これからの教育キーワードは「没頭力」 |
メイン
2021年07月16日
学校の宿題、 何のためにやるの?
もうすぐ夏休み。
楽しみな一方で、山のように出される宿題に苦労するのは子供だけではないようです。
小学生ではほとんどの場合、親も一緒に手伝っているのが実態だとか。
今回は、夏休みの宿題は何のためにあるのか、考えてみましょう。
以下(https://www.chunichi.co.jp/article/99036)より引用します。
———————————
〇明治期から導入
「三桁の筆算とか、やらないと忘れちゃうから復習しておいてね」。夏休みを控えた先月十七日、名古屋市平和小学校の四年生の教室で、水谷直文教諭が宿題を配った。
「余裕じゃない?」「終わらなかったらどうすればいいの?」と子どもたち。四十四ページにわたる問題集と読書感想文に、自由研究。計算と漢字ドリルの提出は自由。休みは例年より約二週間短いが、宿題の量はほとんど同じだ。
学校から解放された子どもたちが向き合う宿題。その歴史
は明治時代にさかのぼる。愛知教育大の釜田史准教授(日本教育史)によると、一八八一年に夏休みが導入された際、学習リズムを崩さないようにと教員が課題を出したのが始まりとされる
。
現在のようなドリル形式で課されるようになったのは、紙や鉛筆が普及した一九二〇年代。進学先の高校や大学が次々に創設された時期で、親も子の学習内容の定着に宿題を求め、浸透したという。
そんな親の意識は現在も変わらないようだ。親子向けの情報サイトを運営する「アクトインディ」の調査では、宿題が必要と答えた保護者は85%。主な理由は「勉強する習慣がなくなる」「習ったことを忘れてしまう」だった。
〇競争激化で増加
一方、「ベネッセ教育総合研究所」の調査によると、小中学生が宿題に費やす時間も、教員が課す量も、年々増えている。釜田准教授は「ゆとり教育が終わり教科書が厚くなった上、全国学力テストや国際学力調査も始まり、国や県の順位争いが激化した。教員も課題を増やさざるをえなくなった」と分析。宿題の目的が「順位を上げるため」にすり替わってしまった面があるという。
東京都千代田区麹町中学校の校長時代に宿題の廃止を決めた工藤勇一さんは「宿題は子の自主性を奪う」と話す。通知表を付けるために出す教員と、「評価が悪くなる」「先生や親に怒られるから」とこなすだけの子どもが増えていると指摘。「提出が目的になり、子どもの身になっていない」と危機感を抱く。
最近では、増え続ける宿題が受験勉強などの妨げになるとの声に応え、有料で宿題を代行するビジネスも生まれている。「宿題代行屋Q」(沖縄県)によると、依頼が多い夏は約二百件の注文がある。
〇「やらんでいい」「訓練」…著名人も発言
宿題をめぐる著名人の発言も目立つ。将棋の藤井聡太棋聖(18)は中学3年の時、「授業をきちっと聞いているのに、なぜ宿題をやる必要があるのか」と宿題を提出しない時期があった。担任と学年主任が「宿題は授業の一環で、授業を補完するから必要なこと」と説明すると、納得して提出するようになったという。
サッカーの本田圭佑選手(34)は5月、ツイッターで「学校の宿題は嫌ならやらんでいいと思う。あのやってない奴(やつ)があかんみたいな空気が辛(つら)すぎる」と投稿。1万3000件の「いいね」が付いた一方で、「決め付けるのは無責任」などと議論を呼んだ。元プロ野球選手のイチローさん(46)は「大人になるとやりたくないことをやらないといけなくなる。宿題はその訓練」と話している。
著名人の間でも意見が分かれる宿題。「何のため」を明確にすることが、宿題のあり方、取り組み方を考える出発点になりそうだ。
〇強制せず目的意識を (津田塾大学芸学部国際関係学科准教授 渡辺あやさん)
教育先進国といわれるフィンランドでは、日本のように宿題に重きは置かれていません。学習習慣をつけるという明確な目的のもとほぼ毎日出ますが、小中学生ともに一日十分ほどで終わる量。内容は日本と似ていて、教科書に準拠した問題集が中心です。短時間でできるので負担に感じている子は少なく、やり忘れても先生や親にとがめられる雰囲気はありません。
日本と同じで、学校の成績が高校進学時に影響しますが、そのために宿題をするという意識はないです。長期休みは地域活動やスポーツなどを優先し、宿題は出ません。
宿題以外に何が重視されているかというと、自分自身を正当に評価する力の育成です。授業の中で「今何ができていて何が足りないのか、何を努力すべきか」を考える自己評価の時間を大事にし、学び続ける姿勢を育んでいます。学習に自信がない子に対する補習も充実しています。少人数の特別クラスを設け、みんなが標準に達するようにしています。
社会や文化の違いがあり、全てを取り入れることは適当ではありませんが、宿題を出すことが目的になっていないこと、子どもが強制されずにできていることは、日本にとっても参考になる点かもしれません。
〇理想は「個別最適化」 (教育社会学者 松岡亮二さん)
学校の宿題の意味合いは、通塾の有無で異なるはずです。通っていない子にとっては学校の授業を補うという意味で必要性が高い。一方、通塾者の中には、学校の宿題は余分と思っている人もいるかもしれません。
それでも大多数の生徒にとっては、後々受験に影響する内申点に関わってくるので提出は必須です。もし内申点が一切考慮されない学力試験だけの受験になるのであれば、宿題を不要と判断する人も出てくると思います。
そもそも日本には、学力や学習習慣に対する宿題の効果を厳密に明らかにできるようなデータがありません。明確な根拠がないまま慣習として続けるのではなく、データを取得して効果的な宿題のあり方を模索すべきではないでしょうか。
すべての子どもが意味のある成功体験を積み重ねることができるように、学力などによって宿題の内容を変えることが理想だとは思います。ただ、一人一人に難易度と分量を調整した宿題を出すとなると、すでに国際的に労働時間の長い教員の仕事を増やすことになってしまいます。
教員数の増加、ICT(情報通信技術)の活用、データによる継続的な検証を行えば、宿題の個別最適化が可能になるのではないでしょうか。
———————————-
投稿者 hoiku : 2021年07月16日 TweetList
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://web.kansya.jp.net/blog/2021/07/7984.html/trackback