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子供のからだがおかしくなっている!

子供は走りまわるのが大好き。高いところに登ったり飛び降りたり、階段があるととにかく上がってみる。動き回るのが楽しくてしょうがない、という感じです。

ところがそんな子供たちのからだに異変が起きているようです。

今回は、子供たちのけがの報告から最近の状況を見てみましょう。

以下(https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/20190311-OYT8T50009/)より引用します。
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「走っただけで、骨折してしまう」「片足立ちでフラつく」……。自分の体をコントロールできない子どもが増え、簡単な動作をしただけで大けがを負うケースも目立つという。日本体育大学の野井真吾教授(教育生理学)がその背景を解説し、子どもたちを守るための対策を提言する。大切なのは、幼児期の体を使った「遊び」だという。

〇子どもの体に異変

全国の養護教諭から、以前にはあまり見られなかった、子どもたちの“信じられないけが”の例が報告されるようになりました。ある中学校では、50メートル走のタイムを計測していたところ、走り始めた子どもが20メートル付近で転んで動けなくなったそうです。病院で調べると、股関節のはく離骨折が確認されました。転んで骨折したのではなく、走るときの筋肉の収縮に骨が耐えきれず、筋肉に引っ張られて骨の一部がはがれてしまい、そのために転んだというのです。

この他にも、小学校では「雑巾がけで腕を骨折した」「跳び箱に手をついた際に骨が折れた」といった報告もあり、日常的な動作や軽い運動での骨折が目立っています。

また、「うまくしゃがめない」「片足立ちでふらつく」など、自分の体をうまくコントロールできない子どもも増えています。

〇異変の原因

簡単な動作で骨折してしまうのは、かつての子どもたちに比べて骨が弱くなっているのが一因と考えられます。骨は古くなった組織を壊し、新たに形成する――というサイクルを繰り返しています。この再生のサイクルは、ジャンプのように骨に強い負荷をかける動きでスイッチが入ります。言わば、骨は負荷に耐えられるように自らを作り替えようとするので、骨を強くするためには、ある程度の負荷が必要なのです。

〇運動能力が低下している

では、自分の体をうまく使えない子どもが増えているのはなぜでしょうか。実は、子どもたちの体力が時代とともにどう変わってきたかを示すデータがあります。1964年から全国で行われているスポーツテストの記録です。同じ測定項目で続けられていた97年までの記録を11歳時で比較すると、「垂直跳び」「握力」などの体力を示す項目は横ばいですが、「走り幅跳び」「ハンドボール投げ」などの運動能力は著しく低下しているのです。

この事実からわかるのは、体力はあるけれども、その力をうまく組み合わせて使えない子どもが増えたということです。例えば、筋力や瞬発力はあるのに、走り幅跳びの記録は伸びない。98年から項目が変わり、比較しにくくなったため、20年ほど前のデータが最後ですが、当時と比べても現在は“信じられないけが”をする子どもの報告は増えています。骨が弱くなっているほか、無理な動きをしてしまう――。そうした傾向はさらに強まっている可能性があります。

〇子どもの遊びに変化

都市部で空き地などの遊び場が減ったことや、テレビゲームやスマートフォンなどの登場で、子どもたちが体を動かして遊ぶ機会が減りました。また、エレベーターやエスカレーターなどの普及で、日常生活の中でも体を使う場面が減ったことが指摘されています。

骨をすぐに折ってしまう子どもは、こうした環境の中で増えつつあるのではないかと考えられます。

〇スポーツと遊びの違い

一方、体力はある程度あるけれども、運動能力が低下しているという子どもたちについてはどのように考えればよいのでしょうか。

以前から「子どもの体力が低下している」と指摘され、学校でも持久走やなわ跳びなどを行うようになりました。しかし、体力の向上、または維持ができたとしても、運動能力の向上にはつながっていません。運動能力は体の使い方がポイントなので、体力を付けても変わらないのです。

子どもの運動能力はかつて、外遊びの中で培われた面がありました。空き地や里山はアスファルトと違って起伏があり、足元が平らではない不安定な場所に立つことも多かったのです。人間は不安定さを察知したら、真っすぐ立てるように左右のバランスを調整します。山登り、木登りをすれば、こうしたバランスを保つ調整能力を全身で養うことが自然にできます。走り回っているときに、小さな水たまりや小川を飛び越えるなどの動作を行うことでも、運動能力を自然と高めることができたのです。

〇スポーツでは補えない場合も

では、スポーツをさせれば、体力も運動能力も身に付くのかといえば、私は必ずしもそうではないと思います。スポーツは成長期を終えた大人が楽しむために考え出されたものが多く、例えば、利き腕の使用頻度が高いなど、体の特定の部分を中心に使うケースが目立ち、その箇所だけが発達することも多いのです。

また、スポーツでは指導者にもよりますが、子どもたちは「やらされる」ように感じることも多くあります。一方、遊びは自分から「ワクワクドキドキ」と感じるものに自発的に取り組むものです。この違いは、脳の発達にも影響を与えます。

〇自発性が前頭葉も成長させる

宇都宮市の幼稚園で40年以上続いている「じゃれつき遊び」という取り組みがあります。朝、時間を設けて、部屋の中で、「何をやっても、何を使ってもよい」というルールで自由に遊ばせます。高さ1メートルくらいのロッカーの上から飛び降りたりもします。

この幼稚園の園児に関して、大脳で感情や意欲を担う前頭葉の働きを調査し、こうした遊びをしていない園児たちと比較したことがあります。

教育生理学では、集中を持続させることができずに、いつもそわそわして落ち着きがないという特徴の子どもを「不活発型」と分類していますが、この「不活発型」は「じゃれつき遊び」を導入している幼稚園では6.7%であるのに対し、導入していない別の幼稚園では34.4%でした。

幼児期に体を使った遊びを体験することが、体の成長だけではなく、脳の働きにも効果があることがわかってきているのです。

〇外遊びが難しい時代にするべきこと

現代は子どもの外遊びが難しい時代です。それと似たような状況作りを、大人が積極的に仕掛けていかないといけないのです。

こうした取り組みをする場合、保護者はけがを心配します。「じゃれつき遊び」でも、周りで先生たちが目を配り、さらに「頑張れ」と声をかけて無理をさせないことを意識します。無理をさせれば危険が生じるからです。

しかし、擦り傷などの小さなけがを嫌い、体を使った遊びをさせないようにすると、先述のように、子どもたちは骨が弱くなったり、体がうまく使えなかったりするなど、体の成長に影響が出てしまう可能性があります。ささいなことで大きなけがを負ってしまうことにもなりかねません。幼少期の子どもたちに「ワクワクドキドキ」するような、全身を使った遊びを体験させることが大切なのです。
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暗くなるまで裏山や河原で遊んでいたことを思い出すと、そういう場所のない今の子供たちはかわいそうだなと思っていました。しかし外遊びの減少が、体や脳の発達にまで影響することを知ると、このままではいけないと強く思います。

多少のけがはあってもいい。「ワクワクドキドキ」する遊びをいっぱい体験できる環境をつくっていきたいと思います。

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