| メイン |

2011年12月29日

『生きる力を育てる教育』~現代の新しい教育~やる気のスイッチを入れる part2

ヨコミネ式に続き、
もうひとつ、やる気のスイッチをを入れる事例を紹介しましょう。

今回はもう少し大人で、高校生の「やる気のスイッチ」を
品川女子学院の漆 紫穂子校長先生の話を参考に紹介します。

るいネット~『「やる気のスイッチ」を入れるには』

 「やる気のスイッチ」 は3つ
1.できないと思っていたことができた時
2.これはみんなのためになると思えた時

3.自分のやりたいこと、目標ができた時

%E5%93%81%E5%B7%9D%E5%A5%B3%E5%AD%90.jpeg

続きも応援よろしくお願いします

 にほんブログ村 子育てブログへ

①できないと思っていたことができた時

%E6%9E%95%E8%8D%89%E5%AD%90%EF%BC%92.jpg
 こんなことがありました。国語の教員をしていた時、古文の授業で『枕草子』の暗唱をしていました。私が「この時間内に一段全部を覚えましょう」と言うと、多くの生徒は「そんなの無理、できない」と尻込みします。確かに、古語はなじみのない言葉なので一人でやろうとすると難しいのですが、「みんなで立って声を出して読む」「チーム戦などでゲーム性を持たせる」などの工夫をすると、不思議なことに、苦手な子も含めクラス全員が本当に一校時内に覚えてしまうのです。
 ある時、クラス全員で立って読むと一通り暗唱できるようになったので、「今度は1人ずつやってみよう」と、1人の子を指名しました。その子は古文がそれほど得意でも好きでもなく、「当たっちゃった」と困った顔をしていたので、「1番目の人は緊張して当たり前。でも、もしできたとしたらどう?」と声をかけました。

 周りの子も、今みんなで一緒に覚えたばかりなので、自分たちの代表を応援するようなムードになって見守りました。そして、当たった彼女がいざ暗唱を始めると、スラスラと一度もつかえず最後までできたのです。クラス中から「わあ、すごーい」と拍手がわき起こりました。

 本人は、とてもできるとは思っていなかったのでしょう。びっくりして顔を赤くし、照れたように、そして、とても満足そうな笑顔を浮かべていました。できないと思っていたことが、やってみたら思いがけずできたうえ、友達みんなが拍手して褒めてくれた。大人が聞けば些細な出来事のようですが、彼女にとっては、自信につながる成功体験になったのです。 この生徒はこれをきっかけに、すっかり古文が好きになり、自分からどんどん予習を進め、少しでも分からないところがあると質問に来るようになりました。これは中等部でのことでしたが、高等部へ行っても彼女の情熱は衰えず、古文では常にトップクラスになりました。

 大学に行って専門的に学びたいと思ったことで、他の教科の成績も上がり、希望の進路に進むことができました。後で本人も、あの時の授業がきっかけだったと言っていました。 「できないと思っていたことができた」。この小さな成功体験が、やる気のスイッチを入れ、その他の能力も巻き込みながら伸びていったのです。

「苦手なんだよな・・・」と思っていたこと。でも実際やってみたら「出来た!」。
その時のみんなの笑顔と拍手で、やる気のスイッチがカチン☆と入る。

機会に出会えなかったり、苦手意識が先行して、やらないままで過ごしてしまう。
でもみんなと一緒に取り組むことの充足や、みんなが評価してくれた充足が相まって、
もっともっと充足したいと、対象を自分から周りのみんなへと向けていく。
(気がつけば、過去の踏み止まっていた自分にサヨナラ)

②これはみんなのためになると思えた時

 本校の場合、生徒が主体となって委員会やクラブ活動、校内行事などを運営しています。大人から見ると、勉強との両立が心配になったり、「自分の面倒も見られないのに人の世話なんて」と言いたくなったりすることもあるかもしれません。でも、自分のためだとやる気がでなくても、みんなのためだと頑張れる子もいるのです。
 去年の文化祭の時のことです。企業とのコラボレーションで企画した製品が実際に販売されることになり、記者発表会を行うことになりました。本校はそれでなくても一人何役もやる学校なので、企画に参加していた生徒たちは大忙しでした。「クラブも委員会もあるのに大丈夫?」と声をかけたら、「覚悟のうえですから」と言うのです。「朝の4時に起きて原稿を書いたり、パワーポイントで資料を作ったりしている」「あまり寝ていないから目が乾いて、コンタクトレンズが入らない」などと言いながらも、「みんなのためだと思うと頑張れる」と話していて、頼もしく感じました。
 私自身、こんな原体験があります。学生時代、バスケットをしていたのですが、自分が後輩の立場で、先輩に言われたことをやっている時は、肉体的にとても苦しくて、途中で倒れないよう無意識にエネルギーをセーブしていました。
 自分が上級生になってキャプテンになり、「みんなのために」ということを考える立場になったら、それが変わりました。「私はみんなの見本にならなければいけないから限界までやる」と覚悟を決め、常に全力を出し切るようになったのです。例えば、シュートを失敗したら初めからやり直しといった練習を、自分がクリアできた後も、最後の一人ができるまで一緒にやり続けるとか。

