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新たな介護の可能性 2.今後、高齢者の意識変化はますます加速し、可能性が広がる!

かい援隊 [1]

前回記事「新たな介護の可能性~高齢化社会の視点を変えれば新しい可能性が見える~ [2]」では、

問題視されている「高齢社会」「超高齢社会」は、視点を変えると大きな可能性として捉えられることを明らかにしました。高齢者を介護すべき弱者として見るのではなく、社会的な生産者として捉えることで、まったく違った将来像が見えてきます。

 

今回記事では、新たな介護に向けた可能性を、どのように実現するか、実現のためには何が必要か、を鮮明にするために、より詳細に現在の高齢者の意識変化を押さえ直します。

■現在の高齢者の意識状況

最初に、現在の「高齢者」の状況を大別します。

新たな介護の可能性が、「高齢者自身が供給者になる」ことに着目し、供給者or消費者という軸で分類すると、

 

【供給者】

①社会的次元(仕事)での供給者

・近年増加しているシニア起業家や、企業で働き続ける高齢者

・第一次産業(農業、林業、漁業など)や自営業など、現役の生産者

 

 

◆かい援隊本部(東京都品川区)

かい援隊 [1]

同社のビジネスの特徴は、「元気高齢者による高齢者の介護」。介護分野での人材派遣業では類例のない、毎月の研修を行う教育に力を入れる体制をつくった。介護をする人、される人の年齢が近いゆえにコミュニケーションを取りやすく、共に心と体の負担をかけない介護ができると期待できる。

新川会長、斉藤幸三社長は共に60歳。2人は明治安田生命の幹部を務めた。そこで学んだ人材育成のノウハウを活かしながら、定年後に社会起業を行う。2人は3年前にビジネスモデルを構想。

Alterna「若者に介護はさせない―元気高齢者による高齢者支援「かい援隊本部」活動開始」 [3]

 

②地域社会に密着した供給者

・地方都市や農村で見られる、地域社会に貢献する高齢者

(共同体意識⇒規範が残存している地域では「当たり前」のことであり、マスコミ等では取り上げられない事例も多いと推測される)

◆地域の高齢者による「放課後子ども教室」(熊本県宇城市不知火町)

松合小学校放課後子ども教室 [4]

画像は宇城市HP [5]より

地元の保育園の学童保育が廃止になったことをきっかけにして、高齢者が中心(75%)になって、小学校の空き教室を利用する形でスタート。

一日3~6人の当番制でシフトを組みながら(高齢者達も仲間と取り組むことで活力が上がりそう)、習字やパソコン、そろばんや読み聞かせなどの講座を展開して、子ども達に将来に渡って使える教育を行っている。

そして、最近では「論語の読み聞かせ」も始めており、高齢者と共に声を合わせて読んで行くなど、言語能力の鍛錬に直結しそうな課題も組み込まれており、注目されている。

 

「高齢者が中心になり、地域に応える形で学童保育を実践」 [6]

 

※正確には、①と②の接点領域が存在し、中間もしくは両方にまたがる供給者も多い

 

【消費者】

③ただの消費者

・テレビや旅行など、消費を中心とする個的生活を送る高齢者。現実社会から隠遁、逃避。

テレビ中毒 [7]

画像は(リンク [8])より

 

★①、②の層が新たな介護を実現するための可能性基盤であり、意識変化の顕れ。ここを基盤に可能性を具現化し、徐々に③の層を移行させていくのが実現イメージだろう。

 

★現在、高齢者となりつつあるのは、いわゆる「団塊の世代」。個人主義の塊であったこの世代から、消費による充足ではなく、社会的な期待に応え続けようとしている層が現れはじめているのは、大きな変化ではないか。

■社会貢献意識を持つ高齢者の増加

ここで、現在増えているといわれている、①の高齢者たちの意識をもう少し詳細に把握します。

 

1.老後も働くことに対する意欲が上昇

60歳以上の常用雇用者急増 [9]

前提として、老後も正社員として仕事をし続ける高齢者が増えています。

格差の拡大により、働かざるを得なくなっている人が増えているという要因や、60歳以上の人口そのものが増えているから常用雇用者が増加しているという要因も無視できませんが、この「急増」の背景には、何らかの意識変化があるとみた方がいいと思われます。

