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2022年04月08日

先人の“心”に学ぶ ~初心忘るべからず。その大切な心とは~

新年度がはじまり、私たちも新入社員を迎えました。緊張した面持ちの中にも期待感が感じられ、迎え入れる先輩社員としてとても楽しみに思います。

今回の記事では、新しい物事に取り組む際にピッタリな言葉をテーマに先人の「心」に学んでいきます。今回のテーマは、「初心忘るべからず」です。

誰もが耳にしたことがあるこの言葉は、世阿弥が生み出した言葉です。現代では、「初めの志を忘れてはならない」という意味で使われることが多いのですが、その本質は何なのでしょうか。
能の世界を極めた世阿弥。彼が晩年に残した伝書から、現代にまで語り継がれる「道理を紐解いていきましょう。

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https://www.the-noh.com/jp/zeami/words.html#word01より引用します。

世阿弥にとっての「初心」とは、新しい事態に直面した時の対処方法、すなわち、試練を乗り越えていく考え方を意味しています。つまり、「初心を忘れるな」とは、人生の試練の時に、どうやってその試練を乗り越えていったのか、という経験を忘れるなということなのです。

世阿弥は、風姿花伝を始めとして、度々「初心」について述べていますが、晩年60歳を過ぎた頃に書かれた『花鏡』の中で、まとまった考えを述べています。その中で、世阿弥は「第一に『ぜひ初心忘るべからず』、第二に『時々の初心忘るべからず』。第三に『老後の初心忘るべからず』」の、3つの「初心」について語っています。

 

■「ぜひ初心忘るべからず」

若い時に失敗や苦労した結果身につけた芸は、常に忘れてはならない。それは、後々の成功の糧になる。若い頃の初心を忘れては、能を上達していく過程を自然に身に付けることが出来ず、先々上達することはとうてい無理というものだ。だから、生涯、初心を忘れてはならない。

 

■「時々の初心忘るべからず」

歳とともに、その時々に積み重ねていくものを、「時々の初心」という。若い頃から、最盛期を経て、老年に至るまで、その時々にあった演じ方をすることが大切だ。その時々の演技をその場限りで忘れてしまっては、次に演ずる時に、身についたものは何も残らない。過去に演じた一つひとつの風体を、全部身につけておけば、年月を経れば、全てに味がでるものだ。

 

■「老後の初心忘るべからず」

老齢期には老齢期にあった芸風を身につけることが「老後の初心」である。老後になっても、初めて遭遇し、対応しなければならない試練がある。歳をとったからといって、「もういい」ということではなく、其の都度、初めて習うことを乗り越えなければならない。これを、「老後の初心」という。

このように、「初心忘るべからず」とは、それまで経験したことがないことに対して、自分の未熟さを受け入れながら、その新しい事態に挑戦していく心構え、その姿を言っているのです。その姿を忘れなければ、中年になっても、老年になっても、新しい試練に向かっていくことができる。失敗を身につけよ、ということなのです。

一時の試練を乗り越えれば、あとは順風満帆ということはなく、誰もがいくつもの試練・壁に向き合って生きています。どんなに歳を重ねても、どれほど試練を乗り越えようとも、訪れてくるものです。

世阿弥の世界観で言えば、立ちはだかる壁であれ・悩みであれ、今の状態を超えて行く時にこそ、その課題を乗り越えられる能力が育まれること。そして、次のステージの課題に巡り合うということです。

新人に向けただけの言葉ではない「初心忘るべからず」。
この本質的な意味を捉え、今年度も新たな挑戦へと足を踏み出していく。世阿弥に学ぶ人生の摂理。勇気が湧いてくる言葉を胸に、どの世代もが一体となって、人の心を育んでいきましょう。

次回も、先人の心に学んでいきます。お楽しみに。

投稿者 oguma : 2022年04月08日 List   

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