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2010年02月27日
教育の再生どうする?~生産活動の場での教育再生の取り組み事例:キャリア・スタート・ウィーク
みなさんこんばんは
これまで、 集団の再生・自然体験を取り入れた教育の再生 をいくつか事例を挙げて紹介してきました
続いて、 生産活動の場での教育再生の取り組み事例 を2回にわたり紹介していきます
生産活動の場での教育再生への取り組みは、政府の政策としても行われています。
学校では、4省府の関係閣僚(内閣官房、内閣府、文部科学省、厚生労働省、経済産業省)により取りまとめられた「若者の自立・挑戦プラン」を元に職業体験を実施している事例が多いようです。
「若者の自立・挑戦プラン」とは?
児童生徒が「生きる力」を身に付け、社会の激しい変化に流されることなく、それぞれが直面するであろう様々な課題に柔軟にかつ、たくましく対応し、社会人・職業人として自立していくことができるようにするキャリア教育が強く求められている。としてキャリア教育を行おうというものです。
画像はこちらからお借りしました
今回は、職業体験の事例を、「若者の自立・挑戦プラン」の中の文部科学省が推進する 「キャリア・スタート・ウィーク」 という、中学校を対象にしたプロジェクトを実施した事例をご紹介します
「キャリア・スタート・ウィーク」 ってなに??
中学校を対象に、子供たちの労働観・職業観を育てるため5日間以上の職場体験を行う学習活動です。 より詳しくは・・文部科学省:中学校職場体験ガイド
文部科学省は、この取り組みに約2億3千万円(平成19年度)の予算を立て、実施する学校側と受け入れる企業側に対して、どのような目的を持ち、どんな体験をさせ、子供達にどんなことを学んで欲しいのか、課題の設定を行いっています。
学校は、生徒達の受け入れ先として
サービス
行政・法規
食品の製造・販売
医療・看護
農林・園芸
教育 など
多様な分野から全60社程度の事業所を探し、文部科学省が提示する目的や課題を企業側に伝えた上で、生徒達の受け入れ先を決めます。
「キャリア・スタート・ウィーク」実施までの流れ
画像はこちらからお借りしました
生徒達は、希望に応じて体験先の事業所が決定され(必ずしも第一希望とはならない)、受け入れ先の事業所で事業所側が組み立てたスケジュールにより5日間を過ごします。
5日間という長さの中で、生徒達の心に葛藤が現れ
緊張の1日目
仕事を覚える2日目
慣れる3日目
考える4日目
達成・充足の5日目
と各事業所での作業体験に留まらない学習を経験してくるのです
単に事業所で5日間の職業体験をするだけでなく、学校では、事前に生徒本人の目的、意欲を確認し、体験時の注意事項等の事前指導、体験後にレポートの作成と発表などを設けるなどもします。
実際に、中学2年生に対して職業体験「キャリア・スタート・ウィーク」を行った、周陽中学校(山口県周南市立/HP)の事例から、その成果を見てみましょう
体験した生徒たち の声
「一番嬉しかったことは何ですか?」
・ 介護体験をしているとき、その人からいろいろな話を聞かせてもらったこと
・ 誉められたり、出来なかったことができるよういなったり、役に立てたこと
・ 仕事が終わったときに「ありがとう」と言われたこと「一番辛かったことは何ですか?」
・ 単純な作業をずっと繰り返し行わなければいけない仕事があった
・ 次々に仕事が迫ってくること
・ 失敗をしてしまった「職場体験をしてよかったことは何ですか?」
・ 親の苦労がわかった(親に感謝する気持ちがもてた)
・ 終わったときに達成感があったこと。
・ 人のために働けた
・ 仕事をやりとげた「職場の方の働く姿をみて、見習いたい点は何ですか?」
・ いつもお客さんのことを考えているところ
・ 自分の仕事が済んでも他の人の手伝いをしたりするところ
・ どうやったら早くできるか考えながら行動していたところ受け入れた事業者 の声
・ 社員が手本になろうと懸命に指導した
・ 若い笑顔があることで、職場が明るくなった
・ 前向きな姿勢の学生にはこちらも前向きになれるが、仕方なく体験学習にきている生徒はお断りしたい
・ 中途半端な受け入れはかえってマイナスになると思った
・ 事前にプログラムの内容等を学校側と打ち合わせればよかったと思うし、改善点があれば学校側からフィードバックもほしい生徒の保護者 の声
・ お金をもらうことの厳しさが少しでも実感できたことで、子どもにお金のありがたさをわかってもらえることができた。
・ 学生の立場から少し離れ、外で働く父親の立場、接客の立場などを体験でき、とてもためになる学習だった。社会に出ての厳しさを分かってくれた体験になった。
・ 事務所に行くのに交通機関を自分で考え、時間を調べるなど幅広い学習ができ、普段、学校で学習する以外の勉強ができた。
・ 草引きをしたり、洗い物をしたりで、その職業に関することは殆どさせてもらえなかったとのこと。忙しい中受け入れていただくのだが、少しはそれに関することを教えてもらったりさせてもらったりする経験があってもよかったのではと思う。
また、他の中学校では、 「こんな苦労があった」という
先生たちの声もあります
>うちの学校の中学2年生は、約180人。
受け入れ先を考えるのが、まず一苦労なのである。
職業体験というのは、職場見学なんかとは違って、1週間まるまるそれに費やして、家から「職場」に直接通い、「職場」から家に帰る生活を送るわけである。
大きな企業なんかないに等しいので、受けいれてくれると言っても、2~3人がいいところではないかと思うが、2人一組だったら、90カ所、3人一組だったとしても60カ所もの受け入れ先を探さなきゃならない。
出したら出したで、行かせっぱなしと言うわけにはいかないので、先生方で、職場を見回りに行かなければならない。
先生方は人員不足で、今でも、担当教科は、複数学年を受け持っているので、学校を全く留守にするわけにもいかない。
真面目に行かない子もいるだろうし、向こうで問題を起こす子も出てくるだろう>それに、自分が将来なりたいとか、興味を持っている職場の体験ならばいざ知らず、頼み込んで、拝み倒して受けいれてくれるところ(多分、小規模小売業が大半になるだろうという話)に、一週間も通うのは、子供にとっても苦痛になるだろうし、受けいれる側だって、ハッキリ言って、そんな子供に来てもらっても、助けにはならず、迷惑を掛けるだけだと思うし、双方のメリットは何もないじゃないか、と
coconut moon 13歳の職業体験 より
生徒 から先生 の声まで見てみましたが、みんな賛否両論のようです
上手くいっていない のはなぜか?を改めて考えてみると、次の様な問題点があるのではないでしょうか・・・
たった5日間で成功体験を得るには、それなりの課題設定のための準備が企業側に求められるはず。それが出来ているか否かで職業体験が生徒側の充足体験となるかどうかが決まってしまいます。 🙁
しかし現実は、学校側と事業者側で目的の統一がしっかりと共認されておらず、バラバラ感があります。その結果、生徒たちの職業体験としての成果にもばらつきが出てしまいました。 😥
国の補助金が成果に伴った評価になっておらず、今のやり方は「ばらまき」でしかありません。生徒達に、充足体験をさせることが出来た学校や事業所に対しての評価として補助金を出せば、みんながもっと活力を持って取り組めるのではないでしょうか! :wink:
社会との繋がりが薄れてゆく現代の中で、子供達が直接社会と触れ合う機会は貴重です
せっかく多額の予算を組み産官学で取り組でいる大きなプロジェクトなので、これからも産官学みんなで追求し成果を出していきたいですね!! 😀
次に、より社会人に近づいた高等学校ではどんな取り組みをしているのでしょうか 次回は、そちらをご紹介します
投稿者 mame : 2010年02月27日 TweetList
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コメント
投稿者 mame
こんなことを国がやってるとは・・!
どこに可能性があるのか見えにくい世の中だから、「働く」ということと「みんなの役に立てる充足」がつながらなくなってるのかなぁ?
本質は、「みんなが求めていることは、何か?」「みんなの役に立つには?」で、そこが実現できたら、大人とか子どもとか関係なく、社会という地平でみんなが充足できそうですね(*^^*)v
投稿者 ☆tink☆
☆tink☆さん
>本質は、・・、そこが実現できたら、大人とか子どもとか関係なく、・・
確かに!
一方、制度で偏った縛りをつけてみんなが充足できない、というのには、制度を作る=大人が主要因という面もあると思いました。
(でも、大人といっても全ての人ではなく、制度を作る人=特権階級の暴走です!)
☆tink☆さんの仰るとおり、「みんな~」が対象なら、大人と子供という括りをつけるのは、間違った認識でした!!
「本質」を忘れ、つい方法論に走ってしまいがちですが、いつも対象は「みんな」であることを忘れてはいけないですね。
投稿者 mame
最近は予備校でも、生徒に社会的な目的を持たせるために体験講座を開いている事例があるようですね。
日常生活と仕事が切り離されている今、仕事をもっと知りたいという需要があるのはなんとなく分かります。しかし、こんな取り組みを受け入れる店舗や企業がこれだけあることに驚きました。
問題点として挙げられていましたが、数日の体験を意味あるものにしようとすると、課題の設定は結構難しいと思います。何を達成したいかをもっと練って、上手くいった取り組みを評価していくのは、せっかく受け入れる事業者側にも工夫する為の方向性が明らかになり、やる気もでていいと思いました。
投稿者 Premier
今回紹介した、周陽中学校のキャリア・スタート・ウィークは、先生たちが工夫して5日間の内毎日、生徒+保護者向けにレポートを作成し、家庭でも子供達に活力を与えられるように取り組んでいるようです。
それでも、学年全員分の受け入れ先事業所全てに、課題と成果の共有を行き届かせるのは難しいことでしょうし、全ての生徒が、必ずしも希望の職種を体験できないという限界も絡み、現段階の成功しきれない課題の要因となっているのではないでしょうか。せっかく授業を潰し1ウィークを費やすのに、当事者の生徒がはなからやる気も持てず、事業所側の活力も削いでしまうのでは、職業体験をする意味は全くありません。
これらの課題を突破するには、学校の先生達は、人数のわりに合わない課題のボリュームとなるのかもしれません、事業者も受け入れることでそのときの必要利益を上げることが難しい状況となるかもしれません。また、このプログラムを立ち上げた官僚は、現場から上がってくる課題を受けて、現場での問題点を直視し、より成果を上げるために常に取り組みに対する改善を施さなければ、ただの丸投げです。
職業体験の目的が「こどもたちの教育」であること、大人たちが目先の苦労や不利益にとらわれ、かえって子供達に苦痛だけを味わせてしまう結果となるようでは、間違っています。
私も、小学校のときに職業体験がありました。働くことに夢を持てたし、仕事の楽しさを知りました。よい体験をしたと思っています。
どうか、これからの子供達にも、有意義な職業体験をさせてあげられるように、産官学が協力し課題をクリアしていきたいですね!