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役に立つ勉強法って?5~大学生は勉強収束⇒社会収束しているのか?~

かつて、大学生は授業には出ず、趣味、サークル、バイトに明け暮れており、大学はレジャーランドだとさえいわれていた時代もあったようだ。しかし、現在では学生は「まじめ化」し、授業への出席率も高く、勉強収束⇒社会収束しているのでは?とも考えられるが、実体はどうだろうか?ベネッセ教育研究開発センターの調査研究データ「大学生の学習・生活実態調査」 [1]より、考察してみたい。

 

なお、本文中でアンケート結果を引用させて頂いているが、その数値は、「非常に~」と「まあまあ~」の回答を合計した数値としている。

■現在の大学生はまじめ=勉強収束??

□授業出席率

69.7%の学生が9割以上の授業に出席しており、84.0%の学生が8割以上の授業に出席している。間違いなく、今の学生はまじめに授業に出席している。

 ・10割  :41.0%

 ・ 9割  :28.7%

 ・ 8割  :14.3%

 ・ 7割  : 7.1%

 ・ 6割  : 2.5%

 ・ 5割以下: 6.4%

□大学での授業への取り組み

授業への取り組みも、ただ出席しているだけという訳ではなく、宿題や課題はきちんとやり、遅刻もせず、主体的に取り組んでいる様子が見受けられる。

 ・授業で出された宿題や課題はきちんとやる:87.4%

 ・授業に遅刻しないようにする      :84.4%

 ・授業中は板書以外の内容もノートに取る :72.9%

 ・授業で分からなかったことは自分で調べる:66.0%

 ・授業とは関係なく、興味を持ったことに :61.9%

  ついて自主的に勉強する

 (全調査結果のグラフはこちら) [2]

とすると、大学生は勉強収束⇒社会収束していると言えるのだろうか?

■大学生活の実態

ベネッセの調査研究データから、大学生活の実態を調べると、勉強収束とは相反する傾向が見られた。

□授業に対して求めている内容

自ら課題を見出し、追究するより、知識や技術を教えてもらえる講義形式を望んでいるようで、受け身の傾向が見られる。明確な目的意識や課題意識が持てないため、受け身にならざるを得ないのだろうか?

 ・自分で調べて発表する形式より  :82.0%

  知識・技術を教えてもらえる講義形式がよい

 ・出席や平常点を重視して     :70.0%

  成績評価をする授業がよい

 ・応用・発展的内容は少ないが、  :72.9%

  基礎・基本が中心の授業がよい

 (全調査結果のグラフはこちら) [3]

□大学生活で力を入れてきた活動

大学生活で力を入れてきた活動の中で、授業を抜いて趣味がトップである。しかも、その中でも「とくに力を入れた」と答えた割合を見ると、趣味は授業の倍となっている。授業はまじめに出席してはいるものの、力を入れて取り組むべきものとは考えていないようだ。とすると、勉強収束というよりは、授業への出席率の高さや取り組みのまじめさは、規範収束によるものと考えた方がよいのでは?

 ・趣味 :67.8%(とても力を入れた31.1%)

 ・授業 :58.4%(とても力を入れた15.5%)

 ・バイト:52.7%(とても力を入れた21.0%)

 (全調査結果のグラフはこちら) [4]

□大学以外での時間の過ごし方

大学以外での時間は、趣味に費やす割合が最も高い。また、それと同じくらい、テレビやDVDの視聴に時間を費やしているようだ。明確な目的意識がなく課題もなく、無圧力であれば、そうならざるを得ないと思われる。

 ・趣味         :64.6%

 ・テレビやDVDなどの視聴 :60.5%

 ・友達づきあい     :53.9%

 ・授業の予復習や課題  :26.6%

 ・大学授業以外の自主勉強:19.2%

 (全調査結果の表はこちら) [5]

■大学生の意識 ~高まる共認原理と残存する私権意識~

□大学生の社会観・就労観

友達を大事にする意識は高い。また、社会貢献に対する意識も高い。これらの数字から、共認原理への転換が進んでいることが予測される。一方、お金への収束度は依然として高い。また、人に迷惑をかけなければ自分のしたいようにしてよいと考えている人が意外と多く、個人主義がかなり根付いていると思われる。

 ・いい友達がいると幸せになれる:92.1%

 ・仕事を通じての社会貢献は大切:84.4%

 ・お金が沢山あると幸せになれる:78.6%

 ・授業に限らず大学で学んだこと:78.1%

  は将来役に立つ

 ・人に迷惑をかけなければ   :64.9%

  自分のしたいようにしてよい

 (全調査結果のグラフはこちら) [6]

■大学に求めているものと今の大学がずれている??

□大学志望度

大学に入る時点では、8割近い人が満足して大学に入学している。

 ・ぜひ入りたいと思って進学した:32.4%

 ・まあ満足して進学した    :45.7%

 ・上記2項目計:78.1%

 (全調査結果のグラフはこちら) [7]

ただ、実際学生生活を送っていく中では、大学への満足度は下がっていくアンケート結果が出ている。

□大学満足度

実際、大学生活を進めていく中で、大学に感じている満足度では、施設・設備に対する満足度は高い。各大学、競うように新しい校舎や設備を整備しているためと思われる。それに対して、授業・教育システムや教員という、大学としての最大の売りともいうべき中身は、施設・設備への満足度ほどは高くない。学生は、大学の中身にはそれほど満足していないのではないだろうか?

 ・施設・設備    :76.0%

 ・教員       :53.1%

 ・授業・教育システム:49.5%

 (全調査結果のグラフはこちら) [8]

□他大学への再入学希望

学生の現在の大学に対する満足度を量る材料として、他大学への再入学希望のアンケート結果を参考にしたい。これによると、45.7%の学生が他大学への再入学を考えているようだ。その要因としては、「第一志望ではなかった」「他の分野の勉強がしてみたい」「雰囲気が合わない」「面白くない」などがあるが、主に現状の大学の中身に対する不満足感によるものが多い。

 ・よくある  :17.1%

 ・たまにある :28.6%

 ・上記2項目計 :45.7%

 (全調査結果のグラフはこちら) [9]

■まとめ

現在の大学生は、授業への出席率は高く、取り組みもまじめである。ただ、授業に対しては受け身の意識が強く、明確な目的意識や課題意識は薄いと思われる。現在の大学生の意識としては、課題意識、目的意識発の勉強収束ではなく、規範意識発の勉強収束の傾向が強いと考えられる。

一方で、共認原理への転換は進んでおり、社会意識も高い。ただ、何をすればいいかがわからないため、義務的に授業に出席しながら趣味や友達との時間を過ごしていると思われる。そのため、勉強収束から、その先の社会収束までは転換できていない。

学生達も、大学に対する物足りなさを感じているようである。学生の社会意識を高め、社会収束に向かえるようにするには、大学の変革、もしくは大学に変わる社会教育の場が必要と思われる。

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