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企業が次々と保育事業に参入していく2~資生堂の場合

前回は日本生命の保育事業参入を紹介しましたが、資生堂もやるそうです。自社の事業所だけでなく、企業内保育所運営を引き受けると。つまり、事業として十分目処が立つということですね。

資生堂が保育園事業に参入する必然 [1] 日経ニュースより

  資生堂が保育園事業に参入する。保育園運営を手がけるJPホールディングスと2017年1月に合弁会社を設立。主に、企業内に設置する企業内保育所の運営を受託するとともに、開設したい企業へのコンサルティングも行う。合弁会社は、資生堂51%、JPホールディングス49%で、2017年12月期から資生堂の連結決算対象となる。
資生堂とJPホールディングスは合弁会社を設立し、保育園事業に参入する。

2017年秋に第1号施設となる「カンガルーム掛川」を資生堂の掛川工場(静岡県)内に設置する。「対象は0歳児から小学校入学前の乳幼児で、50人程度受け入れられるようにしたい」(資生堂の未来創造局 小林貞代局長)。

セリオ2 [2] 合弁会社では、資生堂が持つ企業とのコネクションや、化粧品開発で養った研究知見を生かす。すでに資生堂で持ち合わせる心理学や脳科学の研究財産以外に、今後は同志社大学の赤ちゃん学研究センターとも協力し、ノウハウを蓄積する。それらを保育園事業に生かすことで、新しい保育園の形の模索も可能になってくるという。

合弁会社は、保育園を所有するのではなく、設置企業から運営を受託する。基本的には認可外保育所としての運営となる。一般的に、認可保育園と認可外保育園では、認可外保育園の方は助成金がないことから保育料は高くなる。資生堂が参入する保育園事業は、内閣府の「企業主導型保育事業」への申請を行う形で進める考え。認可が下りれば助成を受けられるため、「(両親の負担は)認可保育園と同等のレベルにまで下げられる」(小林氏)という。

資生堂は現在、本社のある東京都中央区で、運営をニチイ学館が請け負う「カンガルーム汐留」を開設している。資生堂従業員の子供以外にも周辺企業の子供も受け入れる施設で、定員は34人。今後、カンガルーム汐留の運営を合弁会社へ移すかどうかは未定だという。

「もう一歩踏み込んでやってみよう」

11月1日に都内で行われた記者会見で、資生堂の魚谷雅彦社長は、待機児童増加、それを引き起こしている保育園不足について強い懸念を示すとともに、「もう一歩、企業として踏み出す必要があるのではないかと感じていた」と資生堂が保育園事業に取り組む意義を明らかにした。
資生堂が保育園事業に参入する意義を語る魚谷社長

「企業の経営者と話していると、女性の社内におけるキャリアパス設計のみならず、チャレンジさせたくても保育園などの環境が整わない、という課題を聞くことが増えた。女性活躍を推進している企業として、我々が相談役になり、手を動かすことで、事態を少しでも好転させられるのではないかと思った」(魚谷社長)と参入の理由を語る。

今年3月に厚生労働省が発表した資料によれば、2015年の4月時点での待機児童数は2万3167人。6年連続2万人を超えている状況だ。

資生堂は化粧品の売り上げが大半を占めるが、2014年4月に就任した魚谷社長は、兼ねて「資生堂は化粧品の会社ではない。飽くまで、女性が美しくいられるための生活文化の創造をミッションとする」と言い続けてきた。今回の記者会見でも、改めてそのミッションを提示するとともに、ミッションを遂行するためには、「社内の環境整備」「経営者とともにムーブメントを作ること」「社会へのコミットメント」が必要であることを強調した。

特に、社内の環境整備では、子供を持つ美容部員の働き方を見直したことで昨年大きな注目を浴びたことにも触れた。資生堂では、2014年4月から、子供を持つ美容部員に対して、できる範囲で土日出勤や定時出勤を求めた。子供を持たない従業員と、持つ従業員の間に生まれた経験値の差や不平等感を見直すためだった。「このときに改めて、もっと積極的に働く女性をサポートするんだ、ということを資生堂自身が発信すべきと思った」と魚谷社長は語った。

女性に寄り添う企業であることを標榜している資生堂として、働く女性の喫緊の問題である保育園不足は、取り組むべき必然性があったともいえるだろう。

まずは社会への価値提供の確立

今回の保育園事業立ち上げのきっかけとなったのが、2015年4月に立ち上げた会社の未来を考える専門部署「未来創造局」だ。2015年6~9月に全国6300名の社員に、今の資生堂の課題や、資生堂でやってみたいことをヒアリングした「未来創造マラソン」の結果、保育園の事業化検討を開始した。今回の保育園開設に当たっては、昨年から1年かけて70カ所の保育園や研究施設、保育士へのヒアリングを行ったという。

魚谷社長は、当該事業に関する売り上げ目標等に関しては、具体的な言及を避けた。「社会への価値創造なくして、企業価値を向上することはできない。当然CSRに留めるつもりはないし、適切な収入を得られるようにするつもりだが、まずは子供の成長にかかわる極めて重要なものとして、社会に価値を提供できるかどうかを考えていきたい」とした。

JPホールディングスというプロの手を借りるといえど、課題は少なくない。そもそも企業内保育所に関しては、働く母親側からはストレスと受け止められるケースもある。保育園不足に陥っているのは都心で、都心で働く女性が、通勤ラッシュの中、子供を会社にまで連れて行くこと自体がストレスになるためだ。自宅の近くに預けられることがベストで、企業内に保育所があることが必ずしも母親にとって良策になるとは限らない。資生堂は、まずは郊外の研究所施設や工場をメインに開設していくというが、それでは保育所不足に悩んでいる都心部に住む母親の“痛み”を完全に取り除くことはできない。

もっとも資生堂もそれは理解した上だ。都心では保育園を新たに開設するスペースが少ないため、まずは企業内の遊休スペースなどを利活用して取り組んでいくという。「まずは量を増やすことから始めたい。企業に対する働きかけによりムーブメントを作っていく中で、変化や前進が生まれてくるはず」(小林氏)と、まずは自分たちの手を動かして事業を推進することを決めた格好だ。

「ミッション」と仰っています。資生堂という企業は女性を助けるために有ると。経営者は、常に従業員を前に向けることを考えているのですね。

 

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