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「マスク生活」が子どもの表情・感情を奪う

もうすぐ小学生になる息子をもつ父親ですが、ここ数年の子供たちの様子・学校を始めとする教育現場の変わりようを見聞きする度、これからの子供たちは大丈夫かなと、少し心配になることがあります。

ただでさえ今の子供たちは宿題と習い事が詰め込まれ、そのスケジュールは大人たちよりも忙しいと聞くし、外で思い切り遊ぶ機会・そもそも遊べる場所も格段に減っている。最近は小学校の昼休み時間でさえ、外には出ず教室にいたままだったり図書室にいったりする子供たちが過半だとか。自分が子供だった頃を振り返ると、信じられないことばかりです。

幼少期は特に、豊かな人間性を育むうえで重要な時期と聞きます。しかし現実にそのような場は極端に減少。そんな中でのコロナ禍。
『マスクを着けたままの生活』が当たり前になってしまった社会は、子供たちの成長にどんな影響を与えるのか。
根拠なき推論ではなく、できる限り事実に即した観点から、考えていきたいと思います。

以下、【マスク社会が危ない~子どもの発達に「毎日マスク」はどう影響するか?】(宝島社 著:明和政子)より抜粋引用。

 

●「サル真似」がヒト進化の基盤

・乳幼児期とは、相手の心を理解する能力や言語を獲得していくきわめて重要な時期です。こうした学びを可能にするのは、ヒトだけが持っているある特別な能力です。それが「サル真似」です。

「サル真似」という言葉には、「創造性に欠ける」「誰にでもできる」といったあまり良くないイメージがあると思います。しかしこれは間違いです。実は、サル真似をする霊長類はヒトだけであり、サル真似こそがヒトの発達を支える基盤になっているのです。

・ヒトは言葉を話し始める前から、他者の表情や行為を積極的に真似し始めます。ここには、相手の行為を自分の行為と鏡のように照らし合わせる「ミラーニューロン」という神経ネットワークが関与しているとみられます。
目の前の人がニコッと笑顔を浮かべている、悲しんでいる、怒っている。乳児は、生後数ヶ月でそうした喜怒哀楽の表情を「区別」できるようになりますが、いまだこの段階では、その人の心を「理解」するには至っていません。そこに至るには、もうひとつ重要なプロセスを経る必要があります。それが真似です。

相手の笑顔を、自分でも真似してみる。その時に乳児は、自分自身が笑うという身体経験によって心地よさを感じます。その経験を、目の前にいる人の笑顔に鏡のように照らし合わせていくことによって、「この人は嬉しいんだ」という心の理解が可能となるのです。

 

●「表情を読めない」子供たち

・周りの大人がいつもマスクをしていたとしても、家庭ではお母さん、お父さんがマスクを外して表情を見せているからまったく問題ない、という意見があるかもしれません。

しかし、ある表情(シグナル)はこういう意味を持っている(シンボル)という理解を、お母さん、お父さんといったごく身近な人との間だけでなく、家族以外のさまざまな他者にも当てはめ、広げていく必要があります。これを「般化」学習と言いますが、これこそが社会性を育むために必要となるプロセスです。

・現代社会において、乳幼児の社会性を育む場として大きな役割を果たしているのは、保育園やこども園、幼稚園などでしょう。こうした時空間で、子どもたちは多種多様な人々の表情やふるまいに触れる機会を多く得てきました。しかし、マスク着用が日常的に求められる今、子供たちは相手がどのような表情をしているのかを理解することは難しく、また、それを真似する機会も乏しくなっています。

・園で子どもと接してくださっている先生方からは、「子どもたちに笑顔を向けても反応が薄い」「子どもたちに思いが伝わっていないように感じる」といった声が上がっています。先生がマスクをしていると、子どもたちにとっては大人が想像する以上に、相手の表情を読み取ることが難しいのです。また、自分が笑ったときにも、先生が笑い返してくれているかどうかが分からないわけです。

特に小さな子どもは、相手の顔を見るとき、目以上に口元を注視する、と聞いたこともあります。
真似をしながら、相手の気持ちも自分の気持ちも理解していく。やはり乳幼児期は、後の人間性を育むうえで大変重要な時期であることが分かります。
海外の研究機関からは、「マスク生活」が子どもの発達に与える影響を指摘する分析も出始めています。

・2022年4月4日、BBC(英国国営放送)が、気になる記事を配信しました。英国教育水準監査局という、日本でいう文部科学省の第三者研究機関にあたる公的機関があります。その機関が、コロナ禍での英国の子どもたちの現状についての報告書を公表したという内容です。
それによるとコロナ禍の2年で、すべての子どもではありませんが、相当数の子どもたちに、言語の獲得の遅れや表情の乏しさ、不安傾向といったマイナスの影響が出ているそうです。

このような指摘と分析は、日本国内ではまだまだ少ないのではないでしょうか。ただマスコミをはじめ世間の風潮に流されることなく、子どもたちの意識の変化・その背景にある構造を捉えながら、これからの子育て・教育について引続き追求していきたいと思います。

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