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新たな保育の可能性12 進化するシングルマザー向けシェアハウス

離婚の増加と未婚率の上昇にともない、全国のシングルマザーは増加の一途をたどっています。総務省統計研修所の調査によれば、2010年のシングルマザーの数は108万人。こうした1人親世帯では、さまざまな困難に直面しながら、仕事と育児の両立を目指して孤軍奮闘しているのが実情です。

これだけシングルマザーが増加している要因として、シングルマザーへの支援制度の充実や仕事をしている女性が増えたことなどが挙げられますが、実際シングルで仕事と家事、そして育児をこなしていくのは至難の業です。

最近では、子供のケアの必要性と同様に、疲弊しきった親へのケアも必要視されています。そんなシングルマザーを支援するために、最近注目を浴びているのが助け合い型シェアハウスです。本ブログではシングルマザー向けシェアハウスと単身シニアとシングルマザーで構成する助け合い型シェアハウスについて紹介します。

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事例1 ペアレンティングホーム高津

2012年上期に川崎市高津区にオープンしたペアレンティングホーム高津は、シングルマザーの子育てを支援するシェアハウスとして、保育園経営者、建築家、シェアハウスプロデューサー、不動産コーディネーターなど各分野のプロフェッショナルによって、つくられたシェアハウスです。

設立者の一人である一級建築士の秋山氏は 「日本では、仕事と育児の両立は大変困難な状況にあります。このため、出産後にキャリアアップをあきらめたり、キャリアアップのために出産をあきらめたりする女性も少なくない。仕事と育児の両立が可能な社会を作るために、設計事務所として何かできないか?」というのが設立した動機だと話しています。

同シェアハウスは、部屋数が8つあり、入居できるのはシングルマザーとその子供(18未満)に限られます。家賃は6万5,000円~7万円で、この他に月々共益費が2万5,000円かかります。共益費に含まれるのは水道光熱費やインタネット接続料、そしてチャイルドケアの費用です。保育 [1]ペアレンティングホーム最大の目玉として

ペアレンティングホーム最大の目玉は、チャイルドケアサービスです。毎週2回、夕方5時から夜9時までの4時間チャイルドケア・シッターが来訪し、子供の保育や、夕食作り、育児相談などを行っています。

仕事と育児に追われるシングルマザーも、チャイルドケアの時間だけは、自分の時間を作ることができます。その時間を利用して、残っている家事や持ち帰った仕事をこなす方もいるそうです。

他にも、同じ立場の母親同士が、協力しながら子育てをしていくという点も魅力です。例えば、残業で遅くなりそうなときは、他の居住者に頼んでかわりに保育園に子供を迎えに行ってもらったり、他のお母さんに子供を預けて買い物に行ったりと、同じ悩みを持つシングルマザー同士、ギブ・アンド・テイクで支え合うことができます。

一方で問題も。。。

生活習慣も教育方針も違う他人同士、長く一緒に生活していれば、行き違いや摩擦が起こるなど問題が起こることも多々あります。そこで同シェアハウスでは、運営スタッフが入居者からのメール相談や座談会を通してヒアリングを行い、問題解決を図っていきます。座談会を開いてしっかりと話し合い、皆が気持ちよく長期的に共同生活を行えるような仕組みづくりを行っています。

なぜ今シェアハウスが注目されているのか?

秋山氏はシェアハウスが注目されている背景について、 「個人があまりにも社会から隔絶されてしまったことへの反動があるように思います。人類の歴史の中でも、ここまで個人が孤立している時代はなかったのではないか、それに対する揺り戻しが、シェアハウスへの関心につながっているように感じます」と、社会が再びグループリビング(共同居住)や共同保育などの共同生活に戻っていると指摘しています。 また、同氏は今後共同保育におけるシェアハウスの需要の拡大が見込まれると予想し、今後は家族型、多世代型など、子育てをコンセプトとしたシェアハウスなども増やしていきたいと話しています。

