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子供の仕事は遊びである!17 ~思いやりの心を育む・育てたいのは人間力

大人になっても必要な人間力はこんなところから培われて行くんでしょうね。

(3)思いやりの心を育む

① 思いやりを受ける体験が思いやりの芽を育む

子どもの中に思いやりの心を育てるためには、子どもを取り巻く環境が大切である。最も身近にいる家族、そして保育者が思いやりのある人間であることが最高の環境なのだ。
そして他の人から思いやりを受けたという経験があればあるほど、社会のルールをそれほど厳しく教えなくとも、子どもは自然に守ることができるようになるものである。
これは、ある保育所での思いやりの芽が育まれたひとこまである。
お誕生日に、その子が一番してほしいと願っていることをプレゼントすることになった。プレゼントは、子どもたちの話し合いにより決まる。泣き虫のケンちゃんには、戦いごっこで勝たせてあげることをプレゼントすることにした。今まで勝ったことは一度もなく、負けてばかりでかわいそうだと子どもたちは思っていた。
いつもどおりケンちゃんも入り、新聞紙で作った剣でのチャンバラ遊びが始まった。やっぱりケンちゃんは大負けして泣きべそをかき始めた。その時だ。リーダー格の子が「プレゼント、プレゼント。」
と、少し大きな声でみんなに伝えたのである。子どもたちは伝わった順にあわてて、ばたばたと倒れて死んだまねをし始めた。最後にはケンちゃんをのぞいて全員が倒れてしまった。ケンちゃんは、しばらくぽかんとしていたが、その後にこっと笑った。友達は起き上がりながら、「誕生日、おめでとう。」と歌った。世界にたった一つしかないあったかいあったかいプレゼント。遊び5 [1]

この遊びの中で子どもたちは、たくさんのことを無意識のうちに身に付けている。
他の人を思いやること、みんなで決めたルールを友達が幸せになるために守ること、勝ちたい自分を制御すること、そしてやさしい友達に感謝する心だ。
しかし、保育者が、ありきたりなプレゼントではなく、子どもたちが心から喜び、幸せな気持ちになれるようなプレゼントを発想し、子どもたちに働きかけなければ、この遊びは生まれてこなかった。そして、いつも負けて泣いてばかりいたケンちゃんへの思いやりの心が、子どもたちの中に育っていたからこそ生まれたものだった。保育者自身が、「また、めそめそして…。」と受け止めたのでは、子どもたちの中のやさしさも育たない。
子どもにとって保育者は憧れの的である。保育者が思いやりのある言葉がけを常に行っていれば、子どもたちの心の中にも自然に思いやりの心は育まれてくるのである。

②喧嘩しても仲直りできる子どもに

自己中心的で、自分の思いを上手に言葉で表現できない子どもは、日常的にトラブルを起こしがちだが、大切なことは、「喧嘩しても仲直りができるか」ということである。子ども相互の間でトラブルを解決していく体験の積み重ねが、思いやりの芽を育むのである。
次に紹介するのは、相手の思いを察した温かな一言でトラブルが解決した事例である。
数人の子どもが机を縦につなげて「トンネルごっこ」をしていた。そこに、二人の子どもがきて、机をずらしたり、通せんぼをしたりしていじわるを始めた。当然、喧嘩になった。
「サトちゃん、何するの?」
と怒る友達に、サトちゃんは何も言わず黙っている。仕方なく机をもとに戻して、また「トンネルごっこ」を始める。しかし、サトちゃんだけが、また机をずらしていじわるをする。
「サトちゃんやめて!」という声
が大きくなる。そんな様子を保育者は近くで見守っている。しばらくして、アカネが、「サトちゃんもいっしょに遊びたいんじゃない?」と言うが、サトちゃんは黙ったままである。行動を起こしたアカネを支援しなければと、ここは保育者の出番である。「ねえ、サトちゃん、一緒に遊んだらいいんじゃない?」それでも、サトちゃんは黙ったままである。保育者は、一緒にいじわるをしたワタルにも「一緒に遊んだら?」と語りかける。ワタルは、「ぼく、一緒に遊びたい!」と思いを告げる。それでも黙っているサトちゃんに、ワタルは、「サトちゃん、一緒に遊ぼう!」と今度は誘いの言葉をかける。そばにいた数人も誘いの言葉をかける。すると、サトちゃんはうつむきながら「うん。」とうなずいた。

この保育所には、喧嘩になるとすぐに保育者に助けを求めたり、保育者に告げ口をしたりする子どもはいない。また、いじわるする子どもを一方的に叱る保育者ももちろんいない。子どもの間のトラブル発生は自然なことであり、思いやりなど社会性が育つ「学び」の場であるととらえ、子ども同士での解決の場面を尊重している。保育者は、「全ての子どもには思いやりの種があり、もう芽を出している。そして、その芽を育てていくのが保育者の仕事である。」と考えているのである。今、小中学校の子どもは、少子化、集団遊びの消失等の影響もあり、人間関係でのトラブルを解決してきた経験が少なく、「トラブルを解決していく力」が低い。また、トラブルを起こさないように、または起こっても、そこから逃避する子どもも多くいる。幼児期から小学校低学年の時に友達とたくさん遊び、遊びを通して、人間関係のトラブルを解決していく力と、良好な人間関係の築き方を覚えていくことが大切である。

まだ続きます。

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