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不登校と「自信の水」~コンプリメントトレーニング

子供が「学校に行きたくない」と言い出したらどうしますか?
正直、学校に行かなくてもいろんなところに学びはあるし学校でなくても人は一生成長し続けるものだし、学校がすべてではないという人も増えてきています。
でも、学校に行かない選択を選択するには親も子供もかなりの自信と確信が必要になります。
また、学校に戻りたいと子供が思った場合でも、一度不登校になってしまった子供にとって再登校するのはかなりの自信が必要になります。
学校に行っても行かなくても、大切なのは、自信をもって自発的に「こうしたい」という心を再生させること。

これから紹介するのは、コンプリメントという方法で自信をつけさせ、不登校を解決しようと尽力されている 森田直樹さんへのインタビューですが、子供の活力再生していくのに、親ができることはなんなのかがよくわかる内容になっています。

 

 

https://edupedia.jp/article/58258ae201e1368209bd1d0b
より引用します。

不登校と「自信の水」
——森田先生はどのようなきかっけで、不登校の解決に尽力されるようになったのでしょうか?

私はもともと小学校の教員で、沢山の不登校の子どもたちを見てきました。私は自分のやり方で多くの子の不登校を治すことができました。だから、その方法を実践的に研究し、子どもたちが学校に戻れるような新しい解決方法を考えようとしたのです。
そして、管理職だった53歳のとき退職して、それからは短期大学で教えつつ、大学院で心理学を学びました。しかし、そこは臨床心理士を育てる専門の大学院だったのですが、研究をしていても不登校を治すことは難しいと気付きました。

——実践的な研究ではなかったということでしょうか?

そうです。私は不登校を治すには「自信」が必要だと考えています。だから、自分で実際にフリースクール形態の施設を作り、子どもに自信をつけて不登校を治そうとしました。すると、近隣の不登校の子どもたちが30人も40人もやって来るようになって、多くの子たちは自信をつけてあげることによって再登校しました。しかし、一旦再登校しても、家庭に戻るとまた元に戻ってしまうのです。「これは、何故だろう?」と疑問に思いました。

その時、子どもの心の中には「自信の水」が入ったコップがあって、その中に水を入れてあげるのは家庭じゃないといけない、と分かったのです。私の言っている「コンプリメント」とは、子どもの気付いていない「よさ」(リソース=資源)を、親の愛情(私は嬉しい)と承認(あなたには力がある)の言葉で気付かせることです。親が子どもに自信をつけられる家庭環境を作ってあげることが出来れば、不登校の問題は解決すると考えています。子育てする親の力を育てないで、私が直接子どもにコンプリメントするのは間違っていたと気付いたんです。また、心のコップが育つには、子どもが自分で躓き、自分の力で壁を乗り越える経験がないといけません。不登校の子のお母さんには過干渉な人も多いですが、そうすると心のコップが大きく育たないのです。

——親が子どもの良いところを見つけるのが難しい場合はどうすればいいですか?

良いところを見つけるのが難しいというのは、私だってそうです。学校に行っておらず、家で電子ゲームばかりしている子を褒めろと言われても難しいと思います。ではどうすれば良いのかというと、「したこと・できたこと」を見つけるのがコンプリメントの初期となります。

例えば「朝起きる力がある」などですね。ただし、それを認めたとしても、子どもは最初反発します。しかし、悪い反応であっても、反応があるのは子どもが親の言葉を聞いている証拠なのです。こうした働きかけとインプットを親が続けていくと、子どもが「親は本気で言っているのかもしれない」「俺に愛情をかけてくれているのかもしれない」と感じ始める時が来ます。心を開く時が来るのです。そこまで根気強く続ける必要があります。

先ほども言ったように、私は最初に「子どもがしたこと・できたことを言いなさい」とお母さんに伝えます。しかし、あまりにもシンプルすぎるので「本当に効果があるの?」と信じてくれない方もいます。でも、私は10年間コンプリメントを続け、効果を出しています。元地方短大の教授でスクールカウンセラーという肩書きの私の言葉を信じてもらうのは普通なら難しいですが、目の前の子どもの姿を見て効果があると信じてもらえます。もう一つは私の書いた本のamazonレビューの口コミです。

——コンプリメントが失敗してしまう要因は、長く続けられないことですか?

