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野外保育の可能性9 ~まるたんぼう1~9箇所の森がフィールド

次は鳥取の まるたんぼう です。前半は活動内容です。羨ましいほどの自然の中で活動しています。

山村に響く幼児達の歓声 -森の幼稚園「まるたんぼう」(鳥取県智頭町)- [1]

森の中から小さい子供たちの歓声が聞こえてくる。10人はいるだろうか。林の中に放置されている杉の丸太をシーソーにして遊んでいるのだ。
93%が山林の、人口8000人弱の山村といえば、通常は高齢化率が高く、人の姿、とりわけ子供の声など聞こえないのが一般的だ。しかし、ここ智頭町(ちづちょう)は違う。晴れの日も、雨の日も、雪の日も、平日は毎日、町のどこかの森で子供達の楽しそうな声が響いている。それは「森の幼稚園」があるからだ。

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何でも遊具になる
鳥取県智頭町は、鳥取県の南東部に位置し、鳥取藩の宿場町「智頭宿」で知られる。面積の93%を山林が占め、ほとんどが杉で、かつては十大林業地として栄えた。鳥取砂丘を育くむ千代川の源流の町だ。

「森の幼稚園」とは、1954年にデンマークで一人の母親、エラ・フラタウさんによって始められた自然の中での野外保育だ。ドイツでは1993年に始まり各地に急速に広がっていった。特徴は、森や自然の中での五感を使った自然体験にある。日本でも1985年から屋外で保育をしている「青空自主保育なかよし会」(神奈川県鎌倉)や、「キープ森のようちえん」(山梨県北杜市)、「ねっこぼっこ」(愛知県春日井市)などがある。2005年からは「森のようちえん全国交流フォーラム」も開かれている。

私が訪ねた智頭町の森の幼稚園「まるたんぼう」は昨年(2009年)にスタートした。始めたのは西村早栄子さん。鳥取県の職員であるが、育児休業中に自分の子供を森の中で育てたいと活動を始めた。2年目の今年は12人の3歳~5歳の子供たちが町内外から通っている。保育士さんは男女2名という体制。
町内から5人、鳥取市内から7人。町内は毎日17:00まで預かる。

◆ 町内9か所の森がフィールド

朝9時に町役場前に集合し、その日のフィールドに移動する。フィールドは町内に9か所。松の採圃(穂?)場、芦津(あしず)の森林セラピーロード、針葉樹(杉)林、広葉樹林、キャンプ場など、一口に森と言ってもバラエティに富んでいる。園舎は特にない。
今日のフィールドはキャンプ場近くの林と川だ。服装は帽子と長靴はマストアイテム。リックサックには着替え、お弁当、水筒、おやつが入っている。皆自分で背負う。金曜は「保護者アシスタントの日」で、一人か二人のお父さんお母さんが参加できる日だ。お父さんの姿も3人見える。

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「朝の会」歌で始まる

幼稚園は歌に始まり、続いてリュックサックをしょって林の中に入っていく。リュックに付いた熊鈴がチリン、チリンと鳴って子供達の居場所を知らせてくれる。道があるわけではない。林の中を自由に歩き回り、林に放置されている丸太をシーソーにして遊んだり、発見したヘビを保育士さんに触らせてもらったり、鹿の角を拾ったり。虫の図鑑を持ってきて、熱心に眺めていたり、色々なものをコレクションしたり、それこそ十人十色の自然体験をしている。

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ヘビ(じむぐり)に触ってみた
渓流は、岩魚もいるという澄んだ流れの速い川で、5月は未だ水温も低い。それでもどんどん川の中に入っていく子供もあれば、水にぬれないように岩を渡っている子供もある。せせらぎの音が心地よい。
「今年4月に入園した3歳児も先輩を見習って、2か月で歩き方が変わってくるんですよ。足のゆびをしっかり使って、岩に吸いつくように歩くようになるんです。」とは保育士の山中さん。

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林の次は渓流
ここでは親の口癖、「危ない」「汚い」「ダメ」「早く」は禁止ワードだ。子供同士のけんかも大人は仲裁しない。「危ない」「ダメ」と大人が言わなくても子供達は本能的に危険を察知する。危険だと感じるところには近寄らないし、基本的に危険なことはしない。ケガや傷も一年間活動を続けて、集合場所の駐車場でケガをした子供一人、調理の日に包丁で指を切った子供一人の2回だけだという。

◆ 地産地消弁当。弁当箱も地元の杉で手作り

林と川で2時間以上遊び、スタート地点のキャンプ場の広場に戻って、ようやくお昼ご飯。一番お昼が待ち遠しかったのは私かもしれない。3時間近く外を歩いているだけなのに疲れた。子供達は走り回ったり、水遊びをしているからもっと疲れているはずなのに、2カ月余りですっかり体型も見違えてきたという。金曜はお弁当の日で、お弁当箱は親子で手作りした地元智頭産の杉材で作った”わっぱ”だ。本日初公開だそうだ。お弁当箱の中には地域の食材を中心にしたおかずが色々。鹿の燻製には驚いた。

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大山地鶏の酒蒸し。ご飯にはぜんまいの味噌佃煮
昼食は月曜がおにぎり弁当で、木曜は調理の日だ。子供はお米と野菜を一種類家から持ってくる。ご飯とお味噌汁だけのシンプルな昼食。野菜を切ることも子供たちがする。

また、月曜は「ものづくり」の日で、地域のお年寄りから藍染のたたき染めとか、木工などを習う。「まるたんぼう畑」もあり、野菜も育てている。
なんと充実したプログラムだろう。園舎が無くても、遊具が無くてもこれほど多彩でオリジナルな活動を子供達は体験できるのだ。

代表の方のお話に続きます。

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