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これからの充足のカタチ(9)~地域のことを考えていくことで新しい生産活動を生み出す「学生耕作隊」

こんにちは 😆

今回紹介するのは、学生耕作隊です。学生耕作隊は、2002年に低い食料自給率など日本の農業の現状に対して問題意識を持っていた、当時、山口大学農学部三年生の近藤紀子さんが、農業・農村の活性化を図るために自ら何かできることはないだろうかと考え発足させたNPO法人です。

農作業支援から始まった学生耕作隊ですが、今では地域の活性化を担い、活動をどんどん広げています
その活動の中からいくつかを紹介します

学生耕作隊ホームページより

宇部市楠地区 森の駅・くすのきクリーン村
森の駅・くすのきは、元々は地域の方々が山を開墾して作ったお茶園でしたが、地域の中に後継者がおらずに耕作放棄されて山もお茶園も荒れ放題になっていました。
『後継者がいなくて朽ちてしまうよりは、誰かやる気のある人に引き継いでもらいたい。』そんな地域の期待に応えて、学生耕作隊の若者がお茶園、さらには山全体の管理を任されることに。
山全体の広さはなんと10町歩(約1万㎡)!
最初はジャングルのようにお茶の木や山の雑木が生い茂っていたお茶園でしたが、鋸でお茶の木を切ったり、エンジン式の刈り払い機で短く刈りそろえたり、手作業でお茶の木を覆い尽くすほどの草を取ったりといった管理を地道に続けていきました。

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そして、管理3年目で地域の茶工場を稼働させてついにお茶の加工に成功し、管理4年目となる2010年にはお茶を本格的に商品化して全国に売り出しました。
また、お茶園の一部は重機や手作業でお茶の木を取り除いてブルーベリーの苗木も植えています。
森の駅・くすのきの自然環境は決して優しいものではありませんが、ブルーベリーは負けずに成長しており、加工や活用、販売の計画も徐々に練られています。
他にもいも類やかぼちゃなどの野菜も栽培できるよう、新たな畑の開墾計画も進められています。

また、なんと、必要な電気は自分たちで作ったソーラー発電システムで自給自足しています!
もちろん、曇りや雨の日には電気が使えず、夜は電池式のライト以外明かりが無くて真っ暗ということもありますし、炊飯器などの消費電力の大きい家電は使えません。
しかし、こうした取り組みそのものが「自分たちが使うエネルギーも自給する」という生活モデルになると思っています。

茶畑に来た当初、2人だったメンバーは現在では7人になり、2011年4月からは自分たちで建てた住居で共同生活を始めました。

建築担当、機械担当、IT担当、ブルーベリー担当、運輸担当、自然エネルギー担当。クリーン村では、担当制を作り、その担当者それぞれが農業の事業主として責任を持って職務にあたっています。「誰かに言われてやるのではなく、自分がすべきことを考えて行動する」のがルール。「自ら発案した内容を、自分の手ですぐに行動に移すことができる」。こうした自主性が、何もなかった田舎の暮らしを魅力的なものに変えていくのです。
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周防大島町の野菜畑
学生耕作隊が地域の方からお借りして管理を行っている畑で、毎年玉ネギやニンニク等の野菜を栽培しています。
2010年は耕作放棄地だった8反の畑を草刈して耕し、山口大学の学生たちやシニア耕作隊の方々と玉ネギ4,000本とニンニク1,000本を植えました。
これらの玉ネギとニンニクは、除草剤や根枯らし剤などの農薬類を使わず地道に草取りなどを行って育て、収穫後は近くの教育施設の食堂での食事やまかないとしてメンバーの食事にもなりました。
また、東京の協働先へも約100kgを出荷し、全国の企画外で売り物にならないもったいない野菜や手作りの加工品などを集めて販売するイベントにて詰め放題形式で販売されました。
2011年には玉ネギだけでなくニンジンも植え、毎月宇部市で開催している「まちなかファーマーズマーケット」でも販売されました。
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昔なら農地を他人に任せるといった発想はなかったのかもしれませんが、土地など財の縛りを取っ払い、豊かなお茶園を復活させる。耕す人のいない農地を借りて作物を栽培するなど、任せる方も任される方も、共に出来ることはないか、周りの期待を感じながら行動しているのではないでしょうか。周りの期待を感じとれるから「誰かに言われてやるのではなく、自分がすべきことを考えて行動する」ルールも成り立っていくのです。