事例2 IGHシェアハウス

株式会社ナウいは、単身シニアとシングルマザーで構成する助け合い型シェアハウス「IGHシェアハウス」を推進しています。IGHとは、Inter-Generation Houseという造語の略で、ナウいが推奨する単身シニア1世帯、シングルマザー世帯2世帯で1つの居住空間をシェアする多世代交流をベースとした助け合い型シェアハウスモデルです。

一般のシェアハウスとの違いは、ナウいが高齢者とシングルマザーの双方に募集をかけ、合同説明会を実施します。そこで、クラフトワークや料理などの共同作業を行い、相性のいいパートナーを探します。そして、気に入った人が見つかれば共同生活をするための具体的なルールを設定します。

設定内容はパートナーによって全く違いますが、例えば食事や掃除はどちらがどのような頻度で行うかなど、日常のルールを細かく決めていきます。お互い生活スタイルは全く違うので、これを設定するのが一番難しいですが、長期的なパートナーになるわけですから、ナウいを通してしっかりと設定していきます。保育1 [2] また、もう一つ一般のシェアハウスと違うところは、専用のシェアハウスに住むのではなく、シニアの方の持ち家を有効活用して共同生活を送ることです。つまり、居住するのはシニアの方とシングルマザー世帯だけですから、パートナー選びはより重要になってくるということです。

また、希望するエリアに相性の良いパートナーがいるかどうかも非常に難しいところです。 ただ、もし良いパートナーがみつかれば、お互いにとって非常に頼りになる存在となります。シングルマザーにとっては、同居のシニアの方に子供を預かってもらえたりするので、祖父や祖母にみてもらうという感覚です。

一方、シニアの方にとっても一人でいる寂しさから開放されるだけではなく、賃料も得られるので有休建物の有効活用にもなります。 シニアとシングルマザー数、どちらも近年増加が顕著なっている中、こうした新しい助け合い型のシェアハウスはまさに時代の流れに合ったシェアハウスだといえるでしょう。

ただ、相性の良いパートナーを見つけるのが難しく、同社も爆発的に事業を拡大しているというわけではないようです。同社代表の桑山氏は、今は1組ずつをじっくりとフォローしていくことで、お互いうまくやっていけるような仕組みづくりを作りたいと話しています。

シェアハウスの課題

2013年8月末時点で、全国におけるシェアハウス事業者は598社にのぼり、シェアハウス物件は全国に2,744件に達しています。ただ、そのうち4分の3にあたる2057件が東京都内、次いで神奈川県内が244件、埼玉県が129件と都心に集中しています。

首都圏を中心に大都市のみで普及している理由としては、シェアハウス事業が利益重視型の投資事業とみなされているからで、採算の低い地方都市ではなかなか事業に手がだしにくいからです。 シェアハウス事業の参入の動機を探ったレポートによると、新規事業としての投資等の目的(52.4%)に加え、空物件の有効利用(36.6%)とほぼ投資による動機が高いことがわかります。

また、現在シェアハウス事業を展開しているのは中小の不動産関連企業やベンチャー企業が多く、大手は避けている市場です。つまり、資金に余裕があり社会的に貢献しようという目的でシェアハウスを運営しようとしている企業は少ないということです。 言い方を変えると、運営している企業が資金に乏しいため、もし事業が悪化し資金繰りが悪くなれば、そのシェアハウスが売却される可能性もあるということです。

本来なら、借地借家法で守られている入居者ですが、シェアハウスの位置づけがまだ不透明な現在では、この借地借家法が適用されるのかどうかは不明です。そういった意味でも現在の入居者の多くは、非常に不安定な立場にあるといえるでしょう。 本来ならもっと公的機関が参入し、法的整備に関する基板を固めていってほしいところですが、シェアハウス事業はまだまだ新しい領域の事業であるため、腰の重い公的機関としてはなかなか参入に踏み切れないようです。

当面の課題としては、シェアハウスに関する法の整備を進め、公的機関や大企業もシェアハウス事業に参入できるような体制を整えることです。そうすれば、全国的にもっとシェアハウスが普及し、共同保育もさらに進むことが予想されます。

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