続けられない親御さんもいらっしゃいます。小学生の場合は60日ほどで再登校に戻れるケースが多いのですが、子どもの成長にはもっと長い月日がかかります。再登校に安心してお母さんが元の関わり方に戻ってしまい、子どもは自信の水が不足して再び不登校になってしまうケースもあります。そういう場合でも、多くの場合お母さんは再トレーニングをします。何故なら、一度コンプリメントトレーニングをして、お子さんが変化したことを知っているからです。

他にはこんな例もあります。あるお母さんがコンプリメントトレーニングを実行しようとしたのですが、自分自身がコンプリメントを受けていない、つまり認められた経験が少ないために声が出ませんでした。そういう人たちは、コンプリメントの言葉を声に出すと、自分の中の幼い自分が頭の中で「ずるいずるい」って言うのです。自分もそんなふうに褒めてもらいたかった、と。しかし、コンプリメントを子どもにかけていく中で、親の中に残っていた幼い部分が成長していきます。親も成長するのです。

子育ては、自分がやってもらってきたことを同じようにしてしまう傾向があります。しかし、子育てには様々な方法があります。子育てとコンプリメントトレーニングの共通点は、子どもの心を大きく育て、そこに自信の水を注いであげることです。子育ては今からでも出来るのです。それもたった2つの言葉で。「お母さんうれしい」「あなたには〇〇の力がある」の2つです。

——私自身の小学校での経験なのですが、道徳の時間に子ども同士で○○さんのいいところを見つけよう、という活動がありました。これはコンプリメントとして有効なのでしょうか?

そのような活動は日本中の学校で実践されていると思いますが、私の言うコンプリメントは、 親や先生からの愛情と承認のことですので少し異なります。子ども同士での認め合いは良いことですが、子どもを認めることは親がしないといけません。つまり、家庭環境を作り変えない限り、根本的な解決にはならないと思います。

学校の先生が出来ること

——学校現場で先生ができることは何でしょうか?

「親の子育てによって子どもを育てる」ことです。子育ては親の仕事なので、先生はそれをサポートするのです。

——先生が親に働きかけるということでしょうか?

そうです。具体的に言うと、先生がお母さんに連絡するときに、お母さんが気づいていない子どもの良いところを必ず教えて差し上げます。例えば、その子が学校に来ていたのだったら、学校で見つけた良いところをこんな風に伝えてみて下さい。

『お母さん、あなたのお子さんにはこんな良いところがありますよ。お母さんの口からその良いところを、お子さんに言ってあげてください。その時に「お母さんうれしい」とか「こんな力がある」という言葉をつけたら、お子さんの心の中にすっと入りますよ。』

そして、登校している時には先生からもその良いところを子どもに言います。これだと、コンプリメントが2回できるわけです。先生はやはり子どもにとって大きな存在なので、その先生から「君にはこういう力があるじゃないか」と認められると、心に響くのです。教育というのはどうしても悪いところを見つけて直そうとするのが主になりますが、このコンプリメントは、子どもの良さを見つけて気づかせてあげようとします。つまり、良いところを持っているんだけど、それをその子が気づいていないから、先生が見つけて伝えてあげよう、というやり方です。それを、教員の仕事に組み込んでいただきたい。

——登校できない子にはどう対応するのですか?

