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2009年07月02日

全人教育って、なに?-5 @全寮制から学ぶ全人教育事例

こんにちは 😀 、今日も元気なよしたつで~す

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写真はここからお借りしました!

『全人教育って、なに?』も今回でとうとう5回目を迎えました。あと残り2回のラストスパートへ向けて、今回はその前哨戦というわけで気合が入ります。そこで、今回の5回目は、4回目の『農業教育in学校』に引き続いて、全人教育の最新事例紹介をしていきたいと思います。テーマは題名から、もう既にお分かりですよね。そう、『全寮制から学ぶ全人教育事例』です!ではでは、はりきってスタートしましょう。

「全寮制」と聞いて、皆さんはどう感じられますか?

「なんか面白そう」と目をキラキラさせる方 😀 も、「絶対無理」と頑なに首を振り続ける方 🙁 もいるかと思います。もしかしたら、現在お子さんがいらっしゃる方で、全寮制の学校を薦めた方もいるかもしれませんね。特に最近のお子さんの場合、人付き合いや集団生活を苦手としている子が多いので、ほとんどが初めは気が進まないと嫌がるようですが、面白いことに全寮制の教育を受けた後は、そんな乗り気でなかったほとんどの子供が大変満足して、活き活きした表情を見せるようになるというのだから不思議ですよね。つまり、全寮制教育には、普段のような無機質な学校空間とは違って、そこでしか得にくいものが確かに存在していることを示唆しています。

ではでは、まず初めに、全寮制教育がもたらす効果について分析してみることにしましょう 。ここで、紹介するのは、特色のある学校づくりで定評のある東京理科大学長万部キャンパスの基礎工学部(1年次)における全寮制教育です。

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簡単に理科大の全寮制教育の趣旨を成果報告書より、大きく以下のように要約されています。

現在、日本の大学全般が教養課程教育が解体・弱体の道を辿る中、教養教育の重要性が再認識され、専門的素養と共に、正しい倫理観と豊かな人間性を備えた人材を育成することが急がれている。そんな中、長万部という豊かな自然を活かした“自然教育”と“自立心を養う教育”を理念に、全寮制による全人教育の場が新たな教育のあり方として提起された。

全寮制という場は、学生と教員、学生同士、さらには学生と長万部町民との密接な人間関係の形成を促す。そして、長万部の自然を活かした体験学習は、自然をいくつしむ心を養い、「人と自然とのふれあい」教育の実践を可能とする。

理科大の面白いところは上のような教育をどう実現させたかの中身にあります!その中でも今回は特色的な4つの実践を紹介することにしましょう。

①クラスター制とチューター制

②混合学科による運営授業

③少人数ゼミナール形式(小グループ会議形式)による人文系教育

④情報リテラシーの向上

①クラスター制度とチューター制度

理科大の寮は、寮単位(クラスター)を設定することで、帰属集団を確立することを実践しています。そして、これをさらに統合するのがチューター制度という中身になっています。

理科大の寮は、1部屋4人×4部屋を1つのクラスターとして、集団単位を想定しています。まず、この1部屋4人というのは、人間関係を思慮した人数となっているようです。(というのも2人の場合ソリが合わないと、長続きしない傾向があるという統計結果より)また、この小単位をクラスターという4人×4部屋という単位で、小集団化させ、各クラスターに一教員がチューターとして専任配属される構成です。チューターの役割は、週1回の顔合わせ(状況確認)や、話し合い、スポーツなどによる交流が主体です(これをチュータータイムと呼ぶ)が、これは、履修していない科目の教員と接触することで教員と学生との壁を瓦解していくことで、大学生としての成長とコミュニケーション能力の向上を期待しているものとされています。これが寮生としての集団意識形成につながっているようです。

②混合学科による運営授業

理科大の基礎工学部は3学科で構成されており、全ての学生が同じ実験項目を受講することから、学科の壁をなくすように均等に配置されています。物理、化学、生物など自分が専門とする分野が実はお互いに関連した学問であることを理解させ、学問を介して広い識見を持てる人材育成を目指しています。

そして、成果報告をする時間をたっぷりととり、学生同士で結果を受けて検討するなど、レポートの作成訓練をここで学ばせることを意識しているようです。

③少人数ゼミナール形式(小グループ会議形式)による人文系教育

理科大では理系科目とは別に、人文系の授業に関しては、一方向の講義授業ではなく、小グループによる会議形式による授業で運営されています。テーマはフィールドワーク、都市社会学、哲学的対話術、倫理問題の討論などです。これらの講義の主眼点は、グループ内での意思疎通やアイデアの昇華、問題点の共有とその解決策の模索を、専門分野でない学生同士が議論し追求するという点にあります。学生達は、割り当てられた担当部分をグループで調査し、思考過程を整理し、発表する形式であるため、予想以上に議論が活発化し、生徒同士のやりとりを楽しんでいる姿が窺えるようで、生徒達も自分達の成長が実感できる授業だと高評価。理科大の成功している事例のひとつではないでしょうか。

また、このような小会議グループの場合、休むという意識が生じにくいため、欠席者も出にくいなど、この形式の授業の可能性を感じさせます。これをより向上させた授業のあり方としてコンピュータを利用した授業を現在模索中ということなので、更なる期待が膨らみます。この②③は寮でなくても実現可能ですが、個人ではなく集団やグループを意識させる構造が見え、全寮制に通じる部分が大きいですよね。

