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心の成長を阻害する早期教育~「教える」のではなく「見守る」のが子育ての本質

早期教育がさかんに宣伝されています。

「0歳児を天才にする教育法」
「早い時期に基礎学力をつけることで将来の可能性を広げられる」
「年齢にとらわれず自由に教育を受け、得意分野を伸ばすことができる」
「基礎学力を身につけて「落ちこぼれ」を回避」

など、さまざまな親の思いを惹きつける言葉がならんでいます。

この早期教育、比較的最近のことで、
『子どもを「成功」へ導くために、現在広く浸透しているのは「知能至上主義」である。文字や言葉を認識したり、計算をしたりといった、知能検査で測定できる類いの知力である「認知的スキル」こそが、子どもの「成功」を左右するという考え方だ。この概念は実は比較的新しく、一九九四年のカーネギー財団による書籍に始まる。この報告により、「〇歳から三歳まで」の脳の育成を促す一大産業ができあがった。』(http://yomuu.seesaa.net/article/429877920.html)

とあります。

さてこの早期教育、最近ではその弊害も指摘され、詰め込み型から触れ合い型へと変わりつつあるようですが、乳幼児期の「教育」という考え方にはどうも違和感を覚えてしまいます。

今回は幼児期の「教育」のありかたについて考えてみましょう。

以下(http://www.fujisan.co.jp/yomimono/articles/1545)より引用します。
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早期教育が、逆に子どもを苦しめている
1歳になったばかりの男の子、Aくん。ある時期から食べ物がうまくのみこめなくなった。無理に食べようとすると吐いてしまう。夜中たびたびうなされ、昼間もごろんと部屋に寝転がり、無気力なことが多い。体の具合が悪いのではと、母親は小児科を受診した。
母親は、一日じゅう英語のDVDを見せ、通っている英語塾で使う英単語カードの教材を1日10分ずつやらせていた。Aくんが乗り気でないときでも、膝に 座らせて何とかやらせようとした。そのころから、Aくんがお母さんに寄ってこなかったり、急に暴れたりするようになっていたが、にらむとおとなしくなるの で、そのまま続けていたという。

診察した医師は、「Aくんは病気ではなく、お母さんに敷かれたレールの上を走るのに精いっぱいになっていただけだ」と考え、母親に、抱きしめてあげたり、一緒に遊んだりするようにとアドバイスした。DVDや教材は、一切やめた。1週間後に受診したAくんの症状はすっかり消え、ご飯が食べられるようになり、夜もぐっすり眠るようになったという。
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早く気付いてよかったです。1歳といえば周りのものや人にに興味を持ちはじめ、それをお母さんや周りの人と共感して充足する時期。そこに一方的な教材を強制されれば強いストレスになるのも当然です。
次はちょっと重症です。
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5歳の誕生日直前にお母さんとやってきた女の子、Bちゃんはケンケンと空咳が止まらず、「胸が痛い」と訴えた。頭には、円形の脱毛があった。Bちゃんの顔は能面のように無表情で、普通の子どもにある手の温かさがまったくなかった。

医師は、母親を部屋の外に待たせてBちゃんと一対一で話した。「お母さんは、どれくらい優しいの?」
Bちゃんは何度もドアを振り返って母親がいないかどうか確認してから、右手と左手の間を5センチくらい開いた。にらみをきかされたり、頭ごなしに怒られたりすることが長期間続いた子がよく示す反応だった。
 
医師は、Bちゃんと会話を続けた。「お母さんが怖い」「もっと一緒に遊んでほしい」「おけいこがいや」……。絞り出すように、自分の気持ちを話し始めた。Bちゃんは、典型的なスシ詰めの早期教育を受けていた。3歳になる前から、英語や通信教育、受験塾、ピアノにスイミングと、毎日習い事に通い、疲れはてていた。母子関係の危機と判断した医師は、母子を入院させた。

6人部屋に入院した初日、Bちゃんは、直立不動の「お利口さん」で、人形のようだったという。同室の子と遊ぶことができない。脈が速くなり、顔は蒼白だった。お母さんには、「黙って見ていてうなずいていてくださいね」と話してあった。
 