 この時、不思議な感覚が自分の中に生まれました。体力的には変わっておらず、運動量が倍増しているのに、肉体的な苦しさを感じなくなってきたのです。自分の気持ちが後ろ向きな時は苦しく、自分の気持ちが前向きな時、私の場合であれば「みんなのために」と思えた時は、苦しさが減る。自分のために出せるエネルギーには限界があり、人のために出すエネルギーは無限にどこからか補給される。それをこの時、体で実感しました。

 本校がいろいろな行事やクラブ活動などに積極的に取り組んでいるのは、縦横の人間関係の中で「チームでやる」ということを大事にしているからです。これにより、1人でも多くの生徒が「みんなのために」と感じられる機会を持ち、スイッチが入る瞬間につながっていくことを願っています。

どんなに困難な課題でも、「みんなのため」だと思うと乗り越えられる気がしてくる。
みんなの期待が掴めたとき、それに応えたい!という、やる気のスイッチがカチン☆と入る。

「自分」を思い浮かべても、フワフワとした自分しかいない。=対象がない。
でも「みんな」をイメージすると、今までの期待⇔応望の充足=みんなの笑顔が浮かんでくる。
元気はみんなに貰うもの。だから、エネルギーは無限☆
次から次へと、対象をどんどん外へ広げようとしてゆく。

③(自分のやりたいこと、目標ができた時)
⇒みんなから評価される人に出会えた時

%E8%81%B7%E6%A5%AD%E5%90%8C%E5%8C%96.jpg
先日、中1のお母さんがこんなことをおっしゃっていました。「うちの子、急にやる気が出て、勉強でも何でも一生懸命なので、何があったの?と聞くと、『目標があるから頑張れる』って言うんですよ」。

 目標ができると、子供は大きく伸びます。とはいえ、生徒の中には目標がなかなか見つからない子も少なくありません。そういう時、あまり「目標、目標」と言うと、かえってそれがプレッシャーになってやる気を失わせてしまうかもしれません。

 ですから、本校では、目標を持たせるのではなく、結果としてそれが目標につながるような機会、好きなことや、やりたいことに出会えるような「体験の場」を多く設けています。「人は変えられない。環境を変えることで気持ちが変わる」と考えているからです。

 本校の場合、企業とのコラボレーションや起業体験プログラム、大学との連携などを通して、社会人や大学生と接する機会が多くあります。そうした中で、 「この人はかっこいい」「こんな仕事があるのか」と生徒に具体的にイメージしてもらえたらと思っています。その未来のイメージから逆算して、この人のようになるにはどうしたらいいか、その仕事にはどうしたら就けるのかを考え、調べていくうちに少しずつ本当にやりたいことに近づいていくことがあるからです。

 社会の第一線で活躍している人にお話をしていただくと、「初めは世間体をつくろうため就職した」「仕事の傍らやっていた趣味が本業になった」「途中で仕事を何度も替わった」といろいろで、それを聞いて生徒の中には「最初に目標がなくても、途中で変わってもいいんですね」と、ほっとする子もいます。私自身、はっきりと教員になると決めたのは23歳、その後、今の道へと覚悟を決めたのが28歳でした。

ある生徒がこんなことを言っていました。「特別講座を受けたり、責任者を務めたりすることが何につながるか分からなかったけれど、やってみると何となく方向性が見えてくる。一つ山を登ると次の山が見えてくる感じです」と。

子供達たちのやる気のスイッチが入りやすい環境を整えること、それが大人の仕事だと思います。それさえあれば、子供たちは自分の力で道を切り開いていってくれると私は信じています

「自分もこういう風になれたらいいな」と思わせてくれる人とめぐり合う。
そんな「なりたいな」と思える同化対象と出会えた時に、やる気のスイッチがカチン☆と入る。

「目標」というと、限定された何か一つのことに絞り込んだイメージになる。
しかし、「同化対象」となると、そこには無限の広がりがあり、
対象が広い=多いほど成長できる機会が増えることになる。

ここまでをまとめると、
①対象を外に向かせるきっかけを与え、
②みんなの充足が羅針盤になることを気付かせ、
③既に周りのみんなを充足させている(評価されている)同化対象に向き合わせる。

となります。

いまや小・中・高校における勉強のほとんどは、「自分のため」です。ですが品川女子の事例は、「みんなのため」に頭を使うことで、やる気のスイッチが入っていることを実証しています。

前回記事のヨコミネ式の「やる気のスイッチ」は同類圧力(仲間との期待・評価)でした。品川女子学院も同じで、より対象を「自分→みんな・仲間」へと向かせることでスイッチが入る構造。自分の課題と同類の課題の線引きを無くしてあげる事で、やる気のエンジンが育まれるのです

幼児に限らずで高校生でも一緒。加えて言えば、社会全体が同類圧力へ変化していることを鑑みると、大人も一緒。大人の再教育としても、活かせる新しい教育なのかもしれません。

投稿者 pochi : 2011年12月29日 List   

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://web.kansya.jp.net/blog/2011/12/1252.html/trackback

コメントしてください