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自然の中で仲間とつながり育ちあう~「森の子教室」の取組み

前回、子供のしつけについて「社会的なスキルは家庭の外で身につけるもの」というお話をしました。
でも子供にとって家の外、社会の第一歩ってどんな環境だろう?・・・と考えていたら、ちょうど吹田市で「森の子教室」を主宰する田畑祐子さんのお話を聞く機会がありました。

森の子供たちは3~5歳。こんな幼児のうちから社会だなんて・・・と思うかもしれませんが、この年代は社会性・人間関係の基礎をつくる上でとても大切な時期なのだそうです。

そういえば一昔前は、近所のお兄ちゃんと3つ4つの子が一緒になってよく遊んでいました。そんな風景も今は絶えて久しいですが、こういう遊び仲間の世界が、幼児期に体験する最初の仲間社会だったなのかも知れません。

現代の子供たちが森の中でどのように遊び、学び、仲間社会を経験しているのか?「森の子教室」の活動から紹介していきましょう。

森の子教室HP(http://morinoko-k.com/index.html)より引用させていただきます。
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緑あふれる千里ニュータウンの一角、雑木林が残る「津雲公園」を拠点に活動を続ける青空幼稚園
「森の子教室」があります。主宰するのは、元小学校・中学校美術教師の田畑祐子さん。園舎もなければカリキュラムもない、自然の中で繰り広げられる少人数約20人での幼児保育の取組みです。

「森の子教室」がスタートしたのは1998年。
「森の子が自然の中で活動するのは、自然遊びをするのが目的じゃないんです。人がつながりあったり、ひらめき合ったり、考えたり、気持ちを知ったり、心の奥をまさぐり合う・・・そういった感覚を持つのに、自然というフィールドが非常に有効だと思うから」と語ります。

教室は年少(3歳)から年長(5歳)までが一緒に活動する縦割り保育。天候にかかわらず月・水・金の週3回、朝10時から午後3時まで。保護者が公園まで送り迎えするスタイルです。
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年長から順番に「1番さん」「2番さん(年中)」「3番さん(年少)」と呼ばれ、みんなを引っ張り、まとめ役となる1番さんは、2番・3番さんにとって憧れの存在でもあります。

朝10時、その日の「お当番ニュース(家での出来事など)」の発表から1日がスタートします。そのお話を聞きながら、仲間から飛び出すのが質問や意見、疑問。みんなでワイワイ話し合ってる間に「じゃあ、今日は○○までいってみようか」と一日の行動が決まっていくのです。

ほかに、木登りばかりする日もあれば、木にロープをかけてブランコにしたり。摘みたての木いちごでジャムをつくったり。落ち葉に埋もれて遊んだり。お祭りに向けて着物を手づくりしたりも・・・
遊具や市販のおもちゃは使わず、自然の中から遊びをつくり出していきます。
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雨の日は?もちろんカッパを着て外で過ごします。
「子供もその日によって気持ちのトーンが違うし、雨自体も季節によって変わっていきます。真夏の雨はジャーッと濡れても着替えればいいし、梅雨時のシトシト降る雨もあれば、パラパラ降る雨もある。いろんな雨を感じて、自分で判断し、みんなでその日の遊びを決めるんです」
(中略)
少人数にこだわるのは、気の合わない子とでもなんとかやっていってほしいから。少し多くなると、好きな子や気の合う子とグループ化してしまうそうです。
「気が合わない人とも、なんとかして心をまさぐりあいながら、気持ちのいいところを見つけ出すという行為こそが、本当の人間関係をつくっていくと思っています」
(中略)
「子供たちのふっとしたひらめきから生まれたものを、自分たちで形にしていく。それが自信や喜びにつながり、最終的には自分の人生を自分で創る力につながっていくと思うんです」
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子供たちが泣いたり笑ったり、ときどき困ったりしながら育っていく姿が目に浮かびます。

田畑さんは中学校の教員時代、荒れる子供たちと接するなかで、幼児期の育ち方が最も大切だと感じ、この「森の子教室」に取組みはじめたそうです。そして人間関係をつくるには自然というフィールドが非常に効果的だといいます。

自然というと大胆で、ゴーゴーと恐ろしいイメージがありますが、とても繊細な面があります。たとえば「木登りは一歩一歩自分で確かめないと危険です。枝先に葉っぱがついていない枝は朽ちていて危ないし、柿のようにサクッと折れやすい木もあれば、細い枝でもしなって折れにくい木もある。それらを子供たちは足の裏や指先、体の感覚で学んでいくんです」

五感をフルに使って感じ取り、発見し、学んでいく。探り探り、小さな失敗を何度も繰り返しながら高い木に登れるようになる。こういう学びができるのは自然ならではのことです。

そして自然の中で遊ぶ仲間の存在。一緒に感じ、発見を共有し、学んだことを教えあう。同じ自然を対象にした者同士だからこそ共有できる感覚がそこにはあります。たとえ最初は気が合わない子とでも、相手の気持ちを感じとり探りながら、充足し合える関係を築いていけるのだと思います。

よく「お友達だから仲良くしましょうね」・・・といいますが、ちょっと上辺な感じがしますね。相手の気持ちを感じ取り、共感できてこそ本当の仲良し=仲間になれるのだと思います。

また大人は「人間関係に疲れて自然に向かう」・・なんていいますが、実はこれ逆なんですね。繊細な自然に同化する感覚があれば、人間にも素直に向き合えるはずです。人間もまた自然の一部なんですから。

自然の中でのさまざまな体験を通して、人間関係を学んでいく。荒れる子供たちや悩み多き大人たちは、この大切な時間と体験を忘れてきてしまったのかも知れません。

「森の子教室」の取組み、次代の子育てに大きなヒントを与えてくれそうです。

 

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