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2008年02月14日

権利概念では、子供たちは救われない

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児童養護施設に子供たちが引き取られる際に、子供たちに配られる手引きがあります。

子供の権利ノート」という名前で、各自治体で作られています。

…こどもには、幸せに生きる権利があります。大人には、それを子どもたちに伝え、擁護する義務があります。そこで生まれたのが「子どもの権利ノート」です。…

という解説がありますが、その中身を見ると、これで本当に子供たちを「養護」する施設になり得るのか、はなはだ疑問です。

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東京都の子供の権利ノートの見出しは以下のようになっています。

<中高生版の見出し>

○あなたへのメッセージ
○「子どもの権利ノート」ってなに?
○ひとりの人として大切にされる権利があります。
○なぜ、これから施設で生活するのか知る権利があります。
○これから生活する施設について、知る権利があります。
○あなた自身のことや家族のことについて、知る権利があります。
○あなたのことについて、どのように考えられているのか知る権利があります。
○あなたの意見や希望を言う権利があります。
○家族と会ったり、手紙や電話などによって、交流する権利があります。
○あなたのプライバシーは、尊重され守られる権利があります。
○あなたの物を、あなたが持つ権利があります。
○いろいろな情報や考え方を、知る権利があります。
○義務教育だけでなく、いろいろな教育を受ける権利があります。
○心と身体の健康が守られる権利があります。
○自由に考えたり、信じたりする権利があります。
○趣味・レクリエーションを楽しむ権利があります。
○いろいろな人と交際する権利があります。
○体罰やいじめなどから守られる権利があります。
○施設をでた後も、相談できます。

見出しを見るだけでも、見事なほど権利概念で一貫されています。
しかし、このようなストーリーでは子供たちは充足できないのではないかと思います。
具体的な中身を少し見てみます。

冒頭の、「あなたへのメッセージ」の一節は以下のような内容になっています。(抜粋)

…あなたは、この地球に生まれた、なにものにもかえることのできない一人の大切な人です。
 あなたは、幸せに育っていく権利を持って生まれてきました。たくさんのやさしさや思いやりなどにあふれた、豊かな心があります。いろいろなものに挑戦することのできる大きな力を持っています。
 そんなあなたが、未来に向かって大きな夢や希望を大きくふくらませてくれるように期待しています。
 私たちは、あなたやあなたの友だちはもちろんのこと、心や体に障害を持った人なども大切にし、赤ちゃんからお年寄りまで、すべての人の権利が守られるように努力をしています。…

また、「こどもの権利ノートって何?」は以下のような内容です。

 この「子どもの権利ノート」には、児童福祉施設で生活するあなたの「権利(あなたができること、してよいこと)」が書かれています。
 私たちは、あなたが、あなたの権利について学び、主張し、意見を述べていくことを大切にします。
 でも、あなたにもお願いがあります。このノートに書かれている「権利」は、あなただけのものではありません。施設では、兄弟姉妹ではない子どもたちが一緒に生活をしています。そんな仲間たちが施設で楽しく生活して行くためには、あなたの権利が大切にされるように、一緒に生活する一人ひとりの権利も大切にされなければなりません。
 そのために、生活上のルールや約束事などいろいろな工夫をしています。そのことは家庭や社会でも同じで、法律やルール、マナーなどが大切にされています。ですから、あなたも、このような約束事やルールなどを守らなければなりません。
 また、自分のことは自分で決め、そのことに責任を持つことは、あなたが自立をしていくために大切なことです。
 しかし、すべてをあなたの責任にするのではありません。私たちは、あなたの意見を大切にし、できるかぎりあなたの手助けをします。
 この「子どもの権利ノート」について、わからないことがあったら、児童相談所や施設の職員に聞いてください。あなたの疑問に答えてくれます。

権利とは、奪われそうなものを守る、あるいは主張するときに用いられる概念ですが、不安な気持ちで集団生活の施設に入ってくる子供たちにこのような言葉を投げかけて本当にうまくいくのでしょうか?
あたかも、自分のことは自分で守りましょう、侵害されそうになったら主張することができると、警戒心を無理やり生起させることにしかならないのではないでしょうか。

一方、施設職員の役割については、以下のような記述があります。

…関係機関との連絡調整や研修会への参加等を除けば、やっていることは一般家庭の親と大きな違いはありません。施設の職員は、親と別れて入所した子どもたちにとっての親代わりとなるべき存在です。

…要するに、職員は一人で何人もの子どもを担当することになります。限られた勤務時間の中で、一人一人の子どもと深くかかわるのは非常に困難です。
子どもから見れば、家に親がいない時が多い、いても兄弟姉妹がやたらと多いので、自分だけを見てくれる時間がほとんどない。こう例えられます。…

子供たちには権利概念を刷り込みつつ、職員は親代わりと言い、兄弟姉妹がやたら多くて自分だけを見てくれる時間がほとんどない…、といった記述は分裂しているとしか言いようがないと思います。

子供たちには、親代わりに見守ってくれる大人兄弟のように支えあえる仲間が必要であるし、養護施設はそのような可能性を持つ場であるようにも見えます。それに対して、権利などの表層的な観念は全く意味がなく、むしろ害悪にもなる言葉群だと思います。

byわっと

投稿者 wyama : 2008年02月14日 List   

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