【コラム☆感謝の杜】生野菜は危険がいっぱい |
メイン
2014年09月02日
新たな介護の可能性 8.都市部で高齢者が生きがいを持って生活できる社会を形成する!
前回記事では、地方都市における地域活性化と高齢者の役割創出の成功事例を紹介しました。
都市部にはない豊かな自然と人々のつながり、地域への愛着がベースになり、自分たちの生きる場を自分たちでつくっていく活動が盛り上がりつつあるようです。そのような活動を通じ、高齢者の豊かな人生経験や知恵、その地域に伝わる伝統などが尊重され、高齢者の役割創出にもつながっています。今後の社会を考えるうえで、大きな示唆に富む事例と思われます。
→新たな介護の可能性 7.地方活性化と高齢者の役割創出の可能性
しかし、高齢化に伴う問題、中でも独居老人の急増、医師・介護施設の不足などは大都市圏の方がより深刻です。しかも、都市部では地域のつながりが希薄で、地方に比べてあらゆることをお金で解決せざるを得ない状況があります。このまま高齢化が進行すると、生きがいを感じることができず、ただ老いていく高齢者が急増することにつながりかねません。
定年や配偶者の死去など、役割の喪失が痴呆、要介護状態へとつながっていることは明白であり、都市部で高齢者の役割を創出していくことは、生きがいを創出するというだけでなく、介護の財政負担を大きく軽減することにもつながります。
そこで、今回は都市部における高齢者の役割創出の成功事例からその可能性を探ります。
◆ 家事代行による、都市での安心基盤の創出
● おばあちゃんの家事付シェアハウス:シェアネスト東横(リンク)
2013年3月、シェアネスト東横で新しく『おばあちゃんコンシェルジュサービス』がスタートしました。これは掃除・洗濯・料理・買い物などの家事を、入居者の代わりに『おばあちゃんコンシェルジュ』が行ってくれるサービスです。
一人暮らしでは費用的にも時間的にもなかなか頼めない家事代行サービスを、『シェアハウスのみんなで負担して家事をおばあちゃんに頼む』という試みで、行ってもらう家事は入居者みんなで話し合って決めます。
現在のおばあちゃんコンシェルジュの純子さんは、孫が大好きな方で市内から電車で週3日通ってきてくれます。自分の子供と同年代の入居者をとても可愛がってくれており、純子おばあちゃんがいるだけでハウスの雰囲気がとっても和む温かいおばあちゃんです。
● 人生経験豊富な女性が働く若い女性を支援する:ベアーズ(リンク)
ベアーズが誕生したのは1999年。
当時の日本は家の手伝いといえば「家政婦」や「便利屋さん」に頼むしかなく、選択肢が限られていた。
そうした時代にあって家事代行・主婦支援のための新しいビジネスモデルを打ち出したのがベアーズ。気軽に頼め利用しやすい料金体系を打ち出し、サービス直後から女性などから支持を得て急成長。いまや年間の利用者はのべ10万人、2011年度の売上高は10億円を超える。現在、ベアーズに所属する現場スタッフ「ベアーズレディ」は4300人。一人一人はベアーズならではの研修を経て、家事のスペシャリストとして各家庭に派遣される。
ベアーズレディの年齢構成を見ると50代から70代が50%以上も占めている。つまりベアーズの業務は働く若い女性の家事支援という側面と高齢者の雇用を支えるという2つの面をもっているといえる。核家族化がさらに進行し、地域とのつながりが薄れる中にあって、若い世代の女性は仕事と子育て、家事の両立に悩むことも多い。そのときに頼れるのが人生経験豊富なベアーズレディ。そこには信頼関係で結ばれた新たな家族像がある。
◆ 高齢者による、経験を活かした子育て支援
● 子どもも親も安心できる「おばあちゃんち」づくり:横浜ダンデライオン(リンク)
横浜ダンデライオンは、3歳から12歳の子どもたちの「おばあちゃんち」づくりなどを行っています。具体的には、主要には子どもを預かってほしい家庭と預かりたい家庭のマッチングにより、ワーキングマザー支援とスマート・シニア(元気高齢者)の生きがい支援を行っているようです。
子育ての強い味方となる「おばあちゃん」をつくり、シニアの経験を若い世代に伝え、一緒に子育てをしていく事業です。
以下に、メッセージを引用します。
もし、あなたが自分の持ち時間を人にシェアしようかとお考えなのでしたら、未来の社会を担う子供の為に、子育てと仕事の狭間で悩んでいる働く母親たちの為に、お時間を頂けないでしょうか?!
ご自分の家でお子さんを預かることで、お子さんの気持ちを全面的に受け入れ、親御さんと共にそのお子さんの基本的生活習慣のしつけをし、未来を担う人材育てをし、経済力の源でもある若いお母さんたちのメンタル面を支えて頂けたら、と考えています。
私も四捨五入すると60になります。
私たちの年代の、いわゆるシニア世代の者が、次代を担うお子さんを育てている母親世代や、学生さん世代に、経験してきたことを伝えず、誰が伝えていくというのでしょうか?!
