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2007年08月10日
3歳児神話って本当なの?③・・・髄鞘によるネットワーク化
今回は、第三弾です! :tikara:
前回は、シナプスの臨界期を扱いました。
そこでは、人間は生後1年までの間に、過剰にシナプスを作り出し、外界からの様々な刺激(圧力)に反応して各神経細胞を繋ぎ、神経細胞間のネットワーク化を計る準備を整えているという内容でした。
そして、それが5歳位までをピークに、成人するまで続いていくということでした。
今回は、シナプスによるネットワーク化が固定化されていく過程について見ていきますね 😉
まずは、脳の神経細胞は産まれてから死ぬまで増えない 😯 というお話しから・・・
あれ 🙄 待てよ! :confused:
確か脳の重さは産まれてから成長するにしたがって重くなるし、容積も増えていくのにおかしい 🙁 🙂 と思いますよね 😛
そうなんです! 😀 実は、脳が重く、大きくなっていく原因は、脳細胞の増加ではなく、主に、シナプスによる脳のネットワーク化とそのネットワーク網をより強く、伝達スピードをより速くすることにあるのです
その秘密が髄鞘・・・
😮 ポチっと押してから続きを読んでね
以下、『脳の機能の発揮と教育』からの引用です。
人間の新たな生命は受精に始まるが、新生児として誕生してくる時、その新生児の体を構成する細胞の数は、約2兆個といわれる。1個の受精卵が、受精後約40週の間に母親の体内で、約2兆個にまで細胞分裂を繰り返して、新生児の体となり誕生してくるのである。そして、誕生後も細胞分裂を繰り返して成長変化し、成人の体は約60兆個の細胞でその体が構成されているといわれる。従って、新生児が大人になるまでの間に、体を構成する細胞の数は約30倍に増えることになる。この細胞分裂が身長や体重が増加するという身体的な発達の基となるものである。
このように身体的な成長変化において約30倍に増える体細胞のなかで、誕生から死に至るまでの間で全く増えない140億個とも160億個ともいわれる細胞の集団がある。それが大脳の神経細胞である。
体をつくる細胞は分裂して増え、また、壊れても再生するが、この大脳の神経細胞は誕生後は増えることはなく、また、壊れても再生しないで壊れたままであり、さらに、ある年齢に達すると逆に壊れて消滅し始めるともいわれる。
そして、脳の重さも新生児で約400グラム、成人で約1400グラムともいわれるが、3才では既に約1100グラム、6才では成人のおおよそ9割に達するものである。
このとき、脳の働きすなわち大脳の神経系の機能の発揮は、神経細胞の髄鞘(下図参照)形成とシナプスの形成によるものといわれる。
髄鞘(e)(:ミエリン鞘)をもつ末梢ニューロンの模式図。軸索(d)にシュヴァン細胞(f)が幾重にも巻き付くことによって髄鞘が形成されている。 シュヴァン細胞のすき間にはランヴィエの絞輪(g)がある。(a)樹状突起、(b)細胞体、(c)核、(h)軸索終末
脳の神経細胞のシナプスを形成する軸索にミエリン鞘(髄鞘)が形成されること、すなわち髄鞘形成がその神経細胞の機能の発揮となるといわれるが、その髄鞘形成と機能の発揮の関係については、脳の機能から運動系、知覚系、情動系、意識の4観点から検討される。それらについて、以下のようなことが指摘されている。
① 運動系
脊髄前根細胞に胎生5ヶ月頃から生後1ヶ月頃までに髄鞘形成が起こり、それに伴い母体内や出生時の不規則な、無目的な、原始的な動きがみられるとされている。平衡覚や共同運動に関する小脳系の髄鞘形成は胎生7ヶ月頃から起こり、生後5から8ヶ月頃に終了し、それに応じて、首が据わり、座位が可能となり、身体緊張のバランスが取れるようになる。