さらに、楠クリーン村では、農村に企業を誘致することにより、新しい生産のカタチを作ろうとしています

 

楠クリーン村構想
楠クリーン村は2011年3月11日の東日本大震災以降、楠クリーン村では自給・自活クラブを通じて都市と田舎の絆づくりを実践してきています。
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創造性の高い人々が集まる企業の企業誘致構想
この構想の企業誘致とは、田舎の安い労働力(例:現在の最低賃金時間額:東京都837円、山口県684円)を求めて工場を建設したいと願う今までの第二次産業の大きな工場誘致を目指す既存の取り組みにならうものではありません。「農ある暮らし」を求める企業の誘致です。

【新・企業誘致は、創造性高い人々が集まる仕組みをつくること】

アメリカの知識人たちが集まる面白い会議では、日時と時間をしっかり決めて会議室で議論しあうのではなく、そこに集まった人が滞在期間中、朝食を食べながら議論したり、散歩しながら新たな発想を生みだしたりするのだそうです。

ITで成功したシリコンバレーのように、楠クリーン村に「農ある暮らし企業」が集まって、自然にたわむれ、農で無心に汗を流すことで新しいアイデアを生み出し、質の高い議論が展開される。そんな「最先端地」を作り出す構想です。

既存の工場誘致に比べれば、彼らが構想し、協働する企業は小さい規模かもしれません。
しかし、発信力があります。創造性で話題を作り発信し、企業ごとに移住する人が増える連鎖が生まれれば、定住増が結果として生まれます。楠クリーン村に来たら刺激があるぞ!そんな実践と実績の空間をつくり、そこに創造性高い人材が集まる。これが、新しい企業誘致のイメージです。

農業の視点においても、農を農だけから考える時代ではなくなりました。観光、デザイン、商品開発といった新たな視点から農を考え、プロデュースし、魅力あるものにしていく事が、農を軸とした雇用創出の新たな環境整備になると考えています。

農ある暮らしをしたいと願う人々が必ず陥る経済面の心配も解決!
今ある会社、今ある仕事を捨てて田舎にいけるのか?

田舎への憧れを持つ人が一番心配するのが、経済的な面でしょう。また農で自立するためには少なくとも数年かかると言われており、その不安もあります。

「農ある企業誘致」のすごいところは、農を始めたいという人の経済的不安を減らすことができるだけでなく、都会から田舎への移住ハードルを低くできることです。
何といっても企業が農ある暮らしを推進するわけですから、今までの会社に勤めながら、農業ができます。
農業が板につき、農家として自立できそうになって来たら、一週間のうち何日は農業、何日は会社という交渉をし、専業農家に近づくこともできます。さらに都会にいる同僚たちは、Aさんが田舎本社で作った野菜なんだから、形が悪くったって食べてあげよう、と、力強いお客さんになってくれる可能性が高いです。

新規就農者が陥る、「作っても売れない」という問題まで解決できるかもしれません。

農業といった農作物の生産だけに留まらず、それ以外の産業も包摂した集団は、より多くの問題をみんなで解決していくことが必要になってきます。学生耕作隊が地域活性化で元気なのは、自集団だけではなく地域のことを考えていくこと、そういった生産活動そのものが、新しい充足のカタチなのかもしれません。

すでに「吉田屋」という旅館は、旅館の営業日を週末に限定し、それ以外の日を地域貢献日として農作業を行い地域活性化を実現しているのです。

次回はこの「吉田屋」さんの実現した新しい充足のカタチを紹介します

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