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2010年07月04日
新たな時代の教育制度の提案に向けて~総集編
こんにちは 😀 、よしたつです
今回で『新たな時代の教育制度の提案に向けて』立上げたシリーズ投稿も終盤を迎えました。今回は、改めて各国の教育体制の総まとめをします。
そして、次回、最終回ではその総括をしていきたいと思います!!
■各国の教育体制概論
イギリスの場合、教育体制の大前提が身分階級ありきという統制の下で成立している。つまり、一般大衆には基本的に身分上位への門戸は開かれていないことを意味する。(注:その中の一部とりわけ優秀な学生だけはそれを突破する可能性が多少残っているが、それは非常に狭き門であり、現実的ではない。)
また、多くの国民がその状況に対して何の疑問も持たずに許容している(現実は変わらないというあきらめからなのか?)。その状況は、おそらくイギリスが産業革命時の成功者であったために、当時、その恩恵を受けた貴族も多く、産業革命の波に乗り遅れたフランスとは異なり、貴族の力が強大であり続けられたことが大きいからであろう。だから、中流階級層から旧体制への反発は、富の格差の力の前で押さえ込まれ、革命という形では生じえなかったのが大きい。結果、イギリスでは、王政はそのまま続けられることになり、とりわけ階級色を残した形の独特な教育体制を維持し、それが現在に至っていると言える。
以上から、イギリスでの社会統合を担う特権的地位を確保できるのは、貴族や一部の富裕層で優秀な学生に限られている。
ドイツの場合も、イギリスと同様に教育体制の大前提に階級制度がある。ドイツの特色は、生まれた家柄と身分階級を受け入れ、その上で純粋な職業労働者としての育成(実学教育)をすることに力点が置かれている。それを物語るように、世間一般に『職人の子は職人』などといった序列意識が現在も変わることなく根付いているのが特徴的で、概ね10歳前後には、将来の進路(=職業)をほぼ決めなければいけなく、子ども達はその技能の習得のために公教育を受けるようになっている。
とは言え、過去何度かこの体制への批判や反対もあったが、貴族階級の勢力が未だ根強く、2000年のPISA(国際学習到達度調査)の結果が散々な結果であったことを受けて、ようやく改革の動きが見られたものの、今なおその原形を維持しているのが現状である。
以上から、ドイツでの社会統合を担う特権的地位を確保できるのも、イギリスと同様、貴族や一部の富裕層で優秀な学生に限られている。
引き続き、フランス、アメリカ、北欧、アジアの教育体制概論に行きますが、
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フランスの場合は、先のイギリス、ドイツと異なり、フランス革命以降の旧体制の廃止の影響が大きい。つまり、身分階級制度の格差をなくし、「自由・平等・友愛」の精神の下、誰もが同じ教育を受ける権利を持つことを前提としている。ゆえに義務教育~高校・大学と無償で教育を受けることができる公教育を早くから導入している。(補:この実現基盤にはフランスが産業革命に乗り遅れたことが大きく影響している。イギリスが強大な力を蓄えていく中、中流階級層を中心として旧体制への反発の形として革命を成功することができた)
ただし、それは非常に表向きの顔であり、裏の顔として、親の社会的地位・家庭環境に恵まれた一部の優秀な生徒を特権階級(政治家、学者)に仕立て上げるためのエリート製造装置としての別ルートが用意されている。『グランド・ゼコール』という教育制度がそれである。
以上から、フランスでは「自由・平等・友愛」を理念とした社会と、一方で、一部の人を対象にした徹底した「学歴社会」を形成していることになった。これは、結局のところ、社会統合を担う特権的地位を確保できるのは、イギリスとドイツでの『生来の身分階級』に取って代わって、『学歴による身分階級』の者が対象となっているにすぎず、特権階級が一部の者に牛耳られている体制には変わっていない。
アメリカは他の国と異なり、国家としての歴史が浅く、身分序列を前提とした教育ではないため、フランスと同様「自由・平等・友愛」の理念の下の教育が根本になっている。また、その教育の中身も個性を伸ばす教育を主眼にしており、中等教育までは教育機関の独立性(中等教育まで州が管轄)も高く、学校ごとに内容も進捗もバラバラな状況にある。ゆえに大学進学時には全国共通テスト(SATやACT)を行い査定している。これが一般的なアメリカにおける公教育である。
しかし、アメリカも一部の人を対象にした徹底した「学歴社会」があり、それがスーパーエリート養成校としてのボーディングスクールにある。やはりアメリカも社会統合を担う特権的地位を確保できるのは、とりわけ裕福な家庭の子供が後天的に得られた環境があって初めて実現できる傾向があり、特権階級が一部の者に牛耳られている体制には変わっていない。
