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2010年05月30日
新たな時代の教育制度の提案に向けて~北欧の教育:平等主義や福祉主義からの教育では可能性がない、外圧に対応した共認形成が生命(スウェーデンとフィンランドの違い)
こちらからお借りしました。
前回まで、イギリス、ドイツ、フランスの教育制度の起源をみることで、教育制度にこめられた意図を見てきました。
今回は北欧を扱います。北欧諸国はフィンランドを代表に教育水準が高いといわれます。前回までと少し視点が変わりますが、なぜ北欧の教育はレベルが高いのか追求してみようと思います。
■北欧の教育はレベルが高いといわれる
先進国でつくる「経済開発協力機構(OECD)」が発表した「学習到達速度調査(PISA)」リンクで北欧勢は上位にランキングされており、教育のレベルが高いと言われているようです。2000年調査で4カ国(デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド)の平均順位は10位につけており(調査対象はOECD31カ国)、日韓、アングロサクソン勢の次に位置しています。とくにトップクラスに位置するフィンランドは、世界中の注目をあびていますね。リンク
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■平等主義、福祉主義に基づく教育方針が秘訣か
北欧教育の水準が高い要因は何か?しばしば、北欧諸国が福祉国家であることと結びつけて議論されるようです。
(北欧型)福祉国家とはリンク
①他の民主主義国家よりも、北欧の国々は国家が国民の幸せに責任をもつ割合が大きく、これは全ての政策に国の関与が大きいということを意味します。完全雇用が経済政策および社会政策の目標となっています。
②所得移転(税金を通じて高所得者から低所得者へ配分する)が大きく、国内総生産に対する社会保障費の割合が高いという特徴があります。
③所得格差が他の国々と比較して小さく、そのために貧困率と生活水準の格差も比較的小さいことも特徴です。
④平等ということが福祉国家の基本概念になっています。
したがって、教育においても
①潤沢に予算が組まれており、高等教育も含め授業料は基本的に無料。
②1人1人に平等に教育機会が与えられ、クラスは少人数できめ細かい指導が行われる。
平等主義、福祉主義に基づいて教育が行われるので、クラスは少人数で指導はきめ細かく(≒平等に)、授業料は無料でということになる。実際、(福祉や)教育に対する投資を潤沢に行っている。
○学校教育費対GDP比率
○学校教育費の公的負担割合 リンク
平等主義の教育方針や教育投資の多さが北欧の教育水準の高さに関係はしているようですが、しかし、これが本質的な理由なのでしょうか。潤沢な教育投資→質の高い教育(→高い経済成長率)という図式は正しいかというと疑問ですね。
こちらからお借りしました
■スウェーデンの破綻は平等主義、福祉主義(による教育)の限界を露呈
この点を考える上で、北欧の中でもフィンランドとは対照的に、2000年以降の調査で成績低下傾向が鮮明なスウェーデンを見てみると、北欧教育をもう一歩突っ込んで考えられるように思います。
あまり知られていないですが実は、(教育も含め)スウェーデンの福祉主義は破綻に瀕している。財政の悪化が甚だしく、金が無いので、福祉政策が十分行えず、格差社会に突入、治安も悪化している。
世界的経済不況は、高齢者福祉および教育関係の経費節約を余儀なくされていますが、ホームレスにも容赦なくその影響を受けています。資料によると、現在ストックホルム・コミユーンには、3 100人から 3 200人のホームレスがいます。その内の約24%が女性です。これは昨年度よりも約30%の増加し、経済不況により失業者が増加したことと、比例てしているとコミューンは発表しています。リンク
スウェーデン国内の治安は、1990年代に比較すると、格段に悪化しています。銃を利用しての殺人も増加し、 殺人犯罪のみで、昨年の上半期に比較して、9%の増加です。一部の地域では、犯罪者グループ同士の闘争も増加し、例えば2007年7月22日には、19歳の青年がグループ内闘争の結果 路上で射殺されました。リンク
このよう状況で、教育にさくお金も無くなっており、レンタル扱いの教科書は使いまわしてボロボロ、僻地の学校では統廃合が急増している状況らしい。そして極めつけは、
スウェーデンの高校教員は正規職員の内、約27%の教員が無資格であることが判明、調査国では最高の数字である。これは、4人の内1教員は、資格をもたない者が高校教員として、生徒指導をしていることになる。臨時職員では、二人に一人が資格を持たなという。リンク
★こう見てくると、平等主義や福祉主義が、北欧の教育の秘密ではなさそうですし、可能性にも成りえないと思われます。
■PISAランキングが好調なフィンランドの教育の秘密は
フィンランドも福祉国家でありスウェーデンと同じ道をたどる恐れもありますが、現状は上手く行っているようです。改めて彼らの教育の強さの秘密は何でしょうか?