文化の伝承、子育ての伝承、経験など、あなたが経験し悩んできたこと、こうすればよかったなあと思ってきたこと、こうしたから良かったよと伝えたいこと、お子さんを預かることで、伝えていきませんか?!
● 老人ホームと保育園が同居する施設:江東園(リンク)(リンク)
江東園は、東京都江戸川区にある、特別養護老人ホーム・養護老人ホーム・保育園が同じ屋根の下に同居する複合施設です。
子どもたちの行動範囲は全館。施設のあちこちで、子どもたちがお年寄りの部屋に遊びにいったり、だっこしてもらったり、絵本を広げている姿があります。
林副園長の言葉を引用します。「子どもは『おばあちゃん、絵本を読んで』など、お年寄りを心から必要としています。お年寄りにとっても『人のために役に立つ』ことが生きる力になっています。お互いに必要とするいい関係を築いていますね。また、連れ合いを亡くした喪失感や寂しいという思いも、子どもの元気な声が聞こえることで救われる、という人もいますよ。それに、重度の認知症のお年寄りもなぜか子どもの前だとしゃんとします。」
暴れて遊んでいる子どもも、車イスや松葉杖のそばでは静かに通るというように、思いやりが自然に身についている、ともいいます。お互いに必要とし、必要とされる、そのような関係の中で、子どももお年寄りも活き活きと暮らしている姿は、かつての地域共同体における高齢者の役割、子どもの学びを思い起こさせます。
◆ 高齢者による高齢者の介護と地域ネットワークの創出
● 元気高齢者による高齢者支援:かい援隊本部(リンク)
同社のビジネスの特徴は、「元気高齢者による高齢者の介護」。介護分野での人材派遣業では類例のない、毎月の研修を行う教育に力を入れる体制をつくった。介護をする人、される人の年齢が近いゆえにコミュニケーションを取りやすく、共に心と体の負担をかけない介護ができると期待できる。
さらに年金受給者層の人を介護スタッフとして報酬を伴う社会貢献活動にいざなうことで、収入と活力の維持を図る。目標は「2025年までに100万人の介護スタッフの派遣・育成を行う」と壮大だ。
「高・介併進策」と名付けた介護の人手不足解消と高齢者の生涯雇用のステージの確保、補助金なしで社会に負担をかけない社会性、知識や経験を持つ元気高齢者の力を活かすなど、さまざまな社会に役立つ工夫をビジネスプランの中に盛り込んだ。すでに介護施設と契約を結び、滑り出しから多忙になった。
◆ まとめ
①「志」のもとに集い、新たなネットワークを形成・拡大
地方では、もともとあった地域のつながりをベースに、「地域」貢献を事業化する事例が多いですが、都市部では、「社会」貢献のために集う事例が多くなっています。「目的」や「志」が結集軸となり、新たなつながりを構築していると言えます。
市場社会の行き詰まりや限界を誰もが心底では感じており、新たな可能性を模索しています。その危機を正面から捉えた人の心に、危機を乗り越える「志=自給志向」を生み出しています。だからこそ、実現に向かうスピードが速く、方向性も明確になりやすいと推測されます。
志を持った人々のつながりが、都市部における新たなネットワークをつくり、拡がっていく。これは、新たな社会を形成していくことにもダイレクトにつながる動きであり、非常に注目されます。
市場がバラバラに解体した「つながり」を、市場の行き詰まりを契機にして、次の社会を自らつくっていくという「志」が再びつなぎ始めていると見ることもできます。
② 大家族や地域のような相互扶助関係の再構築
都市における高齢者の役割創出は、子育て支援、家事代行、介護事業といった、ビジネスとしての成立が難しい一方で需要の高い事業が多く見受けられます。
大都市圏では、子育て世帯の親(子どもの祖父母)との同居・近居率が低く、母親への子育ての負担が大きいという問題があります。それを、実際の親ではないが、人生経験豊富な年配者が親の代わりに支援する。このサービスは、場合によっては年配者が若い女性にアドバイスをしたり相談相手になったりと、家事代行などの名目上のサービスに留まらず、より基底的な安心感にもつながるものと推測されます。
自らの家庭の課題を卒業した高齢者だからこそ、大きな懐で若い女性を応援できるという可能性があります。
③ 多くは女性主導だが、男性主導の事業も生まれ始めている
地方における事例と同様、腰軽く、可能性にまっすぐな女性が主導している事例が多いようです。
一方で、かい援隊本部のように、男性が主導する事例も出始めています。社会的な次元での問題意識をベースにしているため、男性が主導する事例、参加する事例も増えていく可能性は大いにあります。
事業自体も、男性が加わることでより厚みが増していくことが期待され、今後の男性の意識変化、参加の動向が注目されます。
投稿者 ythayn2014 : 2014年09月02日 TweetList
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://web.kansya.jp.net/blog/2014/09/3665.html/trackback