④情報リテラシーの向上

また、ネットワークコミュニケーションを用いて、事前に授業で扱われる内容(討論であれば議題)がネット上に掲示され、その上で、生徒が主体的に必要な資料や考察をまとめ、投稿するシステムが導入されています。場合によっては、それをもとに議論が生じるなど、情報システムを利用した統合教育を実践しているようです。傾向としては初期は単発だが、慣れてくるとネットワーク上のやり取りが活性化するなど学生の『関心の継続』が実現されるなど、長期間の継続議論掲示板などのやりとりから得られる可能性についても実感し始めているとのことです。

このシステムのメリットは
●問題の共有から解決への思考プロセス(アイデアの創造)
●討論における質問、理解、発問の重要性
にあります。まさに、これは、実現思考の源泉であることの好例ではないでしょうか。

このシステムは、当初は講義と連携したシステムとして用いるために登場しましたが、みんなの問題意識の共有から新しい実現可能性をさぐる意識へと導く、新たな大学(共同体)としてのあり方を示してくれているのかもしれません。しかも、全寮という環境がお互いを知りたい、分かり合いたいという意識を結びつけ、掲示板での議論の活性化に繋がっているのかもしれません。

その他、理科大では農業実習、課外授業、長万部地域交流行事などを積極的に行い、全人教育を実現させようとしています。どれも共通して言えるのは、生徒の主体性と集団意識の再生(共同、調和)です。

最後に、教師の立場からのコメントを紹介して今回の記事を締めたいと思います。

各教養科目では、学生の意欲のために、単位などのインセンティブがあったり、将来の職業人として必要なのだというインセンティブ以外にも、学生の意欲、社会学ってこんなに面白いとか楽しいなど、そのような意欲をかきたてるような教育が非常に必要とされている。そういう態度を、早い時期に教育してあげたい、人間を図るものとして学力以外の社会人基礎力を育て上げるのが全寮制教養教育(全人教育)の理念となる。(東京理科大学 野沢准教授)

以上のように、全寮制教育による全人教育の可能性とは、やはり勉強だけにとどまらない社会人としての基礎(集団力)を学ぶ場だと感じました。

ちなみに茨城の江戸川学園での寮の取り組みも面白いのでリンクを付けておきます!

人格を磨けば学力は伸びる~ 江戸川学園の「人づくり」革命(

次回は、全人教育の最先端事例を紹介します。是非期待していてくださいね 🙂 !

投稿者 YOSI : 2009年07月02日 List   

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コメント

利尻島の中学校の国内留学制度は、里親と住み込みで朝4時からの昆布漁の仕事も手伝うハードぶりです。あと全寮制の高校も人気があります。医学部志望者のための秀明高校とか、都心でわざわざ通えるのに全寮制の学校に行くのですから。

投稿者 tennsi21 : 2009年7月3日 22:48

全人教育ってなんだろう?
>「全き人間」(the whole man)という意味であり、教育の目的は、人間文化の6つの要素である学問、道徳、芸術、宗教、身体、生活について、それぞれの理想である「真」、「善」、「美」、「聖」と、それを支える補助的な価値として「健」、「富」を備えた完全で調和のある人格を育むべきであるとするものである。
wikiにあるけど。

ちょっと違う気がします。やはり、全員を満足させる為の、人つくりでしょうか?それには、まず、共認機能を十分そだてないと、相手の思いなどわからないですね。

投稿者 2310 : 2009年7月4日 04:13

教育の場を「学校」だけに限定せず、普段の生活なども含めて人間としての教育を行うことができる場として、全寮制学校って可能性を感じますね。

投稿者 なめこ : 2009年7月5日 16:55

tennsi21さんへ

利尻島の中学校の国内留学制度も、医学部志望者のための秀明高校の例もおそらく親からのスパルタ期待が背景にありそうですね。

前者は、既存の家庭に収まることの無い点で子どもの社会的集団力が鍛えられそうですし、後者は、医学部合格という目的意識を同じにした仲間と切磋琢磨できる環境が、勉強に対する真剣度をあげられる点で効果的ですね。後者はスポーツ強豪校の全寮制と近似していそうです。

このように全寮制の学校の傾向は、tennsi21の挙げられた2タイプがあると考えてよさそうですね

投稿者 よしたつ : 2009年7月9日 19:29

2310 さんへ

本来の全人教育とは何か?と問われれば、以下の4点に集約できそうな気がしています。

①生産課題に繋がるみんなで共有できる目的意識の形成
②仲間同士の規範確立
③社会を対象化できる統合理論の習得
④これらを実践していける場の創出

これらは、全て人間が共認動物であるが故に、身に付けるべき素養の育成が目的になっています。つまり、個人ではなく集団へと意識を向け、共に共同する力の獲得です。

一方でwikipediaで言われる全人教育には、最終的な目的が不明確、あるいはバラバラで結局何がしたいのか、わかりにくいものになっています。だから「ちょっと違う気がする」と感じるのだと思います。

投稿者 よしたつ : 2009年7月10日 06:38

なめこさんへ

>全寮制学校って可能性を感じますね

そうですね。村落共同体のころであれば、当たり前に身に付いていた素養が都市への人口流入に伴い、集団の解体が進み、当たり前が当たり前でなくなってしまいました。ですから、今新たに集団力を養う場が求められるようになり、そこで注目されたのが全寮制という教育スタイルなのだと感じます。

投稿者 よしたつ : 2009年7月10日 06:58

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