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子供の仕事は遊びである!34 ~外遊びこそ算数が伸びる

遊ぶ方が賢くなるシリーズ第2です。今回は特に「算数」です。

算数が伸びない子どもの共通点とは!? [1]
「外遊び」こそが算数の最高の教材!

 「算数」には、「考える力を養う」すべてがある

花まる学習会 代表
高濱正伸(たかはま・まさのぶ)算数が苦手な子は、「算数なんかできなくたって、社会生活で問題ないから、いいじゃないか」「自分で計算をしなくても、パソコンや計算機を使えばいいじゃないか」と考えがちです。

子どもがこのように考えるのは、親が「算数ができる=計算ができる」と単純にとらえてしまっていることも、ひとつの原因です。

実は、「算数」は、ただ単に計算力を問う教科ではありません。「算数」とは、ひとことで言うと、

「考える力を養う」

教科なのです。算数には、

・「見えないものをイメージする力」
・「思いがけないところからヒントを拾い上げる力」
・「モレや矛盾なく思考を積み上げていく力」
・「粘り強く、最後まで考え抜く力」

など、思考力に関するすべてが詰まっています。
この「考える力」こそが、社会に出たときの「地頭(じあたま)のよさ」にも、つながっていきます。サス学様子2 [2]

算数とは「考える力を養う」教科ですので、必然的に、面倒くさがらずに「考える」ことができる子どもは算数が得意になり、「考えることが嫌い」な子どもは、算数につまずきやすくなる傾向にあります

小学校低学年のときは「算数が得意」だった子どもが、高学年になると「苦手になる」ことは、よくあります。

学年が上がるごとに算数ができなくなったとしたら、その理由は、低学年のときに、「計算の処理の速さと正確さ」のみを優先してきたことがほとんどです。

算数で、子どもがつまずきやすい「主なポイント」

算数の問題は、学年が上がるほど、「抽象度」が高くなります。計算の処理能力だけでは、徐々に太刀打ちできないようになっていくのです。

とくに、子どもがつまずきやすい「繰り上がり計算・繰り下がりの計算」「文章題」「3ケタ÷2ケタの割り算」「分数」「図形」では、「考える力」が不可欠になってきます。

・【繰り上がり、繰り下がりの計算】
「10進法(10でケタが上がること)」や「『位』の概念」を理解する力が必要です。
たとえば「6+7」の答えは「13」ですが、「10進法の概念」がわかっていない子どもは、どうして13になるのかを理解しようとせず、「6+7=13」とそのまま暗記しようとします。「10進法の概念」がわからずにただ暗記をしても、低学年時代はバレませんが、5、6年になって整数系の思考力問題で挫折します。

・【文章題】
「この問題では、何が問われているのか」を考える力が必要です。
たとえば、

「100メートルの道の両脇に、『10メートル間隔で1本ずつ』木を植えたとします。全部で何本の木を植えることになりますか?」

という問題があったとき、考える力の浅い子どもは、文章の中にある数字だけを見て 「100÷10=10本」と短絡的に答えを出します。

10メートルに1本ずつ植えると、木と木に挟まれた空間が「10」あることになるので、片側に植えられる木は11本。さらに問題には「両脇に」とあるので、「11×2=22本」が正解です。

この文章題は、「じっくりと両脇に植えてある木をイメージしつつ、この問題はどんなことを問うているのかをモレなく矛盾なく考える」ことができれば、すくなくとも、「10本」という答えは、出てこないはずなのです。
とはいえ、「ただ計算の処理を速く解く」ことだけをしてきた子どもには、ありがちな落とし穴ともいえます。

・【3ケタ÷2ケタの割り算】
「割られる数の中に割る数がいくつあるか」を、「おおよそで考える力」が必要です。

たとえば、「542÷38」という割り算を解くとき、「38」を「30」あるいは「40」と、おおよそで見なす必要があります。
この「おおよそのメドをつけるセンス」を私は「数感」と呼んでいて、いろいろな思考力問題でも必要とされる力ですが、「3ケタ÷2ケタ」だけでいえば、「慣れ」によって身に付けることができます。

