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2011年12月15日
『生きる力を育てる教育』~「農」教育が育むもの~
みなさん、こんにちは^^*
『生きる力を育てる教育』シリーズ前回の記事では、農における教育力 についてみてきました。
子供の時から、すすんで身近な自然に親しみ、農作業を経験し、地域の活動や調査に参画し、そこから得た智慧を暮らしに活かし、自らの地域を変え、築き上げていく努力の中にこそ、これから創り上げていく共同体社会の姿があるのでしょう――。(前回の記事より)
ひとり一人を成長させるだけでなく、私たちをとりまく社会のあり方をも変えていく、と~っても大きな可能性を感じましたね
こうした農における教育力に着目した様々な試みは、全国各地でも広がっています。
農林水産省によると、学校における農業体験学習は、小学校の80%、中学校の33%で行われているそうです。(農業体験学習の実施率 2009年より)
農業体験学習の中身は、「学校の畑で芋掘り」や「バケツで稲を育てる」という身近な体験から、実際に農村に行って「田植え体験」という本格的なものまで、学校によって様々あるようですが、今回はより本格的な体験に着目し、子どもの頃にそのような「農」に触れる経験が、どんな力を育むのか、具体事例を交えてご紹介します 😀
つづきも応援よろしくお願いします
「農」教育の具体事例として、農林水産省の「子ども農山漁村交流プロジェクト」(愛称:ふるさと子ども夢学校)の報告書(原文はコチラ)より紹介します。
-豊かに表現する力をはぐくむ体験活動-
~静岡県相楽町立萩間小学校5年生の米づくり体験より~
(1)田植え体験-失敗から学んだものは-
「きゃあ、気持ち悪いよ。」裸足で田に入ることそれ自体が貴重な体験となっている子どもたちは、講師のおばあさんから苗の植え方を教わり、教師手作りの尺ロープに沿って整然と苗を植えていく。田植えの苦労も楽しみに変えてしまうほどの活発な活動だった。ところが、友達に渡そうと思って投げた苗が隣の田に入った。すると、そこで作業をしていたおばさんが、その苗を拾ってくださった。担任は「隣のおばさんは周りのことも考えて作業している。」と厳しい姿勢で伝え、自分たちの取組を反省させた。子どもたちは、心を込めて世話をしていくことを確認し合い、お詫びの手紙を書き上げた。失敗が貴重な学びの場となった出来事であった。
(2)日常の観察を続けて-事実への驚き-
休み時間を利用して観察記録をつけることになった。休日に友達と連れ立って田の様子を見に来る子もいる。そうした中、N君が黄色い斑点のついた葉を見つけ、「葉イモチ病にかかっている。」と社会科の学習で調べた病気の写真を広げながら訴えた。「本当だ。」社会科で学習している稲の病気が、実際に自分たちの田で発生しているという事実への子どもたちの驚きは大きかった。学んで得た知識と体験がつながった瞬間だった。
子どもたちの観察の仕方が変わってきた。自分たちで決めた観点だけを観察していた児童の取組が、より具体的な追求に変化してきたのだ。稲が実をつけ始めたころ、その中身が白い液状だった。これを発見したM子は、「これがお米になるのかなあ。」と疑問を持ち、数日後、同じように調べてみた。すると、今度は個体の状態(米)になっていた。「やっぱりそうだ。」M子は、体験を通して納得していった。
(3)「農薬をまくか?!」-体験としなやかな主体性-
「これが稲の穂だよ。」学校支援委員のOさんに生育状況を説明していただき、柔らかな穂を間近に見た子どもたちは、「これがこれからお米になるんだ。」と収穫への期待に胸を膨らませた。しかし、田から出た際に互いの足を見てびっくり。ズボンに虫がべったりと付着していたのだ。「イネアオムシ」、これは、稲の葉を食い荒らす害虫だったのである。よく見ると、もち米の稲の葉が虫食いだらけである。衝撃的なこの体験は、「無農薬で育てよう。」と決めていた子どもたちの心を大きく揺らした。
翌日の総合的な学習の時間は、「農薬をまいて、蛙も一緒に死んだら困る。」という発言がきっかけとなり、自分の思いを互いに出し合う話し合いとなった。「虫にも命があるけど、このままではお米がとれなくなりそうだから、農薬をまきたい。」「自分たちがせっかく育てた稲だから守りたい。」という発言が相次いだ。昨日の衝撃的な体験、稲の生長を見守る温かな心情から、「無農薬がいい。」と主張する子どもが一人もいなくなったのも理解できた。しかし、Oさんの「害虫という虫はいないよ。」という言葉が子どもたちの心に引っかかり、簡単に「農薬をまこう。」という結論にはならなかった。苦肉の策として「蛙を逃がしてから農薬をまこう。」という意見が出され、「蛙救出作戦」を実行することになった。農薬を使うことを自らの問題として受け止め、主体的に解決しようとする子どもたちの姿が見られた。その後、かかしや鳥おどしを使っての害鳥対策も実行し、稲に何事か起きたらすぐに学校に集まることを約束して、夏休みを迎えた。
