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集団の再生どうする?~農業の可能性:集団の再生どうする?~農業の可能性:白石農園

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(白石農園:画像はコチラ [2]からお借りしました)

前回は、50人程度の自給自足の大家族を実現している「木の花ファミリー」を紹介しました。これまでいくつか教育に教育に農業を取り入れて成功している事例を取り上げてきて、確信するのは農業による教育再生の可能性です。
今回は、農業を通じて家庭という枠を超え地域再生⇒集団再生を実現し始めている事例として白石農園を紹介したいと思います。

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1.白石農園とは?

1993年、ガットウルグアイラウンドが妥結し、米の部分解放が決まった。当時、JA青年部組織の代表として、米をはじめとする農産物の自由化阻止の運動を展開してきた私の目には、ラウンドの結末は産業経済の発展を優先し、農業が切り捨てられていく現実が映っていた。この国の社会にある農業に対する位置づけの低さをかいま見たような気がする。その後、組織の代表を終え、やりきれない思いを残しながら農業に専念した。

 当時、農業の今後を考えたとき、社会にある農業の位置づけを確かなものにしないかぎり、私たちの農業の発展はあり得ないと思った。消費者に向かい農業の情報を発信していくこと。農業が食べものの生産を基本としながら、土にふれる楽しみを提供したり、教育の中での役割を担っていく。農業の持つ多面的な価値を、農業への理解を消費者に広めていくことが必要であり、都市部で農業を営むものの大切な役割ではないだろうか。

農林水産省農林水産研修所 40周年紙 [3]より引用

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(白石農園:画像はコチラ [2]からお借りしました)

関東平野の一画である東京は、元々農産物の生産に適した肥沃な土壌である。我が家もこの地で農業をはじめて300年あまり、江戸時代から農産物を届け続けてきた。第二次世界大戦から戦後の高度経済成長時代と、確かに農地は減少したが練馬区内には現在も約300ヘクタールの農地が点在している。
 都市化の波にもまれながら、私たちの農業は市場出荷を中心とした経営から直接販売や地場流通型の農業に変化してきた。そのなかから生まれた新しい経営のスタイルが農業体験農園である。地域の消費者を畑に招き入れ、農家指導のもと野菜の生産体験をする。いうなれば野菜作りのカルチャースクールといったところである。私たち農家は授業料と野菜の収穫代金をいただいて収入とする。一般にある市民農園は、営農が困難になった農地などを行政が借り受け、安価で市民に提供するといったものがおおかたであるが、農業体験農園は営農の新たな展開であることに大きな違いがある。

農林水産省農林水産研修所 40周年紙 [5]より引用

2.農を通した地域再生⇒集団再生

白石農園は早くから農の新しい可能性に気が付き新しい農を実践してきました。
住民が手軽に農園を借りられるよう市に掛け合い新しい農園の形を実現しました。これは「練馬方式」と呼ばれ、農家が作付け計画や道具を用意し、参加者は参加料を払って農家に教えてもらいながら作物を育て収穫するという形式のもので、全国に約200ヶ所近くまで広がっています。
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(給食:画像はコチラ [7]からお借りしました)

また、地域の小学校が総合学習として農業体験を企画できるよう「NPO法人 畑の教室」を立ち上げ、地域の農家同士で協力し合い、学校の農業体験の受け入れ基盤を作り、実際に導入した学校では給食での食べ残しが減るなど効果を出しています。

 

印象に残ったのが40代前半の大手コンピューターメーカーに勤務するHさん。週末熱心に野菜づくりに励んでいるのだが、特に作業のない時期でも毎週畑に来て何をするわけでもなく野菜を眺めている。「よく飽きませんね」と問いかけると「こうしているのが私の一番の癒しの時間なんです。自然を感じながら体を動かし汗をかき、育つ野菜をただ眺めていると、毎日深夜までコンピューターに向かっているストレスが抜けていくんです。」 団塊の世代、50代後半のKさん。「よく解らないけどとにかく楽しいんですよ。本当に心身ともに気持ちがいい。
(中略)
 中年サラリーマンの悩みは、会社には友人はいるが暮らしの場である地元での人間関係の希薄さにある。ご近所に友人を求めようとしてもなかなかチャンスをつくりづらいらしい。農園に参加したことで同じような悩みを持った人たちと出会い仲間ができた、といった声も耳にする。
 農園の収穫祭では、前出のみなさんが酒を酌み交わせながら盛り上がった。「これから高齢化社会に向けて、福祉を充実させようとしても行政の予算は限られている。膨れあがる高齢者人口に対して大切なのは、心身ともに健康な老人でいられる環境を整えることでしょう。それも安価で。野菜づくりなどの農業参加は趣味と実益に加え、健康な都市住民を育んでくれるし、地域のコミュニティにもなる。もっと農業体験ができる場を増やすよう行政に提案しましょう。」・・と。
 自然とともに生きる農業。私たちはその自然を操ることで農業の生産を増やそうとしてきた。環境を制御し自然を支配することが農業の究極の目標のように考えてきたこともある。しかし、生産産業という一面からすこし離れて農業をみると、自然をありのままに受け入れる農業の多様な役割がみえてくる。
 都会でバリバリ働く中堅サラリーマンの深層にも農耕民族のDNA(遺伝子)が眠っている。その「潜在農力」を呼び覚ますことが、高齢化社会の健康対策にもなるのではないだろうか。

農林水産省農林水産研修所 40周年紙 [5]より引用

このように白石農園は自分の農園に留まらず地域を巻き込んで、農業を通した新しい集団を構築しに成功しています。白石農園は、農業の共同作業の場を通じて、仲間作りや、マジ話の場、つまり、「みんなが繋がれる場」として農を活用しています。まさに、共認形成の場を提供することで、地域の人々の集まるコミュニティーを形成し地域再生の実現態、さらには集団再生の核にもなる可能性を秘めていると感じます。

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