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2009年05月04日

これからの教育って、どうなん?-2 『教員免許更新制って何?』

経験10年ごとに講習を受け、試験に合格すれば教員免許の更新が認められる制度が始まりました。平成19年6月に教育職員免許法の一部改正が行われ、平成21年4月1日から教員免許更新制のスタートです。

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『教員免許更新制は、その時々で教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に最新の知識技能を身に付けることで、教員が自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ることを目指すものです。』(文部科学省の紹介ページから引用)

文部科学省では、教員免許更新制の目的をこのように掲げています。

学力低下が言われる中、教員が「必要な資質能力を保持」し、「定期的に最新の知識技能を身に付ける」ことにはもちろん賛成ですが、ニュースなどを見てもこの制度の実態が今ひとつ見えてきません。

そこで、今回はこの「教員免許更新制」ついて調べてみました

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■教員免許更新制の概要
 教員免許の更新制の基本は、これまで取得すれば生涯有効だった教員免許に一律10年間の有効期限を設け、10年ごとに教員養成課程を持つ大学などが実施する「免許更新講習」を受けて、教員免許の有効期間を更新するといものです。公立学校だけでなく国公私立の幼稚園から高校までのすべての教員が対象となります。

 教員免許の更新は、「個人の理由」となるので、平日の勤務時間中に免許更新講習を受けることはできない。このため、免許更新講習は、夜間、休日、夏休みなどの長期休業期間中に開催されることになっています。また、通信や放送、インターネットなどを使った講習も実施されます。

 免許状更新講習は、次の2つの区分の講習を合わせて30時間以上受講し、修了・履修することが必要とされます。免許状更新講習の内容は大きく分けて次の2つに分けられます。

◆教職についての省察並びに子どもの変化、教育政策の動向及び学校の内外における連携協力についての理解に関する事項(「教育の最新事業」)

「教職についての省察」「子どもの変化についての理解」「教育政策の動向についての理解」「学校の内外での連携協力についての理解」を主な内容。 すべての教員に共通する事項を扱う必須講習。(12時間以上)

◆教科指導、生徒指導その他教育の充実に関する事項
 学校種・教科種などに応じた内容を扱うもの。各教科の指導法やその背景となる専門的内容、生徒指導等、幼児・児童・生徒に対する指導力に係る各論的な内容を中心。 受講講座は選択制。(18時間以上)

詳しくは「文部科学省:<解説>教員免許更新制のしくみ」を参照して下さい。

■教員免許更新制導入の背景
 小渕内閣が設けた「教育改革国民会議」での議論が発端。その後、中央教育審議会(中教審)が2006年に導入を答申。同年、安倍内閣が設置した「教育再生会議」でも議論され、07年に改正された教育職員免許法により本年度からの導入が決まった。

 1980年代末から高まった「問題教員」「ダメ教師」を何とかすべきだという世論に応えるかたちで、不適格教員、あるいは指導力不足教員をチェックすることが最初の目的。

しかし、教員免許は教員免許は大学の教職課程で所定の単位を履修すれば取得でき、その際には教員の適格性は求められていないことから、免許更新時にも適格性を問うことはできないという法制上の問題や、公務員全体のバランスから言っても、教育公務員だけが適格性が定期的にチェックされるのはどうかという問題があり、免許更新の目的は、時代の変化に応じた知識技能の「刷新」へと転換。(文部科学省でも「更新制は不適格教員の排除を目的としたものではありません」と明確に断っている)


調べてみた限りでは「免許状更新講習」の詳しい内容や更新の基準については良く分かりませんでした。もともと「問題教員」「ダメ教師」を何とかすべきだという世論に応えるかたちで実施に至った「教員免許更新制」なので、その詳しい中身や基準が、誰でもわかる形で社会に公開されていないことに疑問を感じます。

いつの間にか、学校教員という閉じた社会での制度になってしまっていないでしょうか。それも文部科学省が中心に制度を決めていて、現場の教員の声はあまり反映されてもいない。(産経ニュース「教員免許更新制導入に6割反対 京大が調査」

もちろん教員一人一人の資質向上は不可欠ですが、このような密室で決められた制度である限り、社会の期待に応える制度改革にはならならないと思います。

 この制度について「10年ごとに30時間の講習で、そんなに効果があるのか?」など疑問視する声も聞かれますが、それ以上に密室で作られた制度であることに問題を感じます。うがった考え方かもしれませんが、文部科学省主導で「免許状更新制度」には、文部科学省を頂点とした教育システムの再構築、免許更新導入による文部科学省の権限強化という側面があるではないででしょうか。

本気で社会の変化に対応した新しい教育を考えるならば、教員一人一人の資質の前に、学校自体の教育力の上昇や、教育システム自体の見直しについて、誰もが参加できる開かれた社会空間での議論することが必要だと思います。(さいこう)

参考
 ・「教員免許更新制度を問う」今津孝次郎 岩波ブックレット
 ・学びの場.com「教員免許の更新制って何?」   

投稿者 sachiare : 2009年05月04日 List   

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