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新たな時代の教育制度の提案に向けて8~ヨーロッパ公教育制度の成立構造~

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当ブログ:「家庭を聖域にしてはいけない」http://blog.katei-x.net/blog/で、この間、1870年イギリスで始まり、ヨーロッパ各国に広がった公教育制度について調べてきました。

①イギリスの教育制度(現在) [1] 
②イギリスの教育制度(変遷と社会的意味) [2]
③ドイツの教育制度(現在) [3] 
④ドイツの教育制度(変遷と社会的意味) [4] 
⑤フランスの教育制度1(自由・平等・友愛と学歴社会) [5] 
⑥フランスの教育制度2(公教育制度の成立過程) [6] 
⑦北欧の教育:平等主義や福祉主義からの教育では可能性がない、外圧に対応した共認形成が生命(スウェーデンとフィンランドの違い) [7]

イギリス、ドイツ、フランス、北欧を調べ、グループで話し合う中で、共通する成立構造が見えてきたので、その仮説を図解化してみました。

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■18世紀中頃から始まった産業革命は農業生産から工業生産への転換を推し進め、それにより庶民にも私権獲得可能性が一気に広がり、市場拡大への期待一点に収束した。

とくに、19世紀中頃の第2次産業革命では、大量の生産物の消費先としての植民地支配政策をさらに推し進め、加えて鉄鋼業、それを基にした軍需産業が飛躍的発展を遂げ、国家間の緊張圧力が一気に高まりを見せた。

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■一方、私権獲得可能性を求めて、人々は農村から都市へとなだれ込んでくる。農村では地域の規範で秩序を維持していたが、都市では安定基盤を失った根無し草、しかも、私権獲得に収束した彼らの規範意識は失われ、都市は統合危機に陥っていく。

■その状況で国家は、都市の秩序維持を推し進め、かつ、列強諸国に対抗するため、「富国強兵」の名の基に、国家への収束を強めることで、社会統合を図ろうとした。元々文字も読めない労働貧民では、統合もおぼつかない。また、より高い生産性を挙げるためには、一定の教育が必要である。ということから、「国民としての」教育(参考 [8])、身分社会を前提とした「労働者としての」教育という公教育が始まった。これにより、庶民は「社会に目を向ける」ことなく、支配観念に染まっていくことになる。

次に、先の図解を基に各国の特徴を挙げてみます。
それを見ていく上で、教育制度の類型を押えておく必要があります。

以下、新たな時代の教育制度の提案に向けて~イギリスの教育制度(現在)~ [1] からの引用です。
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●教育制度の類型
教育制度の類型は、大きく「複線型」「分岐型」「単線型」の3類型で整理され、主に初等教育~中等教育の学校制度のあり方により、分類されます。

・複線型:主にヨーロッパ諸国で発達。
高等教育機関進学を目指す系統と、職業的教育を行う系統に、初等教育(小学校)の段階から完全に分かれている教育制度。途中で、教育系統が交差することは、ほとんど無い。

・単線型:主にアメリカで発達。
初等教育(小学校)から中等教育(中学校)まで、単一の学校系統で結ばれている形態。中等教育まで、国民共通の教育が実施される。

・分岐型:複線型と単線型の中間型。
初等教育(小学校)は共通としながら中等教育(中学校)以降複線化する形態。現在は各国とも純粋な「単線型」「複線型」は少なく、分岐型のバリエーションの違いの中に、区分されることが多い。
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複線型は、強固な階級社会で、富国強兵のための工業化を強力に推し進めるために取り入れられたシステムで、早い段階から進むべき進路≒職業が決定され、「労働者」として必要な学習を行っていく。イギリス、ドイツ、北欧のスウェーデンやデンマークなどヨーロッパ諸国の大半で取り入れられた。労働活力衰弱した現在では、各国共単線型を併用したシステムに切り替えている。

単線型は、自由競争を前提としたシステムで、市民革命を実現したフランスや、新天地で生産基盤を持たなかったアメリカが取り入れた。秩序維持→規範形成を基盤としての自由競争社会を目指すため、「国民として如何に生きるか!」という「国民国家」形成のための観念支配に傾斜しているのが特徴。元々、農業主体で工業化への意欲が低く、それゆえに国家統合に対する収束力が弱いということから、支配観念の教育に力を入れ、かつ、競争意欲を高めるために格差(:エリート主義)を取り入れていると思われる。(参考 [9]

この仮設はるいネットにも投稿されましたが、残念ながら「佳作」とはならなかったことから、一旦の叩き台として、今後、論理的な検証を加えていきたいと思います。

[10] [11] [12]