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「子供扱い」は子供たちの可能性に蓋をしてしまう。

さまざまな保育士さんの子供への接し方を調べていたら、「伝説の保育士 のりこ先生の魔法のことば」という本に出会いました。

典子先生は、子供を甘やかしたり、子供だからといって大目に見たりせず、一人前扱いすることにとって子供が本来持っている可能性を引きだす・・・そんな保育スタイルをもった方です。

「子供扱い」とよく言いますが、できないことを前提にした上から目線では、本来子供が持っている「できる力」削いでしまっているのかも知れません。

今回は、この本の1節「できるのが当たり前と言えば、子供はできる」から紹介します。

以下「伝説の保育士 のりこ先生の魔法のことば」(President Inc, 2016 著者: 山田 清機)より引用します。
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親にとって子供の躾は、最も悩ましい問題のひとつでしょう。
典子先生は子供を躾けるとき、決して大声を出したり、怒ったりはしなかったそうです。それでも典子先生に躾けられた子供たちは、自然に美しい所作を身につけていったというのですが、どうやらそこには、ある秘密があったようです。その秘密をひとことで言えば、逆転の発想です。

たとえば、典子先生は給食を出す食器にプラスティックやアルミ製のものは一切使わず、ガラス製や陶器のものだけを使いました。なぜでしょうか。コビーアンドアソシエイツの代表、小林照夫さん(以下、小林代表)は、その理由をこう教えられたそうです。

「普通ならば、子供は食器を割ってしまうものだということを前提にして、プラスティックやアルミ製の割れない食器を使わせるわけですが、典子先生はそういう考え方を否定していました。それは大人の勝手な思い込みであって、事実は正反対なんだと。

子供に割れる食器を渡して、『これは落とすと割れる食器だよ』と教えれば落とさないけれど、『これは落としても割れない食器だよ』と教えるから落としてしまう。考え方がさまさまなんだとよくいっていました。」

こうした考え方は、コビープリスクールズ(以下、コビー)に受け継がれており、コビーではプラスティックやアルミ製の食器を一切使っておらず、すべてガラス製か陶器です。そして、園児が食器を落として割ってしまうことは、年間を通して1回あるかないかだと小林代表は言うのです。

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同書には「子供にはよく切れる包丁を使わせて、大怪我じゃない程度の怪我をさせたほうがいい。」という行もあります。子供が怪我をするから触らせないという発想も正反対なのです。危ないことがわかれば、子供は怪我をしないように使うことを覚えていくもので、そういう機会を奪ってしまうことのほうが問題なのだと思います。

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落とせば割れる食器を使わせるからこそ、ものを大切にする心が養われると同時に、美しい「所作」が身につくのだと小林代表は言います。典子先生は保育園だけでなく家庭でも、小林代表が幼い頃から大人が使うのと同じ食器を使わせるようにしていたといいますが、なぜそれが美しい「所作」を身につけることにつながるのでしょうか。

「一般的な家庭で使う子供用の食器といえば、プラスティック製で中身が三つに区切られているワンプレートですよね。プラスティック製だから割れないし、お豆腐も卵焼きもハンバーグも、一枚のお皿に盛ることができる。洗うのも1回で済んでしまうからとても合理的です。でも、ワンプレートにすることで大切なことを教えるチャンスを逃がしてしまっているのです」
そのひとつが料理と食器の組み合わせを楽しむことだと小林代表は言います。和食に和の食器を使い、洋食に洋の食器を使うことによって、子供は「こんな料理にはこんな食器が合うのだ」ということを、自然に学んでいきます。

たしかに、どんな料理にも子供向けのイラストが描かれた1種類のワンプレートを使っているのでは、「料理と食器の組み合わせを楽しむ」という感覚が育まれることはないでしょう。

そして、ワンプレートではなく、ご飯はご飯茶碗によそい、お味噌汁はお椀によそい、おかずはお皿に盛りつけることによって、子の食器は手に持って食べる、この食器は置いたままで食べるといった食事のマナーが自然に身についていくのだと小林代表は言います。その積み重ねが、美しい所作につながっていくというのです。

「ワンプレートは持ち上げて食べることができないので、スプーンやフォークをうまく使えない時期は、どうしても顔をプレートに近づける『犬食い』になってしまいます。犬食いがいったん身についてしまうと、後から矯正するのはとても大変なのです。

典子先生は『はじめを間違えてしまうと、後から直すのは大変。最初から正しいことを教えればいいのよ』とよく言っていましたが、正しいことは美しいことにもつながっているのです
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「所作」というとなにやら古めかしく、お茶やお花など稽古事のイメージがありますが、食器をはじめさまざまな道具を上手に使いこなせるということは、器用になるということにとどまらず、扱うものに対する感性を磨き、工夫思考を伸ばすのにとても有効なのではないでしょうか。

さまざまな教材で教育するよりも、お箸を上手に持ち、はさみを使いこなす・・・こういった基本的な躾けが今最もかけているのかも知れません。

現代は食器に限らず、「子供」用があふれ返っています。親の自己満足で子供を「子ども扱い」し、その可能性に蓋をしてしまっていないか、改めて考えさせられます。

 

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