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TPPをめぐる俗論を反証する1~横行する数字のトリック、おかしな議論への反証

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昨年秋ごろからニュースで耳にするようになった「TPP」について今回は3回シリーズで特集します。

マスコミの報道によりTPPという言葉の認知度は上がる一方で、その中身についてはあまり議論されないまま、TPPに参加するか、しないかということだけが取り立たされています。

家庭に引き付けて言えば、TPPへの参加は「日本の食料環境どうする?」「日本の雇用環境どうする?」という問題に直結します。
今回はTPP問題についてグラフや数字を使って具体的に紹介します。

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■TPPって何?
2006年にチリ・ニュージーランド・シンガポール・ブルネイの4カ国で始まった自由貿易協定のことです。因みにTPPの日本語訳は環太平洋戦略的経済連携協定と言います。

TPPは協定を結んでいる国間での貿易において、関税を撤廃することで100%自由化を目指すことに加え、人やサービスについても自由化を実現することを目的としています。

なぜ4カ国はTPPを始めたのでしょうか?
それは加盟国の国柄と産業構造を見ることでハッキリしてきます。

ブルネイ:石油輸出国
ニュージーランド:農産物輸出国
チリ:銅・農産物輸出国
シンガポール:工業製品輸出国。

つまり、お互い国の規模も小さいため、それぞれが得意な分野を補う方がお互いにメリットがあります。それを実現するために出来たのがTPPです。

ここに参加を表明したのがアメリカ、オーストラリア、ペルー、カナダなどの農産物輸出大国です。彼らはTPPに参加することで太平洋地域での農産物の輸出を拡大することができます。

■前原「1.5%」発言のトリック

「第一に、第一次産業のGDPシェア1・5%という数字の取り上げ方自体が問題である。例えば、産業区分を細かくしていけば、産業界が誇る自動車を中心とした『輸送用機器』でも、そのシェアは2・7%である。それどころか、製造業全体でも実は19・9%と既に2割を切っている。そして、『犠牲』の対象と示唆されている輸出であるが、それもGDPの17・5%にすぎない。仮に数字で議論するのであれば、こうした全体の状況とともに取り上げられるべきであろう。
るいネット [2]の記事より引用

   
[3]
経済活動別国内総生産構成比(2006年)(経済産業省データを引用)
  
  
全体の状況から言えば、サービス産業である第三次産業(図中の黄色部分)が最も多くなっています。よく日本は輸出大国だというような認識をされていますが、実は逆で国内消費の方が圧倒的に多いのです。第二次産業(図中の緑色部分)は全部足しても、全体の1/4程度しかありません。問題に対して農業生産の1.5%だけに焦点を当てることは、数字だけが一人歩きをしてしまい、本質問題から焦点をずれてしまいます。
  
  
■白を黒といいくるめる「鎖国か開国か」論

「日本はWTOルールを金科玉条のように守り、課された農業保護削減義務を世界で最もまじめに実行してきた『優等生』である。政府の価格支持政策をほとんど廃止したのは日本だけであり、農産物関税も平均で11・7%と低く、農業所得に占める財政負担の割合も15・6%で、欧州諸国が軒並み90%を超えているのに対してはるかに低い。それにもかかわらず、いまだに日本は最も過保護な農業保護国、しかも、価格支持政策に依存した遅れた農業保護国だと内外で批判され、国内世論の支持が得られないため、農業関連予算も減額され続けているのが現状である」
るいネット [2]の記事より引用

   
[4]
主要国の農産物平均関税率
  
   
[5]
各国農業経営の構造 (2006年)
  
   
■吹っ飛んでしまった「自給率50%」

TPP参加で自給率が40%から14%に激減するという農水省の試算に対し、TPP推進派は、関税がゼロになるまでの猶予期間のうちに構造改革で「強い農業」づくりを進めれば、自給率はそこまでは下がらないと反論している。こんな議論をしているうちに、政府目標の「自給率50%」が吹っ飛んでしまったのも、一種のごまかし、トリックである。
るいネット [2]の記事より引用

  
[6]
主要国自給率推移(カロリーベース):画像はコチラ [7]よりお借りしました。

日本の自給率は主要国の中でも最下位で、しかも下がり続けている。この現状で、さらに自給率を下げる政策を取る理由が見当たらない。さらに、上記の自給率50%は民主党がマニフェストに掲げていた政策です。

■地域発のまともな試算

「地域別試算の取り組みは『TPP問題』を農業も含めた地域の産業・経済全体の問題として捉え返すためのリアリティを提供している。表示した2地域を見比べてみると、農業生産への影響では地域間の基幹作目の違いが鮮明に表われていると同時に、オホーツク地域では製糖・澱粉製造・乳製品工場、上川地域では精米業といったように、地域によって特色ある立地が進められてきた関連産業への影響もまた甚大であることが明らかである。『地域経済』で括られている商工業等への影響はさらに大きいものがある」

北海道では、記事の見出しにもあるように、農業団体、経済団体・消費者団体が足並みをそろえて反対しており、道経連は、TPP推進の中央(経団連)と一線を画する構えを鮮明にしている。輸出大企業とアメリカにしか目をむけない「中央」発のおかしな議論をまともな議論にしていく力は地域・地方にある。
るいネット [2]の記事より引用

  

以上、TPPをめぐる議論を数字と照らし合わせながら見てみると、TPPに参加するメリットが見当たりません。にも係わらずマスコミや政治家たちが、TPPへの参加を前提とした議論をするは、大きく2つの理由が存在します。
一つは輸出企業トップで構成される経団連のマスコミへの影響力が考えられる。なぜなら、輸出企業にとっては貿易相手国の関税が撤廃されれば、売上が増えることが見込めるからです。
もう一つは、アメリカの国家戦略を断れない日本の政治家・官僚・マスコミの構造があるからです。

次回は、このアメリカの国家戦略について詳しく紹介します。

(かなりの長文でしたが、最後まで読んでくれてありがとう)

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