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教える必要は無い。やりたい!という感情が湧けば上がってくる

今日は、職場での人材育成からの気づきです。
子育て中の方や、学校や職場で後輩を指導する立場の方や、チームをまとめることを期待されている方など、そしてまたその逆も。生活をしていればどんな場面でも人との協働が必要になってきます。

丁寧に教えたつもりなのになかなか成果が上がらない、目標を共有したはずなのに同じ熱さを感じられない、お客さんの性格や関係性などを共有したつもりなのに相手の気持ちを汲み取れないなど・・・。
上手くいく時もいかない時も、試行錯誤の連続ですよね。

私も職場で後輩たちを指導する場面がありますが、なるほど!と思い参考にしている考え方があるのでご紹介したいと思います。

法隆寺の専属宮大工であった西岡常一棟梁の唯一の弟子である小川三夫さんのお話の一部です。
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一生を、木と過ごす。宮大工・小川三夫さんの「人論・仕事論」。「教えないから、上がってくる」 (より一部引用です)

・お弟子さんは、どう育てますか。

まだ何もやったこともない、何もできない人が「宮大工になりたい」といって来るんですよ。そしたら、その弟子は、一番先に何をするかといったって、何にもできない。だから、飯つくりさせる。仕事はできなくても、みんなのために、飯つくりと掃除はできるわけですから。飯つくり、掃除を1年間やらせると、飯つくりをさせれば、その人の段取りのよさがわかりますよね。思いやりも、わかりますよ。そうでしょ。
「今日は、これをみんなに食べてもらう」とか、そういうのは、段取りが必要になるし、掃除をさせる時にしたって、必ずその子の性格が出る。それを1年間見て、「ああ、この子はこういうところがまずいから、 じゃ、ここだけは直さなくちゃならないな」というふうにするわけですな。

・直るんですか。

直りますよ、一緒にいれば。一緒にいないとだめなんですよ。これが、アパートから通ってもいいですか、ではダメなんです。  ま、常に一緒にいるんだから向こうも大変だけど、こっちも大変ですよね。 でも、それが大切なんですよ。そうして生活してると、「みんながこれだけやっているんだから」というふうに気持ちがわいてくるわけです。
毎日毎日掃除ばっかししますよ。そうすると、やっぱり先輩がきれいなかんなくずを削ってますよね。もう、かっこいいし、憧れでしょう。ああいうかんなくず、削ってみたいと思う。そう思ったときにかんなを貸してやるんですよ。「削ってみい」そしたら、もううれしくてうれしくて、板が薄くなるほど削りますからね。その夜からのそいつの研ぎものは今までとは全然違ってきますよね。

・その日にガチャーンと変わるんですか。

変わるんですよ。これが、最初に、「かんなはこういうふうなもんですよ」「こういうふうに削るんですよ」と教えてやったって、苦痛でしかないですよ。削れないんですから。つまり、ほんとに削りたい、削りたい、削りたいと思う気持ちがわくまで、放っとかなくちゃダメ。教えちゃったら、その子がいろいろなことを気づかなくなってしまう。「掃除しとけ」とだけ言って3か月ぐらい放っとかれますわな。そうすると、本人がいちばん「これはまずいな」と思うからね。そうすると、一生懸命やる気分が高まる。(中略)
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成長していくには、相手のことを知ること、目指す方向を共有すること、できる人に真似ていくことは不可欠ですが、そういう気持ち関係になっていくにも、まずは「やりたい!そうなりたい!」といった根っこの部分=欠乏を育てることがすごく大切。ということなのでしょう。

その欠乏さえ湧き上がってくれば、あとは見様見真似で成長していくし、新たな壁にも気づける。そして真似をすることで見えていた世界も広がっていき、更に上を目指す活力が湧いてくる。
また同時に、真似る中で先人たちへの同化も深まり感謝も深まる。その繰り返しの中で「もっとやりたい!へと意識が変わり、欠乏も大きくなっていくのだと思います。
逆に、欠乏を無視して教えたところで長続きはしない(なんとなくできたとしても本物にはなれない)。

職場での育成と聞くと、専門的な技術面でのスキルアップと捉えがちですが、まず行うべきことは技術力以前の「やりたい!」と思う欠乏引き出し育てていくことなのでしょう。
そしてその為には、上司部下関係なく一体で外圧(課題)の中に飛び込み、一緒に試行錯誤すること。

新年度がスタートし新しい環境で仕事を始める方も多いと思います。ヒントにしてみてはいかがでしょうか。

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