不登校の子に家庭訪問をしても、大体子どもは会ってくれません。しかし、その時に「学校に来てほしい」なんて一切言わなくていい。「あなたの顔を見られて先生うれしい」「あなたの声が聞けて先生うれしい」とだけ言って帰れば良いのです。そうして徐々にその子との信頼関係を作っていくことが大事。

あるいはもっと具体的に言うと、教室の後ろの方に絵を描いて貼ったりしますよね。あそこにも、学校に来ていない子のコーナーを作っておかなければいけないんです。来ないからと排除していたらだめです。だから、家庭訪問した時に「あなたの絵の場所はここだよ」「あなたの机の場所は、教室に入ってすぐのところにあるから、来たら座れるから、いつでもおいで」と、いつ学校に来ても大丈夫な状態だってことを伝えてあげる。できればカメラでその光景を撮って実際に見せてあげられるといいですね。

そういう実践的なことをしないと、子どもだって登校できないのです。久しぶりに学校に行っても机の中には配られたプリントが沢山放り込まれている。そんな状況だったら学校には来られないですよね。机はいつもきれいで、みんな拭いてくれて、居場所がここにあるって写真で見せてもらえれば、(あぁ、俺は忘れられていないんだ)って、子どもにも伝わります。やっぱりそこに自分の居場所があるのが大事ですね。

——いじめが原因で不登校になってしまうこともあると思います。そのような子への支援については、どう行っていますか?

いじめられる子は、〝先の見通しがたたない″〝人間関係が苦手″〝相手の気持ちを考えずに言ってしまう″といった何らかの性格特性を持っていることが多いと言われます。今、そういう子は十把一絡げに「発達障害」と言われています。でも、その子が本当に発達障害なのか、それとも自信の水不足でそうなっているのかと言うと、私は90%ぐらいは発達障害では無いのではないかと思っています。多くの子はトレーニングによってある程度、社会適応が出来るはずです。

だから、不登校というものを十把一絡げで言うのはよくないと思います。この中には、先の見通しが立たなくて学校に不安を抱いている子どももいる。対人関係が苦手で学校に行けない子もいる。それから単に自信の水不足な子もいる。様々なタイプがいるわけです。私はその子たちに応じた支援をしています。

新刊について

——森田先生の新刊『コンプリメントで不登校は治り、子育ての悩みは解決する』には57個ものケースが掲載されているのですね。

前著『不登校は1日3分の声かけで99%解決する』では、本当はもっとたくさんの具体例を出したかったのですが、ページ数に限りがありました。でも、今度の本はほとんど全編が実例のケース主義です。一つ一つの例の終わりに、親からのコメントという形で、他の色々なケースも添えてあります。不登校の子の親が求めているものは具体的なケースであり、論ではありません。私は親のニーズに応えたいのです。この本は、コンプリメントトレーニングを実行してくださった親御さんと協力して作り上げた本です。

——著書『不登校は1日3分の声かけで99%解決する』が理論編で、新刊が応用・実践例でという位置づけでしょうか?

そうですね。中には生々しい事例もありますが、本当のことしか書いていません。きれいごとではないです。きれいごとだけだったらこんなにも事例を集められませんから。私がやっているの不登校を治す実証主義の教育です。

おわりに

最後に少し大きな話になってしまいますが、子どもにいろいろな種を蒔いてみても、どれが発芽するかなど分かりません。すぐ出てくる種もあれば、何年か経った後に芽が出る種もあるのです。子どもにしても、勉強だけ出来たところで将来どうしたらいいかなんて分からないので、こちらが色々教えていかなければなりません。その時に思うのは、やっぱり究極の目標は、人の役に立つ仕事をするということ。その為に私は命を頂いていると思っているから、そういうことを教えていかないと、本当の教育なんてできないと思いますね。

私には夢があります。それは、先生になる人にコンプリメントトレーニングを教えることです。私が社会のために尽くせるのは何かと考えた時に、これしかないと思っています。自信度は120パーセントです。

どんな職業でも、人のために役立っていると感じていれば社会を変えていけます。今こうしてインタビューしていることがここで終わってしまうのではなく、この思いを全国の先生が子どもたちに伝えてくれれば、「自分は人のために役立っている」という意識を育てていくことができます。政治の力では社会を変えられなくとも、子どもたちが人のために役立とうとして社会に旅立つようになれば、社会は変わると信じています。

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