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子どもに「自分はダメ」と思わせる親の言葉

なぜ教育の世界では自己肯定感が注目されるのでしょう?

「チャレンジ精神」「自分の頭で考える」には自己肯定感が必要。それには絶対評価が必要。

学校もわかっているのに相対評価の枠から抜け出せないのはとっても不思議です。

 

https://toyokeizai.net/articles/-/144783 [1]   より引用します。

筆者は10年以上にわたり人材育成の仕事を行い、のべ1万2000人の方と接してきました。その中で、目標達成に向かってどんどん行動を変えることができる人と、できない人の違いを見てきました。

 

◆親から子への「誤った声かけ」

その大きな違いのひとつが「素直に自分と本音で向き合えているかどうか」。そこでは、自己肯定感が大きく影響していました。そして自己肯定感を下げる要因が、子どもの頃の経験にもあることに気づいたのです。

特に気になるのが、親から子への「誤った声かけ」です。

小学生のお子さんが、テストで90点を取って帰ってきました。こんな時あなたなら、どのような声かけをしますか?

「頑張ったね。もうちょっとで100点だったね」

もしこのような「はげまし」が、お子さんの自己肯定感を下げていると言ったら、驚かれるでしょうか。ではどこが悪いのでしょうか。

この声かけの問題点は「もうちょっとで」という部分。正解した90点の部分ではなく、できなかった「10点の部分」に注目しています。

小学校に入学したばかりの1年生にとって、この変化は衝撃です。なぜなら、幼稚園や保育園までは、他人と比べて評価されることはなかったからです。上手に絵が描けた、元気に体操ができた、太鼓をリズムよくたたけた……。基本的に何をしても「マルの世界」でした。

それが小学生になったとたんに「100点満点の世界」で、マイナス面を指摘されるようになるのです。つまり100点でないかぎり、毎回「できなかったこと」に着目されてしまいます。

これはテストに限ったことではありません。日常生活においても、子どもたちは「できないこと」ばかり指摘され続けています。「片付けなさい!」「早くしなさい!」「宿題しなさい!」。言い出したら、キリがありませんよね。

自己肯定感とは、

・自分は大切で価値のある存在だと、自分を自分で認めて自信がある状態

です。

自己肯定感が高い人は何事にも前向きにチャレンジしていけるのに対し、自己肯定感の低い人は「どうせうまくいかない」とマイナス思考で行動を起こすことができません。

日本の若者の自己肯定感が低いことは国際調査で明らかです。私は学校での経験とそれを取り巻く家庭での状況が大きく関わっていると考えています。文部科学省も小学校高学年の子どもの発達における重視すべき課題のひとつとして「自己肯定感の育成」を挙げています。

自己肯定感を育むには、絶対評価が必要です。

なぜなら、他者とは関係なく「自分が日々成長している」と知ることで私たちは自分を認めることができるからです。

しかし、学校は相対評価の世界です。「平均点より上、下」「あの学校に入れる、入れない」など、周りとの比較の中での自分の順位によって、一喜一憂せざるをえません。

なかなか成績が上がらない子どもは「ここを直すように」と言われ、ダメな面に目を向けてばかりいますから、自己肯定感は下がっていきます。いい成績を取ったら取ったで「もっと上を目指そう」と志望校を上げるように促され、「もうちょっと頑張りなさい」と言われます。上には上がいますので、これでは終わりがありません。

子ども自身も「ダメな部分」に注目するようになる

このような勉強に関わる大人の発言によって、子どもは自分の欠点ばかりに目がいくようになるのです。

九九が少し覚えられないだけで、「私、算数不得意だから」と言い出す。テストでできないところがあると「それ習っていないもん」と言い訳をする。実はこのような後ろ向きな言葉によって、自己評価やセルフイメージは下がっていきます。

そしてこれらの言葉は、親の「マイナス評価」から逃れて傷つかないようにするための、必死の抵抗です。「×がついているのは、不得意だから、習っていないからしょうがないでしょ。私が悪くはないよね……」。子どもが伝えたいのは、そういうことなのです。

ところが親は子どものためと叱咤激励します。その激励に応える子どもを見て、「素直に頑張っている」と安心はできません。その叱咤激励が、自己肯定感を下げている可能性があるからです。

