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進む「子育ての市場化」~私たちはお客様ではなく子育ての当事者でありたい。

『29日に成立した2016年度予算と税制改正関連法は子どもを持つ女性や高齢者も働きやすい「一億総活躍社会」を掲げ、保育園や介護施設の増設などに2.4兆円を投じる。

安倍政権の看板政策である一億総活躍社会の関連予算(特別会計を含む)は15年度に比べて0.5兆円多い2.4兆円とした。そのうち子育て環境の整備などで少子化を食い止めるために1.5兆円を振り向ける。保育所の増設に加え、家計への支援も目白押しだ。』

いきなり国家予算のニュースからですが、子育て支援の充実はいまや国策となっています。
これで少しは子育ても楽になるか・・・と思うかも知れませんが、実は最もこのニュースに注目しているのは、ビジネスチャンスを伺う企業です。

数兆円にのぼる市場がそこに開けているのですから当然ですが、これまで考えてきた子育て問題がいわゆる「サービス」で解決できるできるものか疑問です。

今回は「子育ての市場化」という視点で考えてみましょう。

まずは子育て支援の代表的な動きから。

民間企業の保育園進出
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http://biz-journal.jp/2013/06/post_2266.html
横浜市は3年間で370億3000万円の予算を組み、民間企業の保育所事業への参入を積極的に進めた。増やした認可保育所144カ所のうち、79カ所は企業が経営する保育所だ。成長戦略として待機児童解消プランを掲げる自民党安倍晋三政権も、企業参入を推進する「横浜方式」を積極的に取り入れたいとしている。

保育事業に熱心なのは鉄道会社で、待機児童が多い首都圏では、すべての鉄道会社が保育事業に参入している。最も早く乗り出したのはJR東日本で、埼京線を「子育て応援路線」と位置付け、1996年から駅型保育所を開設してきた。
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鉄道会社が保育事業に熱心なのは、保育そのものというより参入による沿線居住者の確保に本当の狙いがあるようです。
子育て支援のもうひとつの柱である学童保育はどうでしょうか。
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http://g-jhd.jp/questionnaire/1320
今年に入って、株式会社ピグマコミュニケーションの「ピグマキッズ」、株式会社明光ネットワークジャパンの「明光キッズ」と、塾業界による民間学童保育サービスの出店が相次いでいます。

下記データを見ても明らかなように、今後ますます少子化、共働き化の流れは加速するでしょう。
少子化で、塾としての顧客人口は減るように見えますが、共働き化で、顧客との接点は増えているのです。
そこに目を付けたのが民間学童保育サービスといえるでしょう。
(中略)
民間学童保育サービスの認知を広めた草分けは、東急グループが運営する「キッズベースキャンプ」です。2006年のサービス開始から、たった5年間で、首都圏東急沿線を中心に15教場を構えるまでに成長しました。
(中略)
公的な学童保育と違う点は、
・ 小学校までの送迎サービス
・ 最長22時までの利用時間
・ 昼食・夕食の提供
など。
さらに、ただ放課後を過ごすだけでなく、「社会につながる人間力」を養成することをうたい、礼儀・道徳・規律や学習習慣を身に付けることを宣言した点が保護者のハートをわしづかみにしました。
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至れり尽くせり、といった感じです。
ここでも鉄道会社が力を入れていますが、塾業界は低学年からの学童保育から高学年の学習塾へとシームレスにつないだ保護者・子供の囲い込みが狙いでしょう。

また、安倍政権が補助金の支給を予定しているベビーシッターは、

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http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32163?page=2
株式会社スリールは、育児の研修を受けた学生を、子育て中の家庭に「インターンシップ」として送り込み、学生には「働くこと」の現実を学ぶ機会を、子育て中のカップルには育児の支援を提供する、という非常にクリエイティブな事業を展開しています。
学生が子育ての面倒をみる、というと少し不安になってしまいますが、スリールから派遣される学生は1ヵ月半の研修を受け、さらに2名チームで訪問することになっています。受け入れ先の家庭の評判も好意的で、「インターンシップ」という名前では不適切なほど、質の高い育児サービスが提供されているようです。
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http://officelife.tokyo/A/benefit/press/173
ベビーシッターというと新生児ケアや病児保育などのイメージが強く、その場合、キッズラインでも、保育関連資格保有者が人気だが、2歳以上や小学生のお子様を持つ親御様にとっては「保けいこ」つまり、「習い事」「英語教育」「家庭教師」も兼ねるシッターのニーズが一気に高まる。
仕事と育児を両立するご家庭にとって、習い事はさせたいものの、送迎時間の捻出が難しいという問題が一気に解決するためだ。
人気の活用法としては、女子大生が、保育園や学童にお子様を迎えに行き、自宅に送り、その後、勉強や英語など習い事をして食事、入浴をする(時給1000円で約3時間利用)というものだ。
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確かに子を持つ親としてはありがたいのですが、どこまでいっても受身、子育てをお金で買うという感じが否めません。子供も含めて丸ごと市場に取り込んで消費者にしてしまう仕組み、それが「子育ての市場化」です。

そもそも、核家族が誕生したのは都市への人口集中、その背景にあるのが市場の拡大。その市場原理に則ったのが「子育て市場」。保護者様、お子様の世界で行われる子育て支援(という名のサービス業拡大)では根本的な解決にはならない気がします。

古来、子育ては親同士の繋がり、地域共同体の見守りのなかで行われていたもの。支援をするならそういう自発的な集団形成につながる自主保育や共同保育の実現に向かう必要があるのではないでしょうか。

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