●教師はなりたい職業第1位、尊敬される存在
フィンランドの教育を語るとき、やきめ細かい面倒見や豊かな教育投資と並んであげられるのが、教師の質の高さです。フィンランドの教師は質が高く、かつ尊敬される存在なのです。
だが、フィンランドの教師は、社会的にも尊敬される社会的地位も高い職業とあって競争率が高い。1位2位を争う人気の職種で、普通科高校生の26%もの生徒が志望しているが、教育系の大学に進学できるのは、大学入学資格試験と大学が個別に行う書類選考、筆記試験(4時間)、個人面接、グループワークと一ヶ月にも及ぶ選考を通過した1割程度の志願者のみである。さらに、採用される者はそれ以上に絞られることになる。このためフィンランドでは、他の職と比べても、高い能力と意欲をもつ教師を確保することができている。リンク
では、なぜ教師が人気の職業であり、質も高いものとなっているのでしょうか。
●教育、人材の質に可能性収束する国家戦略
フィンランド文部省が公式見解の中で、「わが国は天然資源に恵まれず、人材こそ国家財産であり、人材育成に国の将来をかけている」と述べているように、教育に対する熱意と努力の度合いは極めて高い。リンク
フィンランドの人たちは自分たちの国の特徴について聞かれると「労働人口が少ない」「森林以外に資源がない」「自然がいっぱいといっても、寒さが厳しいから観光資源とはならない」とないないづくしで自嘲気味に語る。そのあとに続けて自慢げに「人もふくめて資源が少ない小国だからこそ、教育に力をいれなくてはならないと考えて、それは成功している」という。リンク
●大国の間で翻弄され、生き延びた時代
古くからスウェーデンとロシア(ソヴィエト)という二大強国の間に挟まれ常に両大国と領土を巡って争いながらも独立を保ってきたフィンランドでは、毎日が存亡の危機であり、国を安定的に存続させるために国力を高める必要性があった。19世紀の世界的な民族運動の高まりの中で牧師であったウーノ・シグネウスの提言によって国民学校法が施行。
「グローバリズムの進行によって、小国はますます厳しい競争にさらされる。国際競争のなかで勝ち残っていくためには、国民全体の教育レベルを底上げすることが必要なんだ」「所詮、人口や資源の量では太刀打ちできないのだから、一人ひとりのGDPを上げていくことが必要だ」という話が出たあとに「だからグローバル化する時代の要請に応える教育に力を入れる必要がある」と続く。リンク
「大国にはさまれた小国で、しかも歴史の浅い国が生き延びる道は、教育大国になるしかない」
★国民全体が外圧を対象化し、教育の重要性を感じていいる。それが、北欧(フィンランド)の教育の質の高さの核心のようですね。
こちらからお借りしました。
投稿者 fwz2 : 2010年05月30日 TweetList
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コメント
投稿者 みか
みかさん、コメント有難うございます。
すごく納得していただいたとのことで非常に嬉しいです。
最初は北欧全体を一くくりにして考えていたのですが、調べていくうちにどうも、スウェーデンと、フィンランドは事情が違いそうだと見えてきました。
現代においても「外圧をしっかり対象化した上で」教育を考える必要があると、改めて認識できますね。
投稿者 fwz2
とても良記事で読んで価値がありました!
ただひとつ気になったのが >教育、人材の質に可能性収束する国家戦略,大国の間で翻弄され、生き延びた時代,で書かれていたこと⇒教師の質が高いに直接的に繋がるかと言うと?が付くような部分もあったので、その点もう少し追及し甲斐があるかなと思いました。
自分自身教育に関してさらに考える良いきっかけになったことには変わりないのでお礼を言いたいです。
投稿者 baggio
>「大国にはさまれた小国で、しかも歴史の浅い国が生き延びる道は、教育大国になるしかない」
>
>★国民全体が外圧を対象化し、教育の重要性を感じていいる。それが、北欧(フィンランド)の教育の質の高さの核心のようですね。
これすっごい気づきでした!!
PISAがもてはやされた時に北欧の教育を少し調べてみたことはあったのですが、こんな理由があったとは!!
でも、今まで読んだどの本よりも納得です☆☆
素晴らしい記事ありがとうございました!