自然公園で伸び伸び駆け回る子ども達
取材に伺ったのは、「森のようちえんはっぴー」(以下「はっぴー」)が日常活動の拠点としている南房総国定公園大房(たいぶさ)岬。待ち合わせ場所「海岸公園」に向かうと、到着間際に大勢の子ども達が大房岬を走るランナーを応援する賑やかな声が聞こえてきました。
“明日が卒園式なので、今日は思い出の遊び場所を全部回って挨拶しよういうことで、朝から大房の中を駆け巡っているんですよ。2歳児の星の子クラスが修了式を行っている運動園地から出発して、芝生園地、展望台などおよそ40haある岬をぐるっと一周してきました。子ども達は毎日ここで歩いているので足腰が強く、たまに同行する大人が先に参ってしまうほどです (笑)。”
野外保育とはその名の通り、大雨風や雷の日を除き屋内ではなく外で保育活動を行うということ。「はっぴー」の子ども達は毎日朝9時頃大房岬に集合して、朝の会をしてから各園地で様々な遊びを楽しみ、お昼に木の下で家族が握ったおにぎりを食べて、午後一通り遊んで絵本を読んだ後、帰宅します。
“外で目一杯遊んでいて、とても自由には見えますが、「はっぴー」の子たちは3歳から5歳までみんなで過ごし、スタッフも大人ではなくフラットな立場で接するので「自由の中にある責任」を自分達の力で身につけていきます。判断の善し悪しを押し付けず、何でも経験して話し合っていくことで、社会性を身につけることも「はっぴー」の教育方針で大切にしていることです。”
森のようちえん第一回フォーラムから
このように語る沼倉さんが「森のようちえん」と出会ったのは、千葉市の私立幼稚園で11年勤務したあと幼稚園教諭の職を離れ、東京にある自然学校で働いていた時のことでした。
“2005年に知人の紹介で「森のようちえん」第一回フォーラムに参加すると、ドイツで広がっている活動の映像、そして日本で始まっている団体の事例発表を前にして衝撃的な感動を覚えました。以前幼稚園で勤めていた頃に悩んでいたことへの答えが、すべて詰まっているように感じたんですね。ただ、その時は自分が始めたいというよりは、この活動をより多くの人に知ってもらいたいという気持ちが先行していました。”
野外保育「森のようちえん」は20世紀中頃の北欧諸国で生まれました。環境問題や都市化による子ども達の自然離れが指摘される中で、持続可能な社会を推進する教育の一環として広がり、日本でも取り組みを実践する人が現れました。そこで2005年に開かれたのが第一回フォーラム。
“一緒に同行した自然学校の上司に「私、この活動を広めたいです」と伝えると、自然学校に在籍しながら「森のようちえん」のホームページを管理させてもらえることになりました。その後すぐに有志で全国ネットワークを立ち上げ、普及に取り組むようになってかれこれ10年になります。その間、北海道から沖縄まで全国に「森のようちえん」の理念を共有する団体が立ち上がり、現在159団体が活動しています。”
続きます~