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自主保育とは?7~「森のようちえん」の第一人者

森のようちえんを調べると、その第一人者を見つけました。出自はやはり自主保育のようですが、いち早く自然の中での子育てに可能性を見出し、特化したようです。現在は「森のようちえん全国ネットワーク」理事長を努めておられ、そのノウハウの普及に努めておられます。

わが街の環境マイスター 自然を大切にする人を育てる幼児教育 [1]

信州型自然保育認定園「野あそび保育みっけ」園長

内田さんは日本における「森のようちえん」の第一人者。大規模な園舎を持たず、1日の大半を自然の中で過ごす幼児教育を30年以上前から実践してきた。もりようちえん1 [2]
信州型自然保育認定園「野あそび保育みっけ」があるのは、標高1000mほどの山が市街地を取り囲む長野県飯田市。園舎にしている民家から車を走らせれば、どの方向へ向かっても30分もあれば山にぶつかる。

「子どもたちと森に入るときに動物を見かけることはめったにありませんが、糞や足跡などその痕跡はよく見つけます。飯田市は豊かな自然が残る地域ですが、幼児期には自然に触れる機会や環境はありません。都心に住む人たちのほうがその機会が多いくらいではないでしょうか」

「野あそび保育みっけ」は、もともとは地域のお母さんたちの自主保育団体だった。安定して運営できるよう内田さんが引き継ぎ、2013年から現在のような「森のようちえん」となった。

「森のようちえん」は、1950年代にヨーロッパで始まった自然の中でおこなう幼児教育。「野あそび保育みっけ」へ通う子どもたちも多くの時間を森や林で過ごす。服装は、長袖長ズボンに長靴。基本的に禁止事項はなく気のおもむくままに遊ぶため、全身泥だらけになっている子もいる。

内田さんは1983年に長野県飯綱高原に日本で初めての「森のようちえん」を設立した。もともとは写真家志望だったが、学生時代に被写体について学ぶため幼稚園で働いた経験がきっかけとなり、保育者を目指した。もりようちえん2 [3]

「東京・日野市の幼児教室で保育のサポートをおこなっていたのですが、そこがいまの『森のようちえん』に近いスタイルの幼児教育をしていたんです。多摩の丘陵地帯に毎日散歩に出掛けていました。自然の中には季節の移り変わりがありますから、同じ場所を通っても毎日が新しい発見にあふれています。子どもたちのキラキラする顔をみて、こんな環境をもっとつくっていきたいと思いました」

幼児教育の面白さに気づいた内田さんは大学でも保育に役立つ科目を履修し、知識を深めていった。実習では一般的な幼稚園に行っていたこともあるそうだが、そこの教育には魅力を感じなかった。子どもを徹底した管理のもとに置くスタイルでは、自主性が育ちにくいと思ったのだという。

大学卒業後は友人の実家が経営する幼稚園の勤務を経て、自分の理想とする幼稚園の設立へ向けて動いた。コンセプトは「自然×生活×子ども」。ヨーロッパのスタイルを真似するのではなく、地域資源や環境を活かした幼児教育、いまの日本の子どもたちが置かれている状況を踏まえて自然の摂理・秩序を身体で感じ、自然の中での生活を軸にした教育を目指した。

「大きくなってから『自然は大切だ』と頭を使って学習するのと、幼児のうちに『自然は居心地がよくて楽しい』と体感するのとでは、自然に対する感覚が異なります。後者は無意識のうちにも自然を大切にする選択をするようになります」

理屈ではなく感覚的に自然を大切に思う子どもを育てることで、数十年後には環境を大事にする大人が増える。自然と共存するためのサイクルが育つ。

内田さんはコンセプトに沿った幼稚園を設立するために、各地を調査した。園児が集まるだけの人口があって、なおかつ自然が厳しすぎず四季の移ろいを感じられる場所――見つけ出した地域が長野県の飯綱高原だった。東京で生まれ育った内田さんには縁もゆかりもない土地だ。

「当時はいまよりも地方が元気でした。自治体が若い人を呼び込むような活動をしている時代ではなかったので、IターンやUターン、移住という言葉もない。町の人からは大変珍しがられました。『東京で悪さでもして、逃げてきたのか』といわれたこともありましたよ」

できるだけ自然に近い環境をつくろうと、園舎は内田さんの手作り。信州に多いカラマツは建材には向かないといわれたが、当時利用価値が低かったので、あえて使うことにした。

開園してしばらくは「森のようちえん」というものがほとんど知られていなかったが、5年ほどで賛同者が増えてきた。2005年に認可幼稚園になると、内田さんは運営を妻に任せて、その後、拠点を飯田市の「野あそび保育みっけ」に移した。
もりようちえん3 [4]

現在、内田さんは「森のようちえん全国ネットワーク」連盟の理事長を務めている。この10年で「森のようちえん」は増えてきたが、それぞれが手探りで運営しており、保育や運営のノウハウの共有がなされていなかった。ネットワークでは蓄積したノウハウを理論化し、これから開園したいと考えている人にも情報を提供している。毎年定期的に「森のようちえん全国交流フォーラム」を開催し(2015年よりセブン‐イレブン記念財団が支援している)、「森のようちえん」の理解を深める普及啓発をおこなっている。

「いま私が進めているのは、認定こども園での『森のようちえん』の運営です。認定こども園になれば、保育時間が長くなり共働き世帯の子どもたちも受け入れられる。子どもを自然の中で育てたいと考える多くの保護者の手助けができます」

自主保育の流れが生み出した保育の可能性だと思います。森のようちえんとすることで、保護者は自然と工夫思考へと導かれ、「ムラ」=共同体の復活へと導かれているように感じます。

 

 

 

 

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