 

2.シニア起業の増加

60歳以上が起業の主役 [10]

上図のように、現在の起業家の主流は、若者ではなく60歳以上です。多くの場合、どこかの企業に雇用される働き方よりも起業の方がより大きなエネルギーを必要とします。つまり、それだけ働くということに対する積極的な動機が高齢者の中にある言えます。

 

3.起業の目的意識は、社会貢献

シニアの起業目的 [11]

シニア起業家の起業目的を見ると、やはり「働きたい」ということ、「社会に貢献したい」ということが大きいようです。

より高い所得を求める意識は割合としては非常に低いことも特徴です。

 

以上のように、明らかに団塊の世代の意識は変化しており、新たな介護の実現基盤は整いつつある言えます。

 

※上記3種類のグラフは、すべて東洋経済2014.2.15「特集 70歳まで働く」 [12]より

 

■今後の意識変化はどうなる?:世代ごとの特徴

新たな介護の可能性を考えるうえでは、現在の変化を把握するのと同様、今後の変化を予測し、長期的に展望することが不可欠です。そこで、最後に現在の高齢者世代、今後高齢者になっていく世代にわたり、世代ごとの意識の特徴を概略で整理します。現在の変化が一時的なものなのか、継続的なものなのかを予測します。

 

Ⅰ.80歳代:「昭和一桁世代」

・現在の80代は昭和一桁世代と言われ、若い労働力として戦後復興の担い手となった世代。

・中堅として高度経済成長を牽引し、急速に都市化が進行、三種の神器を買いそろえていった。

・現実的には、その多くが介護される段階に入ってきている。

参考:wikipedia「昭和一桁」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%AD%E5%92%8C%E4%B8%80%E6%A1%81 [13]

 

Ⅱ.60歳代:団塊世代

・戦後の第一次ベビーブームで生まれ、戦後の都市化→核家族化の中で育った世代。

・近代思想に強く影響され、個人主義、私生活第一の価値観が強い。学生運動世代。

・1970年頃の豊かさの実現が20代前半、1990年頃のバブル崩壊が40代前半。市場縮小や企業の統合不全を主力として経験。

完全なぶら下がりサラリーマンと、社会情勢が悪化する中でも答えを探し続けたリーダー層がいると推測される

参考:wikipedia「団塊の世代」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%A3%E5%A1%8A%E3%81%AE%E4%B8%96%E4%BB%A3 [14]

 

Ⅲ.40歳代:団塊ジュニア

・10代でバブル崩壊を経験し、社会人としては景気のよい時代を経験していない世代。

・仲間を大事にする「仲間収束」の意識が強くなり始めた世代でもあり、私権への関心は薄れている。

・共同体で育った人は少ないが、仲間収束から共同体「的」意識が生まれている

参考:wikipedia「団塊ジュニア」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%A3%E5%A1%8A%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%8B%E3%82%A2 [15]

 

Ⅳ.20歳代:課題収束世代

・仲間収束はさらに強まり、加えて「課題収束」が顕在化している。

・それ以前の世代に比べ、社会問題に対する関心も高い。特に3.11以降は社会問題に対する関心、「自給志向」「自考志向」が加速。

 

★最初の「①社会的次元(仕事)での供給者」、「②地域社会に密着した供給者」は、団塊世代の中でも主体性を持って仕事に取組んできたリーダー層であると推測される。この層は、リーダー的役割を担ってきたために、仕事などを通じて仲間を大切にする世代の部下からも影響を受けており、団塊世代の中でも意識転換が早い。

 

 ★世代を追うごとに、自分第一の価値観や私権(お金、地位etc.)に対する収束度が薄れ、仲間を大切にする意識が高まっている。

⇒団塊世代でさえ老後の社会的役割を求めており、この意識潮流がますます高まることは間違いない。

 

以上のように、すでに新たな介護を実現するための基盤はすでに形成されており、長期的に見てもその基盤は年を追うごとに強固になっていくことは明らかです。

今後は、より具体的な実現イメージを固めるため、引き続き可能性を探っていきます。

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