【北欧の教育体制概論】リンク9
北欧の教育はレベルが高いとよく注目されていることもあり、北欧諸国の共通の特徴である、『平等主義、福祉主義』が教育方針の秘訣であるかのように論じられるが、よくよく実態を見てみるとそうでもないことが明確にわかってくる。その好例が北欧でも対極にあるスウェーデンとフィンランドである。
スウェーデンと言えば歴史上、北欧において常に強国として君臨し、また200年近く、戦争の被害を受けていないという平和の歴史が潤沢な財政を蓄積させることを可能にさせ、その財政を分配して国民がより平等で老後も安心して暮らせる理想の国家像として福祉国家を構想し誕生している。
一方でフィンランドは、スウェーデンとロシア(ソビエト連邦)という2大強国に挟まれた配置上、常に他国からの侵略に抵抗しながら、民族の団結力でどうにか国家として存続させてきた背景があり、小国ゆえにみんなで協力して国家として成立させてゆくことが自分達が存続できる唯一の手段であるとして外圧適応共同体としての福祉国家を選んだ。
以上から、この2国は全く対照的な動機から福祉国家になっている。片や理想形としての福祉国家、片や現実を生き延びる為の福祉国家なのだ。
ゆえにスウェーデンの場合は、時の経過とともに要求主義的な福祉色が強くなり国内は次第に荒んでゆき、フィンランドでは、みんなで協力してつくりあげる本源的な福祉色が強くなったゆえに、一体感を持って安定した社会を実現している。これが教育にも大きく影響し、今やスウェーデンは下降の一途を辿るばかりであるが、フィンランドでは、PISA(国際学習到達度調査)世界1位の学力優良国家となっている。以上から、福祉主義や平等主義が良い教育を実現できるのではなく、大人も子供も自分の国が置かれている状況を共有して、国や社会をどうするかという視点で教育が行われているかが大きいことが伺える。
【アジアの教育体制概論】リンク10
アジア、特にインドも中国も韓国も、戦後から積極的に今までの伝統教育(徹底した暗誦による伝承)を捨て去り、学校教育を一気に近代化にシフトし、(初めは官僚採用制度として)試験制度を導入したが、後に入学試験や学力審査として形を変えていくことになる(注:中国の場合は独自に昔から科挙制度がある。)
また、アジア諸国は貧困の圧力下にあるため、試験選抜による私権の獲得の道が開かれたことにより、受験熱が過度になり、受験戦争化する。その結果、親の過期待・過干渉、子供の精神破壊が進行する。
また、処理能力や暗記力の高さだけ突出した者がようやく特権階級の資格を手に入れることができるので、異常に権力に執着し己の保身しか考えられない人物が登場する。結果、ひとの痛みや現実の圧力もわからないゆえに、無能を露呈するようになる。
以上より、あまりにも異常な試験制度が、同化能力を奪い、個人主義(=利己主義)を蔓延させる。
どうでしたでしょうか?
これまでイギリス、ドイツ、フランス、アメリカ、北欧、アジアと見てきました。教育は、それぞれの国の置かれている状況や立場、歴史、国民意識で多種多様な様相を呈していることがわかります。
ただ、もっと大きな視点から各国の公教育の状況を見ていくと、何かの思惑を感じられたりはしませんか?特に欧州諸国に顕著な特権階級の教育機関と一般大衆の教育機関の違い。国家が行う教育が、本当に国民の教育を考えたものなのか、誰かの都合の良い制度の枠にただはめ込まれているだけではないのか、もう少し考察する必要がありそうです。
では、次回最終回にまたお会いしましょう!!
投稿者 staff : 2010年07月04日 TweetList
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コメント
投稿者 りんご♪
>りんご♪さんへ
嬉しいコメントありがとうございます。
仲間みんなで追求した成果なので、喜びも一入です。
>この記事の中では、一番フィンランドの事例が成功しているのかなぁ・・・と思うので、これからの教育制度を考える上ではそれをもっと深めていったらよさそうですね(^^)♪
そうですね。フィンランドや過去の伝統教育は、これからの日本の教育制度を考えるに当たって大きなヒントになりそうです。
今回あまり触れる機会がありませんでしたが、伝統教育としての韻文に乗せた暗誦教育の効能に非常に可能性を感じています。次のシリーズ投稿にはそのあたりを検討していきたいと考えていますのでまた是非注目していてくださいね。
投稿者 よしたつ
すご~い!各国(地域)の教育制度(表も裏も含めて)がとても分かりやすくまとまっていますね☆+゜しかも、制度だけでなくその背景にある意図も考察されているのが興味深いです。
この記事の中では、一番フィンランドの事例が成功しているのかなぁ・・・と思うので、これからの教育制度を考える上ではそれをもっと深めていったらよさそうですね(^^)♪
これからの追求も楽しみにしています☆+゜