・【分数】
算数・数学が苦手なまま大人になってしまった人の大半は、分数で失敗しているといっても過言ではありません。
食塩水問題を好きだったと言い切れる大人がほぼ皆無であるように、「割合概念は、人の脳にとって、とらえづらい課題だ」ということが根本にあります。これだけで一冊書けるくらいですが、少なくとも分数には「実際の量(4分の3リットルの水)」と「割合(バケツ4分の3の水)」の2つがあることだけは押さえておきたいところです。

・【図形】
「図形」の問題のキモは、「必要な線」を選択的に見たり、見えない「補助線」をイメージする力です。
子どもが「雑音の中からでも、お母さんの声を聞き取ることができる」ように、図形問題が得意な子どもは、たくさんある「線」の中から、自分に「必要な線」だけを見て取ることができます。また、必要な補助線(そこにない線)が光って見えるのです。

その力をどう伸ばすかは、『小3までに育てたい算数脳』(高濱正伸/健康ジャーナル社)に詳しく書きましたが、「図形パズルなどを『好き』に育てること」や「外遊びや立体を使った遊びに熱中すること」が大切です。

飛んで、跳ねて、走り回る「外遊び」こそが、算数の最高の教材

「算数力」を伸ばすには、なんといっても「遊び」が効果的です。
この力は、「計算ドリル」などをただ積み重ねても、身に付くものではありません。「ヘトヘトになるまで遊び尽くす体験」の中で、知性は育まれていきます。

「遊び」といっても、子どもが「強制感」を覚えたり、大人の顔色を見ながら「嫌々やる遊び」では意味がありません。子どもが「自分から」夢中になれる時間を持たせてあげるようにしましょう。

「遊び」の種類は、「ひとつの例外」を除いて、どのようなものでも効果があります。

教え子のひとりに、「消しゴムのカスをひたすら集める」のが好きな子がいました。大人から見たら「何の意味があるのだろう? やめさせたほうがいいのではないか?」と首をかしげたくなりますが、子どもにとっては、「夢中になって楽しめる時間」です。

親は、子どもが夢中になって遊んでいることを、頭ごなしに否定してはいけません。

「ひとつの例外」とは、「コンピュータゲーム」のことです

ゲームも、「夢中になってのめり込める遊び」であることに変わりませんが、コンピュータゲームでは、脳のほんの一部にしか「刺激」を与えることができません。

算数力、とくに「見える力(イメージ力)」を育てるのは、実体験です、体感覚です。
「五感のすべてを使って遊び尽くした体験」だけが、「現実には見えない部分まで、ありありと想像できる力となる」
のです。

そのなかでも、いちばんいいのが「外遊び」だと私は考えています。

公園で「かくれんぼ」や「缶蹴り」をしているとき、子どもたちは「空間認識力」を使っています。
公園全体を3次元的にイメージし、「○○ちゃんが、あの木の裏に隠れているのかもしれない」「××くんは、あっちの方向から走ってくるかもしれない」と想像する。

こうした経験によって、「五感で空間をとらえる」ことができるようになっていくのです。

「木登り」は、縦方向の動きが入るので、「どの枝に、どのように手足をかけるか」を考えながら登る過程で、体全体で立体を把握することができます。

「花まる学習会」のサマースクールでは、子どもたちに魚を捕らせることがあります。子どもたちは「どうすれば、たくさん魚が捕れるか」を自分たちで考えはじめ、遊びながら「試行錯誤力」や「発見力」を鍛えていくのです。

算数ができる子どもに育てようとすると、ひたすら「計算ドリルをたくさん解いたほうがいいのではないか」と思いがちです。
でも実は、座学よりも、飛んで、跳ねて、走り回る「外遊び」こそが、「算数の最高の授業」になるのです。

遊びつくすことで知性が育まれる、というのは頼もしい言葉ですね。熱中が集中に、空想が想像なっていくといったところでしょうか。

 

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