じっと周りの様子をうかがっていたBちゃんは、入院4日目に手近にあったコップを母親に投げつけた。その後、Bちゃんは同室の子のおもちゃを奪ったり、 泣きわめいたりおもらしをしたりといった「赤ちゃん返り」の行動が続いた。母親はBちゃんを叱らず、求められるままにおんぶや抱っこを続けた。退院まで に、1年を要した。
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いずれの例もお母さんは子供のためを思ってのことでしょうが、母子密着の「教育の強制」は、こどもを非常に苦しめているのです。何か異変があらわれると、親は腫れ物に触るように子供に接してしまいがちですが「一緒に遊んだり、子どもが何かを訴えるときに共感を持ったり」するだけで症状が改善することも多いということです。

しかもこの早期教育、極めて科学的根拠の怪しいもののようです。
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科学者や研究者はこうした早期教育をどのように見ているのだろうか。元北海道大学教授で、現在、人間性脳科学研究所所長の澤口俊之氏は言う。
「いちばん重要なのは、脳の発達パターンに合わせるということです。われわれの研究所で、0歳児から追跡調査を続けたところ、早期教育を受けた子は、1歳児でもキレやすく、6歳くらいになると、多動性傾向が非常に強く、注意力散漫であることがわかりました。
(中略)
「最新の乳幼児研究では、赤ちゃんには生まれながらに人の情動と意図を察知する力があることが実証されています。つまり、前頭前野といった特定の部位を鍛 えなくても、赤ちゃんは、人とコミュニケーションをもつようあらかじめ特別に発達した脳を持っており、親がリラックスした状態で自然に愛情を注ぐのがいち ばん望ましいのです」
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赤ちゃんは生まれたときから「育つ力」をもっているということ。強制的なトレーニングの必要などなく、安心していろんな人やものに接することができる環境があれば十分ということのようです。

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そもそも、大人と子どもの関係が対等でなく、「何かをやってあげる」という発想が、赤ちゃんが能動的に動く機会を奪っていると小西氏は訴える。「大人は先回りして汚いものを取り上げたり、知育に役立つものを触らせたりしようとしますが、あらゆるものに触ることはものすごく重要なこと。赤ちゃんのときから、周りを観察して自ら行動し、作戦を立てて選んでいくことで一日じゅう学んでいるのです」
(中略)
解剖学者で脳科学にも詳しい東京大学名誉教授の養老孟司氏は、
「人間は、20万年も前から子育てをしてきたけど、頭でっかちに『こんな頭のいい子に育てよう』って躍起になっているのは近代化してきたせいぜい20世紀 以降だけ。早期教育は、『脳トレ』と同じで繰り返してやらせればそれに関してはうまくできるようになるが、他のことに役立つかどうかはわからない」
と否定的だ。

では、どのように育てればいいのか。
養老氏によれば、脳には入力・計算・出力の三つの機能があり、五感を働かせて脳に情報を送り込むことによって3機能が循環し、脳が活性化するという。「脳の発育をうながすためには、自然の中で運動する、遊ぶのが一番だと思う。中でも虫捕りが理想的。日本では、季節も日々変化していくので、予期せぬ環境の変化があり、その分、五感からさまざまな情報が入ってきますから」

 そして、こんな問いを投げかけた。
「木の葉っぱはどういうふうについているか知っている? 重ならないようについていて、それは日光を最大限に吸収するためだと知ってるでしょう。こういうことを、子どもは自然のなかで自ら学んでいけるのです」
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小学校からの強制的な勉強で、子供の好奇心や探究心が殺がれてしまっている現状に加えて、ゼロ歳児からの早期教育は子供の心の成長に止めを刺す行為といえるのではないでしょうか。。

養老さんの「虫摂り」もなるほどですが、近所の公園や散歩でも子供にとっては未知の体験がいっぱい。家の中でのいたずらも、自ら観察行動し、学ぼうとしている姿なのです。幼児期の教育というのは、そんな自発的な子供の行動を見守り続けること、これが本質なのではないでしょうか。

 

 

 

 

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