(4)稲刈り-先人の知恵-
意気揚々と田んぼに向かった子どもたちであったが、すぐに稲刈りに取りかかるということはなかった。刈った稲を束ねるための“すがい”を作る作業があった。藁を編んで作るのは簡単ではなかったが、自然のものを無駄なく利用するという知恵に感心していた。また、刈った稲を“はざ”に掛けるために、交差させて束ねることも教わった。初めて使う鎌に四苦八苦しながらも、稲刈りは無事に終わった。作業後の作文には、自分の父母が、かつてすがい作りを手伝ったことを聞いたり、今まで家の米作りに無関心であったことを反省したりした様子が書かれていた。
これらの体験を通して、
ただ成果を上げるだけでなく、周りのことも考えることを学び
知識を詰め込むだけでなく、自らの体験を通して身につけ
答えのある課題だけでなく、未明課題を仲間と一緒に考え
一人じゃできないことを知り、先人や周りの人たちに感謝する
子供達の姿が見られますね☆+゜
続いて、小学校5年生のときに「子ども農山漁村交流プロジェクト」に参加した、現在中学3年生のその後の体験談(原文はコチラ)をご紹介します
友達や家族、新しい自分、農家の人の苦労…。大切なものを見つけました。
農業体験なんて一度もやったことがなかったし、弟たちの面倒もみなくていい!友達とずっとおしゃべりができる!って思って、楽しみでしょうがなかったんです。
10日間分の荷物をリュックに詰めて、電車を乗り継いで山形まで行きました。現地に着いたら、駅にはだーれもいなくて、線路も二本しかなくて…。夜も真っ暗だし、東京とは大違い。田んぼが遠くまで広がっていて、山があって、川が流れていて、日本にもこんなところがあったのかと思うくらいきれいな風景でした。
里芋掘りではどろんこになって、だれが一番たくさんとれるか競争しました。東京にいたら、ちょっと砂が付いただけでいやなのに、どろんこになるのがおもしろくて。イナゴも初めて見たんです。ふだんは虫なんて触れないのに、思わずつかまえてじっくり観察しちゃった。「私こんなことしてる」って、新しい自分を発見した感じでした。
現地の人たちみんながやさしくしてくれたのをよく覚えています。稲刈りのときも魚釣りのときも親切にいろいろ教えてくれて、宿の人は山までキノコを採りに行って、お味噌汁を作ってくれました。それまでは、ご飯を残すこともあったんだけど、お米をつくる大変さや魚も減ってるっていう話を聞いたら、食べ物を残すなんてできなくなりました。
7日目ぐらいになったとき、ホームシックになって泣き出す子がいたんです。そしたら、つられてみんなが泣き出して、私も弟たちが心配になっちゃった。面倒見なくていいって思っていたはずなのに…。でも、歌ったり、お笑いショーをやろうなんて言い出す子がいて、みんな元気になりました。
帰ったら、お父さんが「大人っぽくなったな」って言ってた。自分でもそう思いました。集団生活するといろいろがまんしなきゃならないからかな。友達みんなと仲良くなれたし、困ったことがあったら協力して解決するようになりました。またみんなで行きたいです。
新しい自分に出会い、枠が広がった体験がイキイキと語られていますね☆+゜
このように自らの体験を後輩たちに伝えることもまた、充足体験になっていくのでしょう
上記の事例から分かるように、「農」に触れることによって、今までの思考の枠を広げ、『事実を追求する力』、『仲間と協力する力』や『感謝の心』が育まれています。
生きとし生けるものは外圧適応態です。
その外圧は現在に至るまで自然圧力→私権圧力→同類圧力(人と人との関係の中に生じる圧力)へと変化してきました。
教育の中身も、それに合わせて変化しています。
自然外圧が高かった時代は農業などの実学 を、
私権圧力が高かった時代は受験勉強 を…という風に。
同類圧力が高くなった現在は、みんなの期待に応えて『事実を追求する力』、『仲間と協力する力』や『感謝の心』が生きる力として求められています。
農における教育力 が注目されているのも、「農」に触れることによって、上記のような力を育むことができるからでしょう。
このような力を育むのはもちろん「農」教育だけではありません
次回からは「農」という枠を取っ払って、生きる力を育む教育として可能性を感じる現代の取り組み を紹介していきたいと思います。
お楽しみに~
投稿者 chiue : 2011年12月15日 TweetList
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