また、随意運動に関する神経系の髄鞘形成は、出生直後から始まり、1から2歳までの間に完成する。この時期の子どもが興味を持つ遊びに、おはじきのような小さな物を指先でつまんで箱から出したり、また、箱に入れたりすることや、ボタンなどの穴のあいたものに紐を通すような遊びがある。これは自分の意思で自分の指先を細かく操作することができるようになった喜びを味わっている姿といえるが、それも指先を随意的に操作する神経系の髄鞘形成と対応するものである。
このような運動系の神経系の髄鞘形成に対応して、這い這い、起立、歩行と運動機能が高まり、2歳頃までに、基本的要素的な運動機能が発達してくる。
②知覚系
知覚系の最も原始的な働きに対応する脊髄後根細胞に、まず、胎生6ヶ月ごろから髄鞘形成が起こり、生後6ヶ月頃までに出来上がってくる。
視覚系の神経系には出生直後から髄鞘形成が始まり、生後4から5ヶ月頃までに完成する。従って、生後4ヶ月から5ヶ月頃には、視覚的な知覚の機能が高まってくる。
聴覚系の神経系には、視覚系と同じように、出生直後から髄鞘形成が始まるが、出来上がるまでには少し時間がかかり、3歳から4歳頃にかけてまで続く。1歳前後に1語文が出始め、3歳から4歳にかけて急激に言語能力が高まることも、この聴覚系の神経系の髄鞘形成に対応するものといえる。
また、触覚などの体性感覚の神経系の髄鞘形成は胎生後期から始まり、1歳頃までに出来上がるといわれる。
③情動系
情動の中枢となる大脳辺縁系の帯状回に髄鞘形成が起こり始めるのが、出生後2から3ヶ月目ぐらいであり、10ヶ月目頃には髄鞘形成が完成する。この髄鞘形成に対応して、基本的な快・不快の感情としての喜び、満足や怒り、恐れなどが示されたりする。
④意識
意識という覚醒系に重要な働きをもたらすのが、大脳の奥底にある脳幹網様体の髄鞘形成である。この髄鞘形成は最もゆっくりとした時間をかけて起こるものであり、生後直後に髄鞘形成が起こりはじめ、早くて10歳頃に、遅くて12歳頃に完成する。10歳から12歳にかけて、自分で自分を反省的に意識できるようになるといわれるが、それがこの脳幹網様体の髄鞘形成に対応するものといわれる。この脳幹網様体の髄鞘形成により子どもは大人の仲間入りをすることになるのである。したがって、早い子は10才頃、遅い子でも12才頃になると、大人の仲間入りとしての一人立ちの信号をいろいろ出してくるものであるが、それらはこのような神経系の成熟に対応しているものなのである。
運動系→知覚系→情動系→意識という成熟過程は、まさに赤ん坊の成長過程と一致するわけですね。
運動系や知覚系はたぶん、充分な栄養を採っていれば、ほうっておいても形成されていく回路だと思われますが、情動系や意識については、外界、乳児期の場合は母親の影響を強く受けて、頻繁に使うようになった回路が強化(逆に、あまり使われない回路が減退し)→ネットワーク化されていきます。
次はいよいよ最終回 :tikara: 情動系や意識の強化のようすを見ていき、3歳児神話の真相に迫りたいと思います。 😉
投稿者 sashow : 2007年08月10日 TweetList
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コメント
投稿者 こん
こんさん、毎度ありがとうございます!
>この鞘って、伝達が早くなるものですね。無髄神経ってこれがないんですよね。
>良く使われるものほどつながっていくんですね。
そうだと思います。このミエリン鞘が付いていくということは、たぶん、頻繁に使われる回路を強化していく過程なのだと思います。
本能⇒共認⇒観念⇒行動(発信)の収束経路が充足経験を基に太く繋がっていく、というイメージを持っています。
投稿者 sashow
>頻繁に使うようになった回路が強化(逆に、あまり使われない回路が減退し)→ネットワーク化されていきます。
sashowさん。なるほど!
ネットワーク化していくんですね。
【その秘密が髄鞘・・】
この鞘って、伝達が早くなるものですね。無髄神経ってこれがないんですよね。また、
【シナプス形成】
は、良く使われるものほどつながっていくんですね。
なんか、人々のチームワークみたいな構造と同じなのですね。