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2009年08月01日

日本語の魅力-7@人称代名詞と敬語から分かる、日本語のパワー(後編)

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写真は「日本語 新版(下)」(金田一春彦著、岩波新書)。
こちらのサイトから拝借させていただきました。
これまでの「日本語の魅力」シリーズで、日本語に興味を持っていただけましたら、是非こちらの本も読んでみてください。
前回からのテーマ「人称代名詞と敬語」に関しても記述があり、オススメです 😉

こんにちは!前回に引き続きよりちょが投稿します :tikara:
いよいよこのシリーズも、今回で最後の記事
このシリーズで、日本語の魅力に興味を持っていただけたなら幸いです

さて、本記事は「人称代名詞と敬語から分かる、日本語のパワー」という題で、前編・後編に分けて話を進めています。

<目次>
1.人称代名詞①:1人称代名詞
2.人称代名詞②:2(3)人称代名詞
3.人称代名詞③:人称代名詞から分かる日本人の生き方
4.人称代名詞と敬語の共通点
5.人称代名詞と敬語から分かる、日本語のパワー

前回の前編では、人称代名詞にスポットをあて、1~3について書きました。(前編の話を見たい方は、 こちら からどうぞ。)
今回の後編では、敬語と人称代名詞にスポットをあて、4、5について書いていきます。

・人称代名詞と敬語の共通点とは?
・人称代名詞と敬語が日本語にもたらしているパワーとは?
・人称代名詞と敬語から分かる、日本人の意識とは?
・・・
普段何気なく使っている人称代名詞と敬語。
前回に引き続き、この日本語独特の文法から、日本語の魅力を一緒に堪能し、日本人の意識と日本語の関係性を追求していきましょう :tikara:

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●前編のおさらい

前編では、人称代名詞が日本語にもたらしている機能を紹介しましたね。
もう一度、前編の話を復習してみましょう

・1人称代名詞: 「場」で使い分けている。キャラクター作りや印象の演出ができる 8)
・2(3)人称代名詞: 相手に自分の立場を伝え、同時に感情を伝える

・これら人称代名詞の役割から、「言葉を伝える相手の存在・立場を細かく分析する」日本人の感覚が垣間見える。
・日本語の人称代名詞には多様性がある。(日本語の人称代名詞は他言語のものと比べ、はるかに多い)

●人称代名詞と敬語の共通点

敬語は相手を敬う用法で、一般的に3分類「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」に分けられることは、ご存知だと思います。(余談ですが、謙譲語を「謙譲語」「丁重語」、丁寧語を「丁寧語」「美化語」に分ける5分類もあるそうです
敬語の中でも特に、尊敬語と謙譲語は、普段の生活・仕事環境でよく用いられています。まさに社会人にとっては必須アイテムです!
細かい分類の定義についてはここでは触れず、敬語の役割と日本人の意識について述べたいと思います。

まずは、尊敬語と謙譲語の例から。
・尊敬語の例: 「社長がおっしゃりました。」
・謙譲語の例: 「社長に申し上げます。」
このとき、社長という人物の存在を「自分よりも目上の立場 」と認識している、もしくは自分を社長よりも下の立場に設定(=へりくだる )していることが推測できますね。
立場を設定した上で、主体の行動を修飾しているのです。

自分と相手の立場を分析し、言葉を使い分ける
もうお分かりだと思いますが、人称代名詞とそっくりですね。
そういえば、敬語も人称代名詞と同じように、多様性がありますね。
例えば、丁寧語の「です、ます、ございます」は明確な分類基準はありませんが、状況に応じて使い分けますね
人称代名詞も敬語も、相手を強く意識した「相手発」の文法なのです 😉

●人称代名詞と敬語から分かる、日本語のパワー

いかがだったでしょうか。
今回は、人称代名詞と敬語にスポットを当て、これらの役割をたどってみました
改めて、日本語を使う私たちは、無意識のうちに相手の立場を分析し、場に応じて使い分けていたことがわかりましたね。

ところで、どうして日本語ではここまで相手の立場や、場を意識するようになったのでしょうか。そのあたりについて、文献(参考文献2)を参考に考えてみましょう

日本人はもともと農耕民族で、ムラで集団生活するためには、周りとの協調が欠かせなかった

人と面と向かったコミュニケーションの中で、相手への思いやりや気配りを発達させた

封建時代に身分の上下関係が生まれ、目上の人に対してコミュニケーションを円滑に進める能力が必要となった

以上から考えうる、日本語の進化に欠かせなかった要素とは、「相手に理解を求める意識」。そして、「相手に同化しようとする意識」ではないでしょうか

相手との距離感を的確に把握でき、その相手とのコミュニケーションを円滑化し、相手と同化できる機能を持つ言語」
この条件を満たす言語こそ、高い同化意識を持つ日本人にとって必要な言語だったのです。
ここでの「相手」とは、人だけを指すのではありません。
自然 」を対象化し、そこに同化意識があったからこそ、擬音語・擬態語が生まれました。
時代の流れ」を対象化し、そこに同化意識があったからこそ、自由度が高く多様性のある言語で有り得ました。
人称代名詞と敬語もその例にもれず、「人」に対する高い同化意識と多様性の中で進化してきました。受動態もその1つでしょう。

今、私たちが何気なく使っている日本語
その1言1言が、これまでの日本人の知恵がつまった贈り物。
そして、これからも子孫に受け継がれるべき、素晴らしい言語。
今後巡り行く時代の中で、日本語から未だない言葉たちが次々に生まれてくることでしょう。その言葉たちは、日本人の行く先、新しい認識を提示する大いなる可能性を秘めていると思います。

世界でも類まれな言語の継承者であることを再認識し、誇りに思いながら、本シリーズの締めとさせていただきます
末筆ながら、本シリーズ「日本語の魅力」をご愛読くださり、誠にありがとうございました

追記:敬語について、深く知りたい方は、以下の参考文献をご覧ください

【参考文献】
1.「敬語」Wikipedia
2.「日本語 敬語」

投稿者 yoriyori : 2009年08月01日 List   

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コメント

ヘボンが1867年の著した『和英語林集成』は諸大名中心に子弟の勉強用に300部ほど売れたそうです。ヘボンがどれだけ日本人に英語を伝えたかったか、また当時の知識人どれだけ英語を必要としていたか分かります。彼はは日本人の生活をつぶさに観察したうえで、日本人とこの辞書を編纂していたようです。http://eigo.be/expressions/hepburn.htm

投稿者 tennsi21 : 2009年8月1日 18:36

人称表現についてこんなに深い中味があるなんて、驚きですね。

言われてみれば、「あ~そうなのか!」と考えさせられる内容ばかりでした。

投稿者 kamui : 2009年8月1日 23:58

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