いちばんの問題は、私たち親世代が偏差値教育の中で育ってきている点。自分自身、マイナス面を見ることが当たり前、弱点を克服していくことを当然と受け止めているからです。まず、大人である私たち自身が「できなかったこと」に目を向ける癖があることを認識する必要があります。

そしてその癖を直すために、まずは子どもの「できたこと」に目を向けるように意識をすることから始めてみましょう。

子どもが90点のテストを持って帰ってきたら、

「すごいね。宿題頑張ってたもんね」

と、結果ではなく勉強した「プロセス」を褒めてみる。30点でも、「30点取れたね」と言いつつ、点数のほかにもいいところはないかを探してみる。字をていねいに書いている、文章問題にマルがある、一生懸命計算した跡が残っている、などであれば、

「何回も頑張って計算したんだね」

と「できたこと」に注目して伝える。

そうすることで、子どもはプラス思考に変わっていきます。「できたこと」を見ることで、「ないない思考」から「あるある思考」へ転換します。それが子どもの自己肯定感を上げる第一歩になるのです。

 

◆強制的な禁止事項が多い

ほかにも自己肯定感を下げる要因として、学校には「禁止事項」の多いことも挙げられます。

・ベランダの柵に触ってはいけません

・廊下を走ってはいけません

・図書室では話してはいけません

・倉庫の裏に行ってはいけません

このような「禁止事項」は、学校の規律や生徒の安全を守るために致し方ない面もあります。しかし禁止されている理由がわからない「筆箱にキーホルダーをつけてはいけない」といったものもあるようです。

「◯◯してはいけない」という禁止の言葉は強制ですから、素直な子どもたちは疑うことがありません。そしてそれ以上に考えることもありません。子どもの思考は、禁止された時点で停止してしまいます。

そこで子どもの思考停止を避けて、自主性や自信を育むために学校のルールを子どもたちで考えさせる手があります。

たとえば、ホームルームや総合的な学習の時間を使って

『「図書室では話してはいけない」って本当?』

という問いを生徒たちに投げかけます。

当たり前に感じる(思考停止している)今あるルールに疑問をもたせるのです。そして賛成、反対のそれぞれ立場にたって議論させます。すると、「図書室は静かに本を読む場所なのだから当然静かにすべきだ。走ったりおしゃべりしたい人は校庭に行けばいい」という賛成意見から、「市民図書館ならまだしも、学校の図書室はいろんな人が集まってくる貴重な場所なんだから、交流する場とすべきだ。本を静かに読みたい人は借りればいい」という反対意見も出てきます。

実は結論はどちらでもいいのです。子ども同士が話し合って自主的に運営されることが大切だからです。小学校高学年ならできるはずです。そして最終的に決まったルールには異論はあったとしてもみんな従おうという基本のルールさえあればよいのです。

どうしても大人が生徒たちの安全などを先回りして考えて、「押し付けるルール」が多いのが学校。これでは「自分の頭で考える」ことをしなくなってしまいます。自己肯定感を高め、自信を育むには、「自分たちで決める」というプロセスが重要なのです。

 

◆自己肯定感の低い日本の若者

このような小学校生活を経た子たちのその後の肯定感はどうでしょうか。実は中学、高校、大学で自己肯定感がより下がっていく傾向があります。

日本を含めた7カ国の満13~29歳の若者を対象とした意識調査(「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」平成25年度)によって、自己肯定感の度合いが調査されています。日本人の自己肯定感の低さは、ほかの国と比べても明らかです。

このデータの着目点は他国より自己肯定感が低いことだけでなく、学校生活を経るごとに落ちていっている点です。年齢層を学校で区切ってみると、中学、高校、大学に行くにつれどんどん肯定感が落ちて行っているのです。

今、社会で自己肯定感が着目される理由は、「チャレンジ精神」が必要とされるからです。肯定感が高い人は少々難易度が高い仕事でも「やればできる」と挑戦的な行動をとります。また周りとの関係性も良好なのでフィードバックが受けやすく、仕事の壁を乗り越えやすくなります。

市場の変化の激しいグローバル時代に必要な力が、旺盛なチャレンジ精神と自分で考えて行動する力です。新しい時代を生き抜く力をつけるために学校時代から自己肯定感を育成する必要があります。

そしてその第一歩は、テストをもって帰ってきたときの、あなたの一言なのです。

 

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