることができる。一つは、役割学習に関連する、大人の活動をまねるごっこ遊びである。人形を使う赤ちゃんごっこ(女子)、小さな雪の家の中での、地面にあおむけに寝る子の周りに石を並べる墓遊び(男女)、地面に石を並べて、簗で魚をとる漁撈ごっこ(男子)、角を頭にかざしている子を追いかける狩猟ごっこ(男子)、ミニチュアの橇を数人の子どもが引くごっこなど、大人のすることすべてが子どものまねるごっこ遊びとなる。ごっこ遊びではないが、絵話や昔話も子どもに社会のあり方を教える役割を果たしている。

【引用ここまで】

イヌイットの人たちの「遊び」とは「真似る」=「まなぶ」ことなのだと思います。だからこそ、老若男女、いくつになっても「遊ぶ」ことをやめることはない。
「遊びは生き抜く術の予行演習」。
これが「遊び」の本質ではないでしょうか?

イヌイット人の「遊び」、外圧に適応するための予行演習の一つでした。そして、そもそも彼らの頭の中には、「遊び」という概念すらなかったのです。
「遊び」の中身を考えようとしているのに「遊び」の概念すらない事例なんて、振り出しに戻ったと思われる方も多いと思いますが、実はこの事実の中に、今後の教育を考える上での大きなヒントが隠されているように思います。

3.具体的にどうしていくか?

一言に「遊び」といっても、教育制度を含めた様々な社会制度や生活環境などいろいろなものから影響を受けているので、残念ながらそう簡単に答えは出ません。かと言って、このままでは純真な子供たちに苦しみを強いるばかりなので、今出来ることは何かないか?少し考えてみました。

まずは、現代、私達大人が考える「遊び」は、近代思想によって意図的に固定化された「遊び」だということを理解し、「遊び」に対するマイナスな固定観念を払拭しましょう。子供たちが考えだした新たな「遊び」などは、積極的に評価してあげるのもいいかもしれません。
次に、「遊び」とは、冒頭に書いたように外圧に適応するための重要な学習課題です。ということは、私権が衰弱し外圧が私権圧力から同類圧力への変化した現在、子供たちも同類圧力に適応するための学習が必要になってきます。個的な「遊び」ではなく、同類圧力をダイレクトに感じることが出来る仲間空間へ子供を誘導していくのも一つの方法だと思います。
最後に、これが一番重要なことだと思いますが、「遊び」とは「真似る」=「まなぶ」ことだとすれば、子供が真似る対象は私達大人自身です。まずは私達大人が、現在の外圧を的確に捉えられるよう観念力を身に付けることが必要なのだと思います。大人が子供に向かって言う「遊んでいないで勉強しなさい!」は、自戒の言葉なのかもしれません。
現代人は観念機能が著しく衰弱しているので大人も「勉強」が必要です。『観念追求力の構造を考える①②』)

子供たちの「遊び」は大人次第で変わるものだ思えてきました。他に良い方法があればコメント欄にご記入お願いします。

4.まとめ

イヌイット人がそうであった様に、「遊び」という概念がそもそも不要なものなのかもしれません。これからの社会では、「勉強?遊び?どっちかわからない」と子供たちに思わせるような、充足を伴った「勉強」を教育の中に取り込んでいく必要があるのだと思います。

次回は、現代の「遊び」について、もう少し掘り下げて考えていくことにします。

 


 

投稿者 isgitmhr : 2